21世紀の特性の背景にあるのは「西洋文明の限界」であるといえる。この時代において日本人はいったいどのように生きていくべきか、前回に引き続き今後の日本のあり方を考えてみよう。

イメージ撮影●村越将浩 人物撮影●永井 浩

今日の世界的問題は西洋文明の考え方を推し進めた結果だ

前回のこの連載では、21世紀というものを総括するというテーマで私の考えを述べました。その中で、21世紀の特性として主に以下の2つの点を挙げました。ひとつは「米国一極集中支配の世界から多極化した世界への移行」であり、もうひとつは「西洋一辺倒の価値観が支配する世界から、非常に多様化した価値観が混在する世界への移行」です。

私が考えるこれらの21世紀の特性の背景にあるのは、「西洋文明の限界」であるといえるでしょう。

これまで人類は特に西洋文明の影響により、自然をコントロールするという立場や機械文明を最優先するという立場に立って、「生産力の増強」、あるいは「所得水準の向上」というようなことばかりを追求するようになってきました。

今日、たとえば地球温暖化、あるいは森林伐採による生物多様性の破壊といったことが世界的問題となっているわけですが、それはある面で西洋文 明の考え方を推し進めた結果として起 こってきたものといえます。

20世紀型とも言うべき欧米を中心とした西洋文明というものは、物事を全体として把握するのではなく部分的に取り出し、しかもその部分だけをさらに細分化して非常に限られたところだけを極めていくというような世界であり、統一的・統合的に物事を捉える東洋の世界とはまったく違ったものです。そのような西洋文明が人類における支配的趨すう勢せいとなっていく中で、ついには「木を見て森を見ず」の世界になっていってしまったわけです。

一例として医学について述べますと、現代医学というものは西洋医学の中であまりにも要素還元的になっており、たとえば目が悪くなったといえば眼科に行き、胃が痛くなったといえば胃腸科に行くというような具合ですが、そもそも身体というものは全体としてひとつのバランス、平衡を維持して動いているわけです。

そのような全体としてのバランスを捨て去ってしまうような形で現代医学というものがあるわけで、私は本当にそれでよいのだろうかと思い始めています。さらに言うなら、医師はむやみやたらに薬を処方するわけですが、薬はある意味では自然であるべき身体にとって有害な物質でもあります。

われわれが暮らしている地球もさまざまな調和と平衡の中で、生きとし生けるものの生命をはぐんでいます。たとえば、中国やその他のエマージング諸国の急速な経済発展の結果、そうした調和が崩れ、CO2(二酸化炭素)が増加して地球の温暖化につながるといった具合です。西洋文明のすべてが、もはや限界点に到達しているのではないかと私は認識しています。

西洋文明の限界と東洋文化への回帰ということでいえば、哲学者・教育者の森信三先生は『森信三全集続編第五巻』の中で次のように述べています。「『無我』を根底におく東洋文化の根本性格は、自己否定、ないしは自己抑制を原理とするものといってよいでしょう。したがって問題は、端的に申せば、自然科学を中心とする西洋文明が、今やその拡大化の極限に達したために、その抑止の原理を、『無我』を基本とする東洋文化への回帰によって、発見するほかないところまで来たといってよいでしょう」

西洋文明のある種の限界が明瞭となってくる中、冒頭で示したような特性を帯びる21世紀という時代において、日本人はいったいどのように生きていくべきなのでしょうか。これについて拙著『安岡正篤ノート』(致知出版社)では、以下のように述べました。 「人に人命があるように、国には国命があると私は思います。国命とは、その国の中にいる国民が総体として受けている命であって、それは日本人なら日本人の歴史と伝統の中に語られているはずのものです。それをベースにしながら、日本人の特性をわきまえて、今、世界のために何ができるのかを考えていくべきだと思うのです」

連載 第7回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!21世紀の特性についてさらに洞察を続けてみよう
(画像=ネットマネー)
連載 第7回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!21世紀の特性についてさらに洞察を続けてみよう
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連載 第7回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!21世紀の特性についてさらに洞察を続けてみよう
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日本民族の特性は外来文化と在来文化の融合・調和を進めてきたこと

今、歴史を振り返りますと、日本は昔から外来文化を積極的に受容する国際化の時代(飛鳥・白鳳・天平の唐風文化の時代など)と、受容した外来文化を在来の文化と融合し変容する国粋化の時代(平安時代の国風文化など)を繰り返してきました。その中で外来文化と在来文化の融合・調和を進め、優れた民族文化・日本文明を形成してきました。これこそが、日本民族の特性であるといえます。

そのような歴史を持つ日本民族の使命について、前述の森信三先生は『森信三全集続編第四巻』の 中で次のように述べられています。 「われらの民族の使命はいかなるものと言うべきであろうか。それは端的には、人類がその遥かなる未来において、何時かは成就するであろうところの、東西文化の融合という究くっ竟きょう目標に対して、一つの縮図を提供すること、少なくともそのために一つの『架かけ橋はし』になることこそ、われらの民族に課せられた、おそらくは唯一にして、かつ最大の使命と言うべきであろう」

日本人は、東西文化を融合することを世界で最も上手にやってきた民族といえます。そうした歴史を持つうえで、日本民族は東西文化融合の「縮図」を提供することができると森信三先生はいい、東西文化の「架橋」になることを日本人の唯一最大の使命にするべきであるといわれているのです。

今後の日本のあり方を具体的に議論していくためには、そのような日本人の特性や使命を土台にして考えていくべきだと私は思います。

連載 第7回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!21世紀の特性についてさらに洞察を続けてみよう
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北尾吉孝 P R O F I L E  O F  Y O S H I T A K A  K I T A O きたお・よしたか●1951年、兵庫県生まれ。74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95 年にソフトバンク入社、常務取締役。99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。現在、インターネット総合金融グループを形成するSBIホールディングスの代表取締役執行役員CEO。『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。「SBIマネーワールド」にてブログを執筆中。