岐路に立つ日本と世界。まず取り組むべき道筋がある

いま最も重要なことは、復興需要を生かして日本経済を浮揚し、いかにデフレ脱却へ導けるかを考えることだ。解散総選挙となって政治空白につながるような増税論を持ち出し、執着するときではない。

イメージ撮影●村越将浩 人物撮影●永井 浩

 懸念されていた「欧州ソブリン危機」は今、小康状態に入っているような気配を見せており、そうした中で米国の株式マーケットも最近は株価が割合しっかりしてきて、2月中旬にはリーマン・ショック後の高値を更新しました。

 最近発表された米国のさまざまな経済指標を見ても、S&Pケースシラー住宅価格指数については依然としてマイナスが続いており、住宅市場の景況が懸念される部分ではありますが、米国の雇用や生産といったものはかなりの水準に回復しつつあり、直近の米国企業業績も比較的底堅く、2012年通期で見ても前年比10%程度の増益となるのではないかというふうに私は考えています。また、中国についても2011年10~12月期のGDP(国内総生産)成長率は8・9%ということですから、米国・中国ともに経済情勢は想定以上に上向いていると感じています。

 日本のマーケットについても、今年は少し期待が持てるのではないかというように考えており、その主因のひとつには、やはり日本のマーケットがこれまであまりにも割安に推移してきた点が挙げられます。日本のマーケットがいかに割安であるかについてはいろいろな形で説明されていることですが、たとえば日本株は2006年以降6年連続で世界株式に対してアンダーパフォームしてきましたから、海外投資家の一部がここに来て相対的に割安感が非常に強まってきている日本株に注目し始めており、彼らの買いがある程度増えてくるのではないかというふうに感じています。

 さらに震災復興という大義の下で20兆円程度の税金が「真水(まみず)」として出ていくわけですから、イラン問題や欧州問題が大事にならずに済めば、株価はかなりの水準まで上昇してくるのではないかと思っています。

 日本銀行が2月14日、10兆円規模の追加金融緩和策とともに「物価安定のメド」として当面1%の物価上昇率を目指す方針を決定しましたが、「インフレターゲット論」に関する議論は昔からさまざまあり、私も本連載の第2回で述べたように、日本もある種のインフレをつくり出すよう意図的に導く施策をとっていくべきであると主張し続けてきましたので、日銀もやっとまともな金融緩和の方向に動きだし始めたと今回の発表を評価しています。

 そうした中で日本においては「消費税引き上げ問題」の行方がひとつの重大要素になってくるわけですが、当初の様相とは異なり、国民においても今は過半数の人が消費増税に反対しているという調査結果もあるわけですから、そもそもその実現は困難を極めることになるでしょう。

 消費税増税に対する私の基本的な考え方については以前よりずっと主張し続けてきた通りであり、財政再建を実現すべく増税自体は遅かれ早かれ必ず行なわねばならないと認識していますが、世界経済の現況を考慮すれば、消費税増税などという多くの国民の購買力低下につながるようなことを今というタイミングにおいて無理やり実現しようとするのはあまりにもナンセンスではないかと思っています。

 前述した通り、今後の日本においては震災復興という大義の下で多額の税金が「真水」として出ていくわけですから、今というタイミングにおいて最も重要なのは発生してくる復興需要を生かして日本経済の浮揚をもたらし、ついにはデフレ脱却へといかに導いていくことができるのかを考えることであって、現在の野田総理のように解散総選挙で政治空白にもつながりうる増税論を持ち出して執着するというようなことではないのです。

 より根本的には、消費税増税に頼りきるのではなく、自然増収を図るための経済成長戦略の立案・実施、そして徹底した行政改革による無駄の排除、およびさまざまな競争制限的な旧制度の徹底改革の推進といったことに、まずは取り組むべきではないでしょうか。

 仮に消費税増税にどうしても踏み切るというのであれば、議員歳費や議員定数の大幅削減などは当たり前のこととして、野田総理自身が野党時代に声高に主張していた、いわゆる「天下り、わたり」というものの徹底廃止、無駄な独立行政法人の全廃をすぐにでも実施すべきであり、それがすなわち、より大きな財源を生むことにつながりうる道筋といえるでしょう。

 これまで蓮舫氏や枝野幸男氏などにより実施されてきた「事業仕分け」という子供だましはほとんど無意味なことであり、たとえば昨年12月に八ツ場ダム建設再開が決定され、そしてさらには「コンクリートから人へ」の理念に反して、来年度予算では自民党政権時代にも凍結されていた整備新幹線が認められたわけですから、現政権が無駄排除というものに対していかに真剣に取り組んでいないのかは明らかなことでしょう。

 今の時局にあたり、一貫性の欠如した民主党政権を見ていて私は、まさにこうした様態を「信なくんば立たず」というのであろうと思った次第です。

210205_資本主義の未来を見据えて経済脳を磨きなさい! 北尾吉考
(画像=ネットマネー)

北尾吉孝 きたお・よしたか●1951年、兵庫県生まれ。 74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95年にソフトバンク入社、常務取締役。99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。 現在、インターネット総合金融グループを形成するSBIホールディングスの代表取締役執行役員社長。 『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。 「Face book」にてブログを執筆中。