低貯蓄率に陥った日本で、国債増発の可能性が増している。われわれは大変きわどい状況に直面しているという認識をまずしっかりと持たなければならないだろう。

イメージ撮影●村越将浩 人物撮影●永井 浩

連載第8回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!わが国の危機的状況と 財政問題を真剣に考えるべき
(画像=ネットマネー)
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日本の高貯蓄率はもはや過去の話となり、高齢化で低貯蓄率に

読者の皆さんは、日本の貯蓄率が現在いくらぐらいになっているか、ご存じでしょうか。

私が学生であった時分にはだいたい20%以上の高貯蓄率をキープしていました。日本の高度成長期においては、この高貯蓄率が「間接金融」を偏重した金融システムの中で生かされ、重化学工業といった分野に資金が効率的に傾斜配分されたことで、日本の成長のひとつの原動力となりました。

しかし、1992年には日本の貯蓄率は14・7%程度にまで下がってきて、さらにそこから漸減して2007年には2%台となり(07年=2・4%、08年=2・3%、09年=2・3%、10年=2・4%)、11年には3・2%と少し回復はしたものの、非常に低くなってきているのです。

なぜ、このような低水準にあるのかについてはさまざまな理由が考えられますが、そのひとつとして「高齢化」が挙げられます。すなわち、現在の日本においては約4人に1人がすでに65歳以上になっているわけで、そのような高齢化の中で老人はもはや貯蓄をせず、むしろ貯蓄した中から消費をする側に回っているということです。

高齢化の進行により貯蓄を取り崩して消費を行なうという状況になっているわけですから、当然ながら約1489兆円(10年12月末現在)といわれる家計の金融資産残高も今後は減少していくことになると思われます。

私がなぜそのように推測するのかといえば、低貯蓄率に至った状況下で現金・預金が家計の金融資産全体の55・1%と大きな割合を占めているからです。そのため、家計の金融資産全体の残高が減少していくスピードも増していくと考えられるのです。

こうした状況下で、日本国債の格付けが引き下げられたのはご存じの通りでしょう。今後、さらに格付けが引き下げられていくなら、当然、外国人は日本国債の購入時に高金利をどんどん要求してくることになります。そして高金利がどんどん要求されるなら、わが国の国債の利払い負担もどんどん増えていくことになるわけです。

この国債の利払い負担は、たとえば金利が1%上昇するだけで9兆円の負担増が発生し、それがまた国債発行を誘発するという悪循環に陥りかねないようなところに現在の日本はもはや来ているということなのです。

東日本大震災による被害額は95年の阪神・淡路大震災を大きく上回るといわていますが、復興のための費用は総額で20兆〜30兆円規模に上ると私はみています。「震災対策経費」として少なくとも10兆円は出さなければならないでしょうし、さらには今後も拡大する蓋然性がいぜんせいの高い原子力関連の被害額、あるいはさまざまな被害補償といったことをすべて考慮するとトータルで最高30兆円程度までかかるのではないかと思っています。

景気の現況を考えれば増税議論はナンセンス。強い憤りを覚える

そのような中で、東日本大震災の復興財源としていわゆる「復興増税」に関する議論がなされていますが、景気の現況を考えればまったくナンセンスであることは明らかです。このような非常時に復興増税などと称して増税を実施しようとすることに対し、「国民をばかにするのもいい加減にしてほしい!」と私は強い憤りを覚えています。

また、「日銀の国債引き受け」に関する議論も昨今盛んに行なわれていますが、その実施にあたって考慮すべきことが多々あるのは間違いないでしょう。しかしながら、やはり最終的には〝禁じ手〞といわれる日銀の国債引き受けというものが、現下の非常時においてはどうしても必要になってくるのではないかと考えています。

①低下していく貯蓄率、②電力供給不足による生産能力の低減や自粛の蔓延による消費減によるGDP(国内総生産)の低下、③今回の復興対策に絡む国債増発、④その国債の日銀引き受けということになってくれば、日本国債の格付けがさらに引き下げられる可能性は十分にあります。

われわれは、このような大変きわどい状況に直面しているという認識をまずしっかりと持たなければなりませんし、この現実について今こそ真剣に考えなければならないと私は強く思っています。

連載第8回 資本主義の危機に備えて「経済脳」を磨きなさい!わが国の危機的状況と 財政問題を真剣に考えるべき

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北尾吉孝 P R O F I L E O F Y O S H I T A K A K I T A O きたお・よしたか●1951年、兵庫県生まれ。74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95 年にソフトバンク入社、常務取締役。99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。現在、インターネット総合金融グループを形成するSBIホールディングスの代表取締役執行役員CEO。『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。「SBIマネーワールド」にてブログを執筆中。