中国経済は今、それほど悪い状況にないと私は考えている。しかし先行きを考えると、習近平氏があまりにも力を持ちすぎているがために、このまま行って大丈夫かという怖さも感じる。

中国情勢の現在の実相と 今後、懸念される点について

中国情勢の現在の実相と 今後、懸念される点について
(画像=ネットマネー)

6月、内閣府は「世界経済の潮流2014年Ⅰ」という報告書の中で、いわゆる李り克こく強きょう指数(電力消費量、鉄道輸送量、中長期新規貸出残高の3カ月移動平均値の前年比を求めたうえで、各項目を均等ウエートで平均した試算値)を用いて、中国景気は昨年秋以降減速しており、需要項目別に見ても2014年に入って内外需ともに伸びが低下しているとの見方を示しました。当該指数は昨年4月に2・0まで低下した後、同10月には10・6まで上昇しましたが、その後、今年3月まで5カ月連続で低下しています。中国経済の現況を見ると、7月のHSBC製造業PMI指数改定値が51・7と1年半ぶりの高水準となり、また6月の工業生産と1〜6月期の都市部固定資産投資も伸びが市場予想を上回るなど、中国経済は今、それほど悪い状況にないと私は考えています。

 4〜6月期の中国のGDP(国内総生産)伸び率は前年同期比7・5%と市場予想の7・4%を上回り、どうやら7・4〜7・5%の経済成長は今年達成できるものと思われます。そして、これまで心配されていたシャドーバンキング(影の銀行)の問題についても、ある程度コントロールできるような状況になってきているようです。以前にも指摘したように、いまだに解消していないことはもちろん事実でありますが、それほど大きな問題にならずに収束に向かうのではないかと見ています。「不動産バブル崩壊」が懸念される中で継続してきた引き締め気味の政策運営は、農業部門等の融資に積極的な一部の銀行の預金準備率引き下げや鉄道固定資産投資のたびかさなる増額修正等と、そのトーンは現在少し変わってきているように思います。

 李克強首相を中心とする政策当局が景気をよくすべく、こうした具体的な政策を採り始めていることも、中国経済に対する安堵感を与えつつあり、これからさらに落ち着いていくだろうと認識しています。そうした中で、いま私が少し懸念しているのは、中国最高指導部元メンバーの周しゅう永えい康こう氏に対する汚職疑惑をめぐっての情勢変化です。中国共産党は7月29日、「重大な規律違反」の疑いで周氏の調査を始めたと発表しました。これは汚職ということで周氏以下が皆拘束され「犯罪捜査」が続けられているものですが、それはあくまでも名目上の取り調べだと私は考えており、熾烈な権力闘争の舞台のひとつになっているのではという感じもします。

 胡錦濤・温家宝体制より習近平・李克強体制に移行した中国は、現況を見るに習氏があまりにも力を持ちすぎているがため、このまま行って大丈夫かなと何か怖さを感じなくもありません。習氏への権力集中の状況を「毛沢東のように強権を欲し、鄧小平のように改革の看板を掲げる」と評する高級幹部の子弟もいるようで、私も現在の彼は毛沢東・鄧小平に次ぐような類たぐいまれな指導力を発揮しているのは間違いないとみています。今の中国のはっきりとした姿というのは、習近平という指導者が「偉大な中華民族の復興」のためには環境問題や資源問題あるいは領土問題等で「当事国とぎくしゃくしようが関係ない」「他国の状況を斟しん酌しゃくする必要なし」といった姿勢を示していくのか、はたまたこれから「経済大国たる中国の責任」に関する認識をあらためて中国として世界との調和をどう図り世界の繁栄にいかに貢献していこうと思っているのか、といった部分がよりクリアにならなければ、なかなか見えてこないものだと思います。

あるいは中国は経済の民主化から政治の民主化という何者も抗しえない、ひとつの時代の流れにあるわけですが、今後の習氏の出方次第では、現路線の延長線上で政治の民主化ということをまったく図らない単なる共産党の剛腕能のう吏りとして将来称されるかもしれませんし、逆に勇気を持って共産党一辺倒を廃し中国民主化を導いた大変な偉人という称賛を受けるかもしれません。中国のみならず世界の安定という意味ではあまりにも権力が分散した状況では問題がありますから、少なくとも短期的には今のような習近平一極集中体制のほうが望ましいといえる部分もあると思いますが、より長いスパンで「中国という国の在り方やいかに」と言えば、やはり民主国家として自由や平等を標榜し現代的価値観というものを守るような国であって欲しいと思いますし、そうでなければ、いずれそれが国家を揺るがすような不安定材料につながっていく可能性もあるのだろうと思います。

「保8(8%GDP成長率の維持)」が困難な経済状況や、小なりといえども民族紛争の勃発や労働争議の多発している現状からすれば、中国共産党一極の社会経済構造もそろそろ難しいところに来ているのではないかと思われます。おそらく10年もたたないうちにいくつかの政党が結成され、選挙をせざるをえない状況になってくると私はみています。