ハイスクール
(画像=PIXTA)

【相場概況編】FX――投機マネーは日米の金融政策を完全否定

超サプライズとなった日銀のマイナス金利導入は、つかの間の円安と株高をもたらしたが、その影響力を誰も見定められない不安感から、翌週からは圧倒的にネガティブな反応に転じ、円高が加速。米国経済の不透明感、欧州銀行への不信感なども重なり、リスクオフのムードが強まった。

〝よくわからない〞から、ネガティブな反応が先行したマイナス金利

1月も最終営業日となった29日のランチタイム―。日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入しました。今回から「本日の決定ポイント」なる参考資料がQ&Aの形で別途公表されましたが、初めての試みであることから、市場では「おそらく誰もその内容をきちんと説明することができない」との声も聞かれている通り、〝とにかくやってみないことにはわからない〞というサプライズの政策導入となりました。

日銀当座預金が残高に応じて、マイナス0.1%、0%、0.1%と3段階の金利構成となるわけですが、簡単に言えば「昨年までの残高にはこれまで通り0.1%を付利」しますが、「それ以上積み増した分は0%ないしマイナス0.1%にしますよ」ということ。ただ、実際の運用がどうなるのか、市場への影響がどう出るのか、マスコミを含む世間の反応は、〝よくわからない〞がゆえにネガティブな方向へと突っ走りました。

黒田総裁は、記者会見でも表明した通り「ダボス会議に出発する前に事務方に政策のオプションを指示」していました。ダボス会議から帰国後に腹を決めたのではないかという大方の予想を裏切り、なんとその前に、一部市場参加者の言葉を借りれば〝命懸けの決断〞をしていたことになります。この〝やるといったからにはやる〞という総裁の不退転の決意が市場心理を一気にひっくり返したのは疑いようのない事実です。米ドル/円も118円台半ばから一時121.691円まで急激に買い上げられました。

ただ結局、週明け2月に入ってからは一転して売りが強まる展開に。国内大手銀行はその対応で連日の緊急会議。今年に入ってから短期投機筋の動向を静かに見守っていた海外のマクロファンドたちは、ドイツ銀行の経営不安説などもあおりながら、「日銀の金融政策を完全に否定する」方針へと傾倒していきます。

NET MONEY
(画像=NET MONEY)

そして、イエレンFRB(連 邦準備制度理事会)議長が半期に一度の議会証言で、昨年12月に決定した「経済データ次第でgradual (緩やか)な金利引き上げを行なう」という基本方針に変わりはないことを強調したものの、最近の株価下落や信用コストの上昇などが経済成長に「より支援的ではなくなってきた」ことに言及すると、市場は今年中の利上げ見送りをほぼ織り込むまで前のめりで反応。金利先物から算出するFF金利の2016年12月末時点までの金利据え置き確率がなんと80%にまで上昇する事態に。米国の10年物国債利回りも一時1.5286%にまで急低下しました。

金融当局VS 投機筋…米国の年内金利据え置きという予想は行きすぎ

イエレン議長の発言からは、実際は「3月の利上げは見送る」程度は断言しても間違いありませんが、年内いっぱい利上げしないなどとは、冷静に考えればどれだけ先走った判断であるかは明白。いずれにしても「日米金融政策の過小評価」、もっと突っ込んで言えば、「日米金融政策の完全否定」というテーマで走りだした〝海外の大ザル〞と〝子ザル〞でしたが、一方で〝日本産大ザル〞である「国内長期資金」の動きは、鈍いながらも、連日の緊急会議もほぼその目安がついてきたことから、本来の〝あるべき姿〞を模索し始めています。

〝金融当局との対立〞というかなりリスクの高い投資方針は、「当局の市場への介入」という伝家の宝刀を呼び込むまで過熱化。しかし、金融政策に対する表面的な〝ダメ出し〞が強調される一方でソフトバンクによる大量の自社株買いや生保協会会長やかんぱ生命社長が外債投資を増加させざるをえないと発言していること、東京都が公金の一部を外貨預金で運用を開始したこと、さらにはJR西日本が事業会社では初めての40年物社債をかなりの低金利で発行する見通しとなるなど、実は着々とマイナス金利を生かそうとする動きが進められていることを認識しておく必要がありそうです。

【マンガで押忍! 為替編】
サプライズが吉か凶かはあとでわかること…の巻

予想だにしなかった意外な出来事―。当初はポジティブな展開を想像していたのが、ドンデン返しで悪い方向に転がっていく、というのはよくある話。前のめりでサプライズに飛びつくのは危険、大切なことほど慎重に。

NET MONEY
(画像=NET MONEY)
イラスト●加藤オズワルド

今月のマーケット先生

和田仁志
グローバルインフォ 代表取締役社長。シティバンク銀行、スタンダードチャータード銀行でディーラーとして活躍後、証券会社でFXを立ち上げるなど、業界に精通。

【投資戦略編】FX――円安から円高へ。個人の為替予想が逆転した!?

米国の利上げは円安・ドル高の材料になるはずが、実際の相場は円高に進んでいる。eワラントに投資する個人投資家も円高に賭け始めた!

「eワラント」って何?
3000円で為替や株にレバレッジ投資できる!

3000円程度からの少額資金で、為替や株、原油、金などの幅広い資産に投資できる金融商品。相場の値上がりだけでなく、値下がりも収益機会になるタイプの商品(プット)があることに加え、レバレッジを利かせた投資効率の高い運用ができるのが特徴。

eワラント取引では円安狙いのコールが激減、円高狙いのプットが増加

eワラントを取引している投資家は円高を予想しているようです。

下のグラフは昨年8月を100とした外貨型eワラントの「コール」と「プット」の売買規模の推移を示しています。外貨のコールは米ドルなどの外貨が高くなると価格が上昇するタイプ、プットは外貨が安くなると価格が上昇するタイプです。

NET MONEY
(画像=NET MONEY)

つまり、円安を予想する投資家が増えればコール、円高を予想する投資家が増えればプットの売買が膨らむという傾向があります。

なお、外貨を原資産とするeワラントで取引の中心となっているのは米ドルを対象としたものです。

昨年12月に米国FRBは利上げを決定しましたが、この前後では米ドル高を予想する投資家が多く、eワラントにおいてもコールの取引がプットの取引を上回る状況でした。

しかし、興味深いことに2月に入ってからはコールの取引が劇的に減少し、プットがコールの取引を逆転する状況になっています。

つまり、米国の金利が引き上げられたにもかかわらず、当面の為替相場では円高が進むと予想している投資家が増えていることの表れといえるでしょう。

実際のマーケットを振り返ってみると、ご存じのように1月から一方的な日本株安が続きましたが、米ドル/円相場は1ドル=116円まで円高に進んだ後は、もみ合いとなり、再び121円台まで切り返していました。

マイナス金利導入でも円安はごく一時的…。長期円高狙いに勝機か

しかし、2月に入ってからは株安と同時に急激な円高が発生。米ドル/円は110円台に突入しました。

この要因として2月5日に発表された雇用統計の内容が米国経済の強さを表しているともいえず、FRBの追加利上げが困難という見方が出ていること、海外投資家が日本株の保有を減らしてきており、為替ヘッジのための円ショートポジションを解消してきていること、中国による金融緩和策により日本円の相対価値が上昇したことなどが考えられます。

1月末に日銀はさらなる金融緩和策としてマイナス金利を導入しましたが、株価上昇と円安はごくごく一時的なものにとどまり、結果として円高の波を止めることができていません。この円高傾向は当面続く可能性があります。

これを前提とした投資戦略としては円高の勢いに逆張り(円安狙いのコール)で立ち向かうよりも、満期日までの残存期間がなるべく長い、米ドルを原資産とするeワラントのプットを長期間保有することで円高の波に乗ることを考えてもいいでしょう。

今月の戦略先生

小野田 慎
eワラント証券 投資情報室長。イボットソン・アソシエイツ、ゴールドマン・サックス証券を経て現職。ポートフォリオ構築の専門家としての経験を生かし、幅広い資産の分析を行なう。

【売買診断編】FX――為替ならではのクセ、オーバーシュートを斬る

株式市場以上の急変動を見せることがある為替市場。これは市場参加者の特徴的な投資行動によるもの。この特性を知っておくだけでも、不必要な損失を回避できる。

日米金利差が短期の為替変動の決定要因。この異常が急変動を呼ぶ

為替相場の習性である〝オーバーシュート〞(以下、OS)局面を捉えることは、テクニカル上で有効な投資判断です。なぜ為替の世界でOSが発生しやすいかというと、いったんトレンドが出ると市場参加者が一斉に一方向に動き、クライマックスを助長させるからです。このため、株式投資などで使われるテクニカル指標のサインと比べて上下のブレが大きくなります。特に、ストキャスティクスやRSIなどのオシレーター系指標は、FXのOS局面では機能しなくなり、指標性を失いやすくなります。

たとえば米ドル/円では、1月29日に日銀がマイナス金利を発表すると一気に121.68円まで円安に振れましたが、当日夜に米国の長期金利が急落すると、ドル安に急反転しました。マイナス金利政策による日本の金利の下落幅よりも、米国の金利の下落幅のほうが大きく、ドル安反転に向けた市場参加者の金利裁定取引の影響が出た形です。

NET MONEY
(画像=NET MONEY)

簡単に言うと、「米国長期金利の下落幅- 日本金利の下落幅」、これが「0より小さければ日本で円安」「0より大きければ米国でドル安」という単純な金利差による方向性の転換であり、これが短期の為替変動メカニズムの根底といえます。

具体的には、日銀のマイナス金利発表前日の米国10年債利回りは1.982%、翌29日夜の米国市場の安値は1.911%で下落幅は0.071%。一方、日本の同利回りはマイナス金利発表当日の終値が0.095%、翌2月1日の安値が0.050%、下落幅は0.045%。下落幅が「米国利回り>日本利回り」となってドル安・円高に振れたことがわかります。同日はかなり簡単な方向性の転換の図式でしたが、あくまでもマイナス金利という文言に過剰反応しただけと割り切ったほうがよいでしょう。

NET MONEY
(画像=NET MONEY)

さて、上のグラフはドル/円、20日移動平均線の±2%のエンベロープです。直近の2月9日にマイナス2%を明確に割り込みOSポイントをマーク。その後、111円割れまでOS局面を迎えましたが、12営業日が経ってもマイナス2%内に回帰していません。これはOS局面が継続し、一段の円高を警戒する局面にあるということです。

今月のジャッジ先生

藤井明代
カブドットコム証券 投資情報室 投資アナリスト。株主優待からテクニカルまで幅広い分野の情報発信で人気。ラジオ・TVなどレギュラー出演多数。新刊に『勝てる「! 優待株」投資』(幻冬舎)