ねじれた朝鮮半島をめぐる現下の情勢について

ねじれた朝鮮半島をめぐる 現下の情勢について
(画像=ネットマネー)

前回の連載では中国情勢の現在と今後について書きましたが、韓国にとってこの中国は最大の貿易相手国、最大の輸出相手国、最大の輸入相手国、最大の海外投資先国であり、両国間の貿易額は、韓米、韓日、韓欧の貿易総額を超えたというのが現況です。韓国は今、必死になって中国にすり寄っていこうとしています。7月に行なわれた中韓首脳会談で習しゅう近きん平ぺい国家主席と朴パク槿ク恵ネ大統領は中韓FTA(自由貿易協定)の年内妥結に向けて合意し、中韓FTA交渉は着実に進展しています。

 言うまでもなく、中韓FTAが早期に妥結・発効すれば、対中戦略で韓国企業は競合する日本企業に対して優位に立てるわけですから、日本としては中国向けの輸出がやはり相当なダメージを受けることになるでしょう。したがって、このような中韓の動きに備えるという意味でも、日本はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を一刻も早く決着させねば、大事な部分、とりわけ自動車の分野でまた韓国勢にやられていくということにもなりかねません。

 先日韓国に出張した際、金浦国際空港に中国人がわんさかいて、町中中国人であふれかえるような状況だったことに驚きました。日本人女性が韓国に大挙して押し掛けてブランド品を買い漁るといった、一時期見られた光景はもはやさま変わりしています。これは、日中・日韓の間で歴史認識問題や領土問題などの諸問題を抱える中、日本人がある意味で警戒してしまい韓国に行かなくなったということとともに、中国も韓国を取り込んでいこうとしていることが背景にあります。さらには中国人が訪韓するうえでのビザ免除措置の拡大が検討されているということで、韓国を訪れる中国人旅行客は今後さらに増加すると見込まれており、2014年に韓国はタイを超えて中国人の海外旅行先の人気ナンバーワンになるともいわれています。

 中国からの観光客がいなければソウルの明洞では閉鎖に追い込まれる店舗が出るとされるほど、韓国市場の対中国依存度は日増しに上昇しているうえに、中国の「韓国属国化」とも形容されるぐらい、貿易・不動産・ファイナンス等々、いま韓国のあらゆる経済分野で中国は大変な影響力を有しています。このように中国と韓国との関係がどんどん親密になり、一方で日本と中国、日本と韓国の関係はどんどん疎遠になっていくという中で、今後中韓がますます一体になって歴史認識だ何だと世界中でいっそう盛んにアピールしていくのではないかと私は非常に危惧しています。事実、先述の中韓首脳会談の後、両首脳は日本の集団的自衛権の行使容認などに関して強い懸念を示すことで、対日批判で共闘のスタンスを取ることを明確にしたわけで、やはり日本も両国との懸案事項に関していつまでも何の解決策もないまま同じような調子を続けていたら、日本だけがさらなるマイナスをさまざまに被るような形になっていくであろうと思います。

また昨今、北朝鮮は日本との関係を良化に向かわせ、中韓との間で険悪になった状況を日本で埋め合わせようとしています。日本としては、北朝鮮との関係にはよほどの注意を払い慎重を期して事を進めていかなければ、今度は韓国のみならず米国との関係にまでネガティブに働く可能性があります。われわれは、そうしたこともきちっと認識しておくべきだと思います。それから最後にもうひとつ、韓国の場合はもちろんいつ何が起こってもおかしくない北朝鮮という隣国の脅威に絶えずさらされているわけですから、米国との関係がぎくしゃくしないように常時どうしても米国を意識し続けねばなりません。なぜなら、十分な考慮がなされないなら、他国につけ込まれた一時期の日本のような事態、すなわち民主党政権誕生の後、日本の近代史上まれに見る外交音痴の総理が2代にわたって続いたがために日米関係は急速に悪化し、日米間のたがが緩み始めたところからいわゆる「尖閣諸島中国漁船衝突事件」が起こり、さらにはロシアのメドベージェフ首相が国後島を突如訪問するといったようなことと同様の事態が生じるリスクがあるからです。

そういう意味では韓国も片一方で、「今のレベルでの中国べったりで本当によいのか。中国はそこまで信頼できる相手であろうか」と、日米と天秤にかけながらよく考えてみる必要があるでしょう。中韓の貿易額が米韓と日韓の合計より大きくなったとは言ってみても、今や貿易面だけでなく、そこには常に政治という要素が入ってくるわけで、現局面というのは韓国に限らずどの国にとっても大変難しい状況だと思います。