大切な家族が突然に亡くなった際に、その人が生前に借りていたカードローンの残高が残っていることが発覚するという事態も起こり得ます。家族が亡くなっただけでもショックであるところに、借金があると分かれば、困惑する人も多いでしょう。

カードローンの契約者である家族が亡くなった場合は、遺族が返済しなければならないのでしょうか。それとも返済は免除されるのでしょうか?

この記事では、故人にカードローンの借入残高があることが分かった場合の対応方法について詳しく紹介します。

カードローン利用者の死亡時は返済免除?

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(画像=PIXTA)

カードローンを利用していた人が亡くなり、借入額を完済していなかった場合、借入残高はどうなるのでしょう。

遺産を相続する人に借金の返済義務が移るのでしょうか。それとも免除されるのでしょうか。

・返済義務は消滅しない

故人の借金は、借りていた人がいなくなるのだから、返済義務そのものが消滅すると考える人もいるかもしれません。しかし、残念ながらそうはなりません。

返済義務は、法律に基づいて故人の関係者に移り、免除されることはありません。では、誰に移るのでしょう。これには、民法で定められた法定相続人のルールが関係します。

・法定相続人が債務者になる

法定相続人という法律で定められた相続人が、プラスであれマイナスであれ、遺産を受け継ぐことが法律で定められています。では、法定相続人とはどのように決まるのでしょうか。

法定相続人は誰になるのか?

法定相続人には、民法で定められている優先順位があります。順位が上の人が「相続放棄」をすれば、次の順位の人に遺産を継ぐ資格が移るという仕組みです。

順位は、以下のとおりです。

1位:配偶者
2位:故人の子ども
3位:故人の両親・直系の祖父母
4位:故人の兄弟姉妹

これが、法律に定められている法定相続人の優先順位です。配偶者がいる場合は順位が最も上になり、あとは子ども、親、祖父母の順番になっています。

プラスの遺産ならともかく、借金というマイナスの遺産の場合、血のつながっている親ではなく血のつながっていない配偶者が負担することに、違和感を感じる人もいるかもしれません。

しかし法律上はプラスもマイナスも遺産であることには変わりはないとされています。これは法律上の順番であるため、相続を放棄しない限り、返済義務を負うことになります。

相続で受け継ぐプラスの遺産マイナスの遺産

遺産とは、故人の財産すべてを指し、プラスのものとマイナスのものがあると考えられます。

プラスは、自動車や宝石、貴金属、現金や預貯金、国債や株式などの有価証券、土地や建物などの不動産、著作権や特許権、賃借権などです。マイナスのものは、支払い義務があるすべての債務が想定されます。

死亡時に残った借入残高の額は「マイナスの遺産」としてカウントされます。

土地や株式などのプラスの遺産を相続したい場合は、マイナスであるカードローン残額なども一緒に相続しなければなりません。プラスだけの相続はあり得ないのです。

ほとんどの相続人は、プラスとマイナスを合算してプラスになれば、プラスの遺産を使って借金を返済し、残ったものを引き継ぎます。マイナスが上回る場合は、相続放棄を選ぶことが多いようです。

まれに故人にカードローンの借入残高があったことを知らず、相続人がプラスの遺産を相続した後に借金の督促状が届くというケースもあります。この場合、プラスの遺産を相続した以上、借金の元金、利息、遅延損害金を含めた残債を返済する義務が生じます。そのため、遺産相続が発生したときには、遺産内容の徹底した確認が必要になるのです。

返済を拒否した場合はどうなる?

借金の事実を知らずに相続を受けた後で借金が発覚した場合、相続人が返済を拒否するとどうなるのでしょう。

・信用情報に傷がつく

法定相続人になって、負の遺産であるカードローンの督促を放置すると、相続人自身の信用情報に傷がつくのは間違いありません。例えば将来住宅ローンを利用したいと思っても、審査落ちになる可能性が極めて高くなります。

信用情報とは、金融機関の利用履歴が信用情報機関に記録され、新しい融資やクレジットカードを申し込んだ際の審査で照会されるものです。消費者金融や銀行、クレジット会社は、契約者にお金を貸したり、支払いを一時的に立て替えたりします。

これは利用者の信用情報に基づいて行われています。この利用者には安定した収入があり、お金を貸してもきちんと返してくれると判断され、「信用」を担保にお金を貸しているのです。

一方、ローンを組んでも返済しなかったり、何回も延滞したりすると、金融機関からの信用が失われます。利用者の信用に関する情報は、金融機関で共有されてローン審査の際に照会されるのです。

この情報を基に、貸し付けをしてもよいかどうかを判断するのです。返済拒否などでブラックな情報が記録されると、その後ローンを契約したいと思っても審査に通らないなどの弊害が起こります。

・新たな借り入れができなくなる

仮に親の債務であっても、返済義務が遺族に移行した場合は、その人の信用情報として履歴が残ります。返済を拒否すると立派な金融事故として記録され、新たな借り入れの申請は通らなくなってしまいます。

クレジットカードが停止されるリスクあり

審査の通過が困難になるのは、新たな借り入れやカードローンの申請だけではありません。日常の買い物で使ったり、公共料金の引き落としで使ったりするクレジットカードさえも使えなくなる可能性が高くなります。

クレジットカード会社も銀行や消費者金融と同様に、信用情報を基準に利用者と取引をしています。そのため返済を拒否してブラックリストに入ってしまった利用者が、クレジットカードをいつまでも利用できるとは考えにくいでしょう。

合法的に返済を拒否できる相続放棄

故人のカードローンの返済を相続人が合法的に拒否する方法は、前述した「相続放棄」しかありません。厳密には「拒否」という言い方は正確ではないかもしれませんが、支払い義務を免れます。

故人の債務を引き継ぎたくない場合は、遺産の相続放棄を行うことで、借金の返済義務も放棄することが可能です。

相続人になったことを知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所に申立てを行えば、相続を放棄できます。そうすれば、借金を背負う義務は消滅します。

相続放棄をすればプラスの遺産も受け取れない

当たり前のことですが、遺産の相続を放棄するとなると、マイナスの遺産だけではなくプラスの遺産も放棄しなくてはいけません。

プラスの遺産だけを引き継ぐことはできないため、慎重に検討する必要があります。いいとこどりは認められないということを認識しておきましょう。

相続放棄が認められない場合もある

相続を放棄しようとしても、認められない場合があります。以下のような状況では、相続放棄ができなくなるので注意が必要です。

●相続を知った日から3ヵ月が経過した
●放棄するべき財産の一部をすでに私物化もしくは使用してしまった

どちらかに該当すると、放棄したくてもできなくなってしまいます。一部の使用とは、ほんの少しだけでも使用したり、私物化したりした場合に適用されるので、神経質にならざるを得ません。

後から借金などのマイナスの遺産が見つかるおそれがある場合は、結果がプラスのときに限り遺産相続できる「限定承認」という方法を選ぶのが得策です。

限定承認の手続きは、相続放棄と同じく相続を知った日から3ヵ月以内に行う必要があります。この手続きさえ行っておけば、プラスの遺産を超えるマイナスの遺産があった場合、財産は債務の割合に応じて弁済に充てられ、相続人は負担しなくても済みます。

しかも、債務を清算したうえで結果的にプラスの遺産が残った場合は、相続人が引き継ぐことができます。

団体信用生命保険付帯なら保険で返済可能

故人が利用していたカードローンが「団体信用生命保険」が付帯しているタイプなら、カードローンの借入残高を返済する必要はありません。

なぜなら、団体信用生命保険が付帯するカードローンは、その保険でカードローンの残債を完済できる仕組みになっているからです。

そもそも団体信用生命保険とは、カードローンを契約している利用者が死亡した場合に、そのカードローンの借入残高をすべて肩代わりしてくれる保険となります。そのため、契約者が死亡したカードローンの残債を相続人が背負う必要がなくなるのです。

ただ、団体信用生命保険が付帯するカードローンは、「ちば興銀ガン保障付カードローン」や「スルガ銀行カードローン」など一部しかありません。大手消費者金融やメガバンクのカードローンには、団体信用生命保険が付帯していないことが多いです。

故人がメガバンクや大手消費者金融のカードローンを使っていた場合は、覚悟を決めてプラスかマイナスかを検討し、相続するか放棄するかを決めなければなりません。

遺産のプラマイで相続放棄を判断しよう

ここまで見てきたように、故人の遺産でカードローンの借り入れが残っている場合は、慎重に遺産の全体を考えてアクションを起こさなければなりません。

当初はないと思った債務が後から発覚した場合、一旦相続してしまうと取り返しがつかなくなります。相続か放棄かは、慎重かつ詳細に調べたうえで決定することが賢明です。