奨学金は、原則として学生が利用するものなので、比較的好条件で借りることができます。進学のために奨学金を利用したいという学生もいれば、学生時代に利用して社会人になり、すでに返済を進めている人もいるでしょう。

近年では、奨学金を利用したために返済に苦しみ、奨学金返済がライフプランの弊害となっている例も少なくないようです。そこで今回は、奨学金とはそもそも何なのか、奨学金を返済するために気をつけておきたいことなどを解説します。

奨学金は借金?どんなときに借りる?

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(画像=PIXTA)

奨学金は、学びたい学生を金銭的にサポートする支援金です。大学への進学や留学にはお金がかかるものです。家庭の収入ではそのお金を捻出する余裕がないものの、しっかりとお金をかけて学びたい学生にとって、奨学金はとてもありがたい制度と言えます。

大学や留学は義務教育と異なり、あくまでも学生自身の選択で学ぶ場です。そのため親に金銭的な負担をかけたくない、自分の学費くらいは自分で賄いたい、という学生が奨学金の利用を選択するケースもあるでしょう。現に奨学金は、将来的に学生自身が返済していく「学生本人の借金」といわれています。

奨学金と借金は違うのか?

結論から言えば、奨学金と借金に大きな違いはありません。奨学金は立派な借金ですが、借金と認識していない人も多いようです。

・奨学金は未来の自分に対する「借金」

「奨学金はもらえるもの」と勘違いしている人もいるようですが、給付型をのぞき、多くは学生本人が返済する義務のある立派な「借金」です。

将来的に稼ぐ力の礎となる学びを得るための資金を、将来稼いでいる自分から前借りしている状態であり、いわば未来の自分に対する借金ということです。

・給付型と貸与型

奨学金には、主に「給付型」と「貸与型」の2種類があります。「給付型」は文字どおり給付される奨学金で、返済の義務がないので正真正銘「もらえる」お金です。とはいえ、給付型の奨学金制度を受けられるのは、優秀な成績を修めているほんのひと握りの学生です。そのため、多くの学生は返済義務のある「貸与型」奨学金制度を利用することになります。

奨学金の平均額は?

奨学金を利用している学生は、一般的に毎月どれくらいの金額を返済しているのでしょうか。

・平均貸与額は属性によって異なる

奨学金の平均貸与額は、属性によって異なります。国公立大学に通う学生が学費のみを奨学金でカバーする場合、平均貸与額は年間で約20万2000円、私立大学に通う学生が同様に学費のみを奨学金でカバーしようとした場合、平均貸与額は年間で約37万6700円。貸与額だけでも約17万円の違いがあります。

貸与額は、実家から通う学生と1人暮らしの学生とでも異なってきます。家賃や水道光熱費、通信費などを親が支払っている場合と、すべて自分で支払う必要がある1人暮らしとでは大きな違いがあるのです。実家暮らしの場合は交通費、1人暮らしの場合は家賃や生活費を学費に加えたうえで奨学金の金額を決めることもあります。

・月々の返済平均は1万6880円

日本の奨学金制度として最も一般的な日本学生支援機構では、月々の返済金額の平均が1万6880円となっています。日本学生支援機構は特に返済期間を長めにとっていることもあり、新社会人でも無理なく返済できる金額として設定しているようです。

奨学金が返済できないとどうなる?

月々返済する分には無理のない金額とはいえ、奨学金自体はかなりボリュームのある金額です。すべて返済できるか不安になることもあるでしょう。実際に返済できなかった場合はどうなるのでしょうか。

・催促が来る

当然ですが奨学金は借金になるので、返済が遅れれば借りたところから催促が来ます。連帯保証人がいれば、そちらにも返済の延滞が通知されるようになっています。

近年では債権回収業者に委託していることもあり、職場や自宅に直接連絡がいくこともあるようです。こうした催促の連絡が来たときは放置しないようにしましょう。

・信用情報に影響が出る

クレジットカードの返済が遅れたときと同様に、奨学金も返済が遅れると信用情報に履歴が残ります。返済に遅れたという記録が残ると返済能力がないとみなされ、新たにクレジットカードを作ろうとしても審査にひっかかってしまうこともあります。住宅ローンやキャッシングなども利用できなくなるので注意しましょう。

奨学金の借金があると結婚できない?

奨学金は借金、ということは結婚にも何かしらの影響が出るのでしょうか。実際にあった事例を紹介します。

・奨学金の借金が結婚におよぼす影響

返済が遅れて信用情報に傷がつく場合とは異なり、奨学金という借金が結婚に影響が出るとは必ずしも言えません。とはいえ、結婚相手に求める条件として「借金がない人」と回答する人は少なからずいるようです。

この回答は、「ギャンブルなどの危ういお金の使い方をしない人」を意味することが大半ですが、月々の奨学金の返済が生活に影響することを恐れる人もいるでしょう。

・【事例】奨学金の借金が原因でフラれた女性

実際に「奨学金の借金が原因でフラれてしまった」という事例もあります。Aさんには20代のころに結婚を考えた男性がいたそうですが、当時のAさんは奨学金の返済に加え、自分の生活が苦しいなか遠方の母親にも仕送りするという堅実な生活を送っていたそうです。しかし、相手の男性から「借金がある女性とは結婚できない」と言われてしまいました。

奨学金の借金があっても結婚できる

奨学金という借金があっても、結婚できないことはありません。奨学金を借りている状態でも結婚するために、大切なことを簡単にまとめました。

・事前にきちんと話し合いをすること

奨学金は借金ですが、大学や短大を卒業後にきちんと返還するという意思のもとに利用するものです。たとえ奨学金という借金があるとしても、返済していく意思があること、相手には金銭的負担をかけないことが伝わるよう、十分な話し合いをしましょう。

・返済計画を練っておくこと

返済の意思を理解してもらうためには、言葉だけでは不確実です。月々どれくらい返済して毎月どれくらいの貯蓄をするのか、完済はいつになるのか、といった返済計画をきちんと練っておきましょう。

奨学金で借金地獄になる前に

奨学金返済の延滞者は年々増加しており、社会問題にもなっています。中には奨学金返済のためにほかから借り入れをして借金地獄に陥ってしまったケースもあるようです。

そこで、借金地獄に陥る前に奨学金を返済するための方法を紹介します。

・転職して収支を改善する

奨学金返済に困る人の多くは、卒業して就職してみたら思ったより給料が少なかった、という理由で返済に苦しめられているようです。最も健全な解決策の一つが、転職して給与アップを実現し、収支を改善することです。そもそもの収入枠を広げれば、月々の返済があっても生活に余裕ができるでしょう。

・制度を活用

例えば、日本学生支援機構では、病気やけが、失業、低収入などの理由で返済が困難な人のための制度をいくつか設けています。

一定期間返済を先送りできる「返還期限猶予制度」や、月々の返済金額を減らせる「減額返還制度」など、もともと借りた金額を減らすことはできないものの、負担を軽減できる制度が用意されています。

・債務整理を検討しよう

それでも返済が厳しい場合は、債務整理という方法もあります。「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があり、実際にここ数年で奨学金返済のために自己破産する人は増加傾向にあるようです。

債務整理、自己破産というとあまりよくないイメージがあるかもしれませんが、実は若いうちだからこそ使える手段でもあります。どうしても返済に困ったときは、新たにほかから借りて多重債務に陥ってしまうよりも、思い切って弁護士に債務整理を相談するとよいでしょう。

奨学金制度と日本経済

奨学金返済に苦しむ社会人が増えている背景には、日本経済の歴史がかかわっています。

・奨学金を返済できない社会人が増えている

2016年度までの5年間で1万5000人が自己破産に追い込まれたという報道があったことで、奨学金を返済できない社会人が増えているという社会問題が浮き彫りになりました。自己破産ならまだしも、奨学金返済をきっかけに多重債務に苦しめられることになったり、親子で連鎖破産となったりしたケースも見られました。

・バブルが崩壊しても教育費は変わらない

バブル経済が崩壊し、日本国民の多くの家計がひっ迫するようになりました。そんな中で、学業に専念したい学生のために設けられたのが奨学金です。しかし、日本は世界基準で見ても貧富の格差がさほどなく、特に現代はバブル崩壊後と比べてほとんどの国民が豊かな生活を送っています。

それにもかかわらず奨学金を返済できない社会人が増えているのは、バブルが崩壊した後も教育費は高いままで、むしろ費用が上がっているのが原因の一つとされています。

日本の奨学金問題

日本の奨学金問題の根底にあるのは、教育費が上がっていることが理由の一つですが、学生たちの意識にも問題があるようです。

・奨学金は借金であるという認識が甘い?

奨学金は学生でも借りやすいため、借金であるという認識が甘いようです。「将来数年にわたって返還していく義務がある」という認識をそもそも持っていないために、社会人になってからも返済のプランニングができていないという人は多いでしょう。

・奨学金について分からないことは相談しよう

奨学金の返済に困ったときには、転職を検討したり、便利な制度を利用したりと、何かしらの対策が打てるようになっています。ところが、これを知らずに自己判断でほかから借りて多重債務になってしまったり、家族を巻き込んでしまったりすることが多いのも事実です。

困ったときや奨学金について分からないことがあれば、自分だけで抱え込まず周囲に相談するようにしましょう。

奨学金は借金だけど恥じることではない

今回紹介したように、奨学金は立派な借金であって返済の義務がありますが、自分の大切な未来のために借りたお金です。奨学金を利用したことも、返済に困ってしまうことも、決して恥ずべきことではありません。

結婚などの大事な節目や、返済に困ったときには、きちんと周りに相談するようにしましょう。