中国経済の行方を考えるうえではインフレと不動産ミニバブルにどう対処できるかが重要だと考えるが、今後は中国一辺倒ではなく東南アジア諸国へ日本企業がどんどん進出していくことになるだろう。

中国、インドネシアなどアジア各国の今後の金融情勢
(画像=ネットマネー)
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中国経済の今後の動向を考えるうえで最も重要なポイントになるのは、基本的にインフレ率がどうなっていくのか、そして不動産のミニバブルがどうなっていくのかということであると私は認識しています。

今、中国国内で最大の問題はインフレにどう対処していくかということですが、あまりインフレになると社会不安が起こってくる可能性もあるような状況です。中国のCPI(消費者物価指数)を見ますと、2010年12月は前年同月比4・6%の上昇となり、08年7月以来の高水準となった11月(同5・1%)からは鈍化したものの、依然として高いインフレ率となっています。

本来なら、インフレ阻止のために最も有効な措置は為替政策によって元高にしていくことであって、まずは元安維持のための為替管理を撤廃し、その後に必要に応じて金利の引き上げを考えるのが順当なことです。元を強くすることによってすべての輸入物価を下げるということがインフレ対策として最も大事なことだからです。

中国はインフレ問題にまず為替政策で対処すべき。為替を緩めても大打撃はない

ただ、現在の中国は為替をコントロールしたうえでインフレに対処しなければならないという非常に難しい状況を自ら招いてしまっているわけで、このインフレ問題に対してはまず為替政策で対処すべきであり、今年中のどこかのタイミングで中国が為替についての考え方を大きく変える転機が来るのではないかと私はみています。

では、中国が為替管理を緩めた場合に輸出がどうなるのかといえば、大打撃を受けるような現況ではないと私は認識しています。

なぜかといえば、中国の輸出の多くの部分は多国籍企業のアセンブリー(組み立て)のための中国生産拠点からの完成品なので、為替管理を緩めたからといって、そうした多国籍企業がすぐに生産拠点を移すことになるとは思えないからです。多国籍企業にとって中国は、また世界最大の消費市場でもあるわけですから。

したがって、まずは為替管理をやめ、インフレを抑えるということが今の中国にとって最も大事なことであると考えています。

しかも、米中の貿易バランスについては全く改善の兆しが見られず、10年も11月時点で米国の対中貿易赤字は2524億ドルと前年同期比20・9%増になっているわけで、このような状況を今後も続けていけば米国経済の回復を遅らせることにもなるのです。米国が経済回復することにより中国の米国向け輸出が再び増加することになるという意味においても、中国は為替への対処をまずはしなければならないでしょう。

不動産のミニバブルについては、しょせん中国の不動産というものは土地が付いていない上物(アパートの部屋や住宅)だけの世界ですので、不動産価格の大暴落という形に直ちにつながるわけではなく、家賃が上昇傾向にある中でアパートの所有者が部屋を貸すという行為に経済合理性がある限りは売却に走ることはないので、かつて日本が経験したような大きなバブルの崩壊という形にはならないと私は考えています。

中国はミニバブルに対処すべく抑制的な金融政策をとっており、昨年12月26日にも約2カ月ぶりに利上げを実施し、期間1年の人民元建て貸出金利と預金金利をそれぞれ0・25%引き上げたというわけです。

ただ、今の中国経済を考えてみますと経済成長率は非常に高いように見えますが、今後内陸部における本格的な経済成長を支えていかなければならない中で、あまりにも早くから金利を引き上げるのは中国経済の今後にとってよいことではないと考えています。

中国内陸部の経済成長により内需を拡大していくという国策の下、それがせっかく盛り上がりを見せる中では利上げを行なうにしてもわずかずつ段階的なものとなるでしょうし、基本的にはやはりできるだけ利上げを実施しない方向でいくべきではないかと私は思います。

中国以外のアジア金融経済についていえば、インドネシアやマレーシアの経済発展というものに私は今、非常に注目していますが、特にインドネシアの場合は総人口が約2億4300万人(10年7月現在)と世界第4位であることから、消費のマーケットとしても、あるいは今後は生産のマーケットとしても、非常に重要であると考えています。

また、そのインドネシアとともにVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの英語の頭文字をとった造語)の一角を占めるベトナムも注目国のひとつであり、このベトナムについても常に警戒しているのは非常に高いインフレ率で、12月のCPIを見ますと、前年同月比で11・75%も上昇しています。その点ではインドネシアのほうがベターであり、同国の12月のCPIは前年同月比6・96%の上昇という状況です。

ベトナムについては、インフレをどのようにコントロールしていくのか、特に通貨ドンとドルとの関係をどうしていくのかが重要な問題のひとつとしてあるわけです。この問題はベトナムのほかにもドル・リンクしているような通貨圏、たとえばカンボジアなどの東南アジア諸国についても同じようなもので、ドルが弱体化する中で「自国通貨安・インフレ」を回避すべく相当な危機感を持っています。

いずれにしても、それらの国々の経済成長率は世界的に見て非常に高いわけです。日本が政治リスクなどから中国一辺倒という状況ではなくなっていく中、日本企業もそういった国々へどんどん進出していくと思われます。

北尾吉孝

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PROFILE OF YOSHITAKA KITAO
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