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【ファンダ編】株――アベノミクス前に戻った?最後に残るのは「バリュー」

株価は上がらず成長期待も薄いが、日本株の基礎体力は確実にアップしてい。日経平均株価の水準とPBRを比較すれば、それは明らかだ。今は〝地味にコツコツ利益を積み重ねてきたが株価は割安〞な真のバリュー(割安)株を買っておこう。

PER8倍で買われないトヨタ自動車。市場は業績予想に悲観的…

「アベノミクス前の相場に戻っただけ……」と割り切っている市場参加者が増えているように思います。株高・円安を誘発する政策で、市場参加者の期待に働きかけてきたアベノミクス。ただ、3年経過してもその効果はうまく表れず、昨年10〜12月期のGDP(国内総生産)もマイナス成長。今年に入って急速に円高方向へ振れたこともあり、これから出てくる3月期決算企業の期初計画への期待もなくなっています。円安の追い風を受けてEPS(1株当たり利益)が拡大し、それとリンクして上昇した日本株。しかし、この構図が崩れ、海外勢の売買が少ない日に異様に動かなくなる日経平均株価―。確かにアベノミクス前の相場に戻っただけかもしれません。

EPSが伸びないから、2016年3月期の予想ベースのPER(株価収益率)で割安に見えても買われない―。その代表がトヨタ自動車でしょう。

トヨタ自動車の予想PERは8倍台。少なくとも割高とはいえないはずです。それでも買われないのは「2017年3月期は減益?」と市場が見ているからです。トヨタ自動車のアナリスト予想の平均は、最終利益で2%減益。想定為替レート次第で減益幅は大きくなる可能性があり、2017年3月期予想ベースに切り替わったとたんにPERは上がります。ちなみに、トヨタ自動車が減益になるとすれば2012年3月期以来。アベノミクス前です。

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ただ、アベノミクスが日本株の底力を高めた事実は見逃せません。今年に入って3月末までの日経平均の安値は2月12日(終値1万4952円)ですが、このときPBR(株価純資産倍率)は2012年11月以来となる1倍割れ(0.99倍)となりました。2012年の5〜11月はPBR1倍割れ状態が平常化していたのですが、当時の日経平均は9000円を下回る水準。当時と同じPBR1倍前後ではありますが、BPS(1株当たり純資産)は確実に上がっている。これが日本株の底力を高めたわけです。現状で成長への期待が後退しているとすれば、残るキーワードは「バリュー(割安)」になります。コツコツ積み上げ、積極的な自社株買い(その後の消却)で1株当たりの価値が向上してきた事実に着目しましょう。

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低PBRで真っ先に挙がるのは銀行です。メガバンク3社のPBRはいずれも0.5倍前後。マイナス金利による運用収益悪化への懸念から売り込まれた結果です。しかし、0.5倍前後というのは「大幅な赤字転落」レベルの悲観シナリオを描かなければ説明しにくい水準のはず。

3月に富山の第二地銀の富山第一銀行が東証1部に上場しました。公開価格はPBR0.3倍というIPO(新規株式公開)では珍しい水準で出てきましたが、すでに上場している東証1部の地銀株を調べるとPBR0.2倍台の銘柄だけで12銘柄(3月末現在)もありました。今はこういったバリュー株の仕込み時ではないでしょうか。

【マンガで押忍! 株編】
底力を早くから見抜くにはセンスが必要か?

人気が出る(株価が上がる)前に目をつけるのは株もアイドルも同じ? 今は目立たなくても本当は実力がある=ポテンシャルの高さを早くに見抜ければ風太も幸せになれそうですが、オワンコクラブはちょっと……。

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イラスト●大類道久

今月のファンダ先生

岡村友哉
金融ジャーナリスト。証券会社の営業、金融情報ベンダーでアナリストを務めた後、現職。日経CNBCで日々、キャスターをこなす。

【データ編】株――業績も株価も安定している。ニューソブリン銘柄が流行中

マイナス金利導入により日本でもブームになり始めた新しいキーワードをご紹介。今は〝守りの投資をすべき〞時期かもしれない。

2011年の米国ではやった言葉。当時と同じことが日本でも…

皆さんは「ニューソブリン」という言葉をご存じでしょうか?最近の株式・経済関連の報道で、よくこのワードを目にします。

ニューソブリンを単純に訳すと〝新しい国債〞。今は国債に代わる新しい投資先という意味で使われています。そもそもニューソブリンという言葉は2011年ごろに米国が使い始めたようです。当時、一部の格付け機関が米国債の格付けを最上位の「トリプルA」からワンランク引き下げました。これによって、世界で最も安全とみられていた米国債の代替投資先を探す動きが活発となったのです。その結果、株式市場ではマイクロソフトやエクソンモービルなど、高格付けで業績が安定している企業が注目され、株価も上がりました。

日本でも機関投資家を中心にニューソブリン銘柄が買われています(機関投資家が「ニューソブリン」と呼んでいるかはわかりませんが)。日銀がマイナス金利の導入を決定し、国債に依存する運用にも限界が出てきたからです。今後は個人の間でもニューソブリン銘柄が国債の代替投資先の有力候補となるでしょう。

では、いったいどのような銘柄が「ニューソブリン」なのでしょうか。今月はその定義を、「業績が安定していて株価のブレが小さい銘柄」としてスクリーニングを行ないました。この条件に加えて、企業の発行体格付けが高く、配当利回りも高ければ、なおグッドです。

下の表では、東証1部に上場する時価総額5000億円超とそれ以下の銘柄をそれぞれピックアップ。業績が安定しているという点では、直近5期連続で増益となっている銘柄を高評価にしました。

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また、株価のブレが小さいという点では、ベータ値に注目です。ベータ値は、個別銘柄の株価が市場全体に対してどの程度敏感に反応して変動するかを示す指標。このベータ値が低いほど、市場全体に影響されることなく株価が推移しやすいといわれています。

このような高収益かつ低ベータな銘柄はニューソブリンの対象になると思います。原油安や中国不安など、リスク要因の根本は依然として解決していません。相場全体が再びリスクオフの局面を迎えたとしても、これらの銘柄は値持ちのよさが強みとなるでしょう。市場に勢いがなく、好材料もないときはこういう銘柄に避難しておきましょう。

今月のデータ先生

小川佳紀
岡三証券。投資戦略部 ストラテジスト。フィスコなどを経て現職。相場概況から注目株まで日本株全般をウオッチし、本誌読者にオススメの銘柄を拾ってくれる貴重な存在。

【ランキング編】株――政府・日銀のオーダーで年間3000億円が入る株

企業に「もっと設備投資や賃上げを!」と圧力をかける安倍政権。その意向を受けて、日銀が年間3000億円規模での購入を検討しているのが「設備・人材投資ETF」。日銀の買いに先回りして買いたい銘柄は?

本命はトヨタ、日産など自動車株。設備強化に前向きな国際優良株が◎

マイナス金利導入で世界を驚かせた黒田総裁率いる日銀ですが、新たな株価下支え策が水面下で動いています。それは、設備投資や研究開発に力を入れたり、人材育成に積極的な企業で構成されたETF(上場投信)に年間3000億円を投資するというもの。 そこで今回は、設備投資に前向きで、日銀が示したETFの条件に沿う有望銘柄をランキングしてみました。

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ランキング上位を見ると、1位はトヨタ自動車で、2位・日産自動車、3位・デンソー、5位・富士重工業と、自動車セクターが独占する結果になりました。

2015年度の自動車業界7社の設備投資計画は新設計や新製造法の開発、旺盛な北米需要もあり、4.9%増の2兆9400億円に到達。アベノミクスの成長戦略遂行にあたっては、安倍政権とトヨタ自動車の間に深い協力関係があるといわれており、日銀がそれを支援する構図が鮮明になりそうです。

BEST15には8位・三菱電機、9位・日本電産、10位・ダイキン工業など電機セクターの有望株もランクイン。金融系では、11位のオリックスが目を引きます。

そのほか、HOYA、シマノ、圏外ですがテルモ、ユニ・チャームといった業績好調な国際優良株も設備投資を拡大しており、日銀による株価下支えに期待できそうです。

ちなみに、同ETFの構成銘柄は100銘柄以上で、特定業種に偏らず、構成銘柄の組み入れ比率は最大でも5%以内。直近3期で一度も営業赤字や最終赤字に転落したことがない企業、といった条件で銘柄が選ばれています。

買い入れ総額の3000億円という数字は、日銀がこれまで、そして今年も買っている日本株の年間購入枠3兆円に対して10分の1と、金額的なインパクトはそれほど大きくありません。

しかし、夏の参議院選挙(ひょっとしたら衆参ダブル選挙)を前に、アベノミクスの成長戦略がさらに加速するのは確実でしょう。その流れに乗って買われる銘柄の筆頭候補は、政府の意向に沿って設備投資や賃上げ、雇用強化を積極化している企業になるのは明らかです。

政府と日銀の後押しを受けて、ランキング上位の銘柄には株価を下支えする買いが期待できそうです

今月のランキング先生

窪田朋一郎
松井証券。シニアマーケットアナリスト。2001年、松井証券に入社。マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場を見続けている。個人投資家動向にも詳しい。

まとめ

  • ①安倍政権の意向を受けて日銀が新たに買う、いわゆる「賃上げETF」に注目。
  • ②安倍政権と関係が緊密なトヨタ自動車を中心に、自動車セクターが大本命になりそう。
  • ③成長戦略が加速する7月の参院選までは日銀の買いもあり、安心感が大きい。