これまで、日本、欧米、新興国などが抱える具体的な経済テーマについて述べてきたが、もう少し大きな視点から21世紀というものを総括してみたい。その中で今後の日本のあり方を考えていこう。

イメージ撮影●村越将浩 人物撮影●永井 浩

連載第6回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!少し大きな視点で21世紀を洞察してみよう
(画像=ネットマネー)
連載第6回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!少し大きな視点で21世紀を洞察してみよう
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変わりいく世界において日本や日本民族は何を為すべきか

この連載の第5回までは具体的な経済テーマを取り上げてきましたが、今、何よりも重要なことは、少し大きな視点で〝21世紀〞というものを総括することではないかと私は考えています。要するに、21世紀になって一番議論しなければならないことは何なのかということであり、たとえば「日本はこの変わりいく世界においてどうすべきか」とか、あるいは「日本民族として21世紀に何を為すべきか」といったことに焦点を当てる必要があると思っています。

その観点からまず20世紀と21世紀というものの分岐点について述べますと、それらを徹底的に分けることになった21世紀の象徴的な出来事こそが2008年9月の「リーマン・ショック」であったと私は認識しています。

現在、世界が直面している諸々の問題の根底には常に「リーマン・ショック」が影を落としています。であるからこそ、21世紀という社会がリーマン・ショック以後にどう変貌を遂げたきたのかについて今こそ考えてみるべきだと思います。

最大の変化として考えられるのは、米国の政治・経済・軍事に対する力が著しく低下し、その結果としてドルの信認が失われ、ある意味では「ドルを基軸通貨とする〝パックス・アメリカーナ〞の終焉に向けた序章の始まり」と定義されるようなことが起こっているということです。

昨年、世界的なニュースになった欧州でのソブリン危機や通貨安競争といった出来事は、まさにそこから派生してくる、ある意味で当然の帰結ともいえるわけです。そして、米国の凋ちょう落らくと裏腹にあるのがエマージング・カントリー(新興国)の躍進で、中国を筆頭とする相対的に新興国といわれるような国の興隆が促されていくわけです。

それゆえに世界はG8(主要8カ国首脳会議)からG20(20カ国・地域首脳会議)へと多極化してきたわけで、言い方を変えれば、米国一極集中という時代はすでに終焉を迎えたということです。

今後はますますエマージング・カントリー、とりわけBRICsと呼ばれる国々(ブラジル、ロシア、インド、中国)の力というものがグローバルに見て相対的に強くなってくるという趨勢があるように思いますが、それこそが現時点で見えてきた21世紀のひとつの際立った特徴であると私は認識しています。

中国はリーマン・ショック後、4兆元の内需刺激策などのさまざまな政策を矢継ぎ早に打ち出すことで内需拡大に力を入れてきました。それに伴い、年率10 %前後の高成長を維持してますます自信を深め、世界におけるプレゼンスを向上させています。

つまり、今、世界で何が起こっているのかについて私なりの分析を端的に述べますと、BRICs、とりわけ中国の台頭というものが生じる一方で、その対立関係として米国の相対的地位の低下が起こっており、それを象徴するのがドルの独歩安やドルの信認低下といったものであるということです。

20世紀から21世紀に移るということは、すなわち米国一極集中支配の世界から多極化した世界へ移っていくことであり、またリーマン・ショックは、いわば20世紀体制の終焉、私が表現するとすれば「パックス・アメリカーナの終焉」「ドル基軸通貨体制の終焉」、そして「G8の終焉」で、それらを象徴する出来事であるということなのです。

したがって、まずはこのような観点からの議論を前面に打ち出していくべきであると考えており、個別の時事テーマについてはその文脈の中で議論を進めるべきではないかというように私は思っています。

また、一例として今年1月末にスイスで開催された「ダボス会議」についていえば、私はダボス会議のメンバーとして、そこでどのような議論を行なうべきかを話し合う日本での会議に参加しましたが、その場においてもこれまで述べたような「21世紀というものに関する議論を展開することこそがダボス会議の役割である」というように主張してきたというわけです。

21 世紀の特性は多極化の進展に加えて価値観が多様化

21世紀にあり、そしてひとつの過渡期にいる今、21世紀の特性とはいったい何なのかをさらに考えますと、「多極化」に加えて「価値観の多様化」が挙げられるでしょう。

言ってみれば21世紀というのは、西洋一辺倒の価値観が支配する世界から非常に多様化した価値観が混在する世界に移っていくような世紀になると私は思っています。その多様化した価値観の中には、中国的なものやインド的なもの、あるいはイスラミックの価値観やブラジルの価値観などなど、種々雑多なものがあるでしょう。そうした多様な価値観が存在するというところに21世紀の大きな特色があると私は考えているのです。

また、あらゆる情報が世界中を駆けめぐる〝グローバリズム〞とも言うべき時代において、その情報を誰がいち早く手に入れ、そしてその情報を誰がどのように分析して行動するのかによって勝敗が決するような世紀であるとも認識しています。

さらには、金融政策ひとつを考えてみても、今や一国だけではなく世界的な協調体制の下で各国がどのような政策を実施すべきかを議論しなければならない時代に変わってきています。そのような意味では、ピーター・ドラッカーなどもいうように、あらゆることが国境を超える「トランスナショナル」な関係が21世紀の特徴になってきているのです。

連載第6回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!少し大きな視点で21世紀を洞察してみよう

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P R O F I L E O F  Y O S H I T A K A  K I T A O 北尾吉孝 きたお・よしたか●1951年、兵庫県生まれ。74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95 年にソフトバンク入社、常務取締役。99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。現在、インターネット総合金融グループを形成するSBIホールディングスの代表取締役執行役員CEO。『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。「SBIマネーワールド」にてブログを執筆中