遺物のような規制の変革を促し資本主義と自由競争を守ろう

PTS取引(私設の電子取引システム)の「5%ルール」がようやく適用除外されることになったが、明らかにおかしな規制の数々がいまだに敷かれている。私は今後も変革を促していきたいと思っている。

イメージ撮影●村越将浩 人物撮影●永井 浩

 6月に上梓した拙著『日本経済に追い風が吹いている』(産経新聞出版)でも指摘しましたが、私がずっと主張し続けてきた「5%ルール」(PTS取引における公開買い付け規制)の適用除外がようやく本年10月から施行されることになりました。「5%ルール」とは、投資家が証券取引所外で株主11人以上との取引を通じて株式5%超を取得する場合、日本ではTOB(株式公開買い付け)の実施が義務づけられていることを指しています。

 しかし、東京証券取引所(以下、東証)など取引所から買い付けられた株式に関してはTOBの義務がなく、取引所外での売買のほうが不利になっています。取引所にとってあまりに有利なこのルールは撤廃すべきですし、そもそもPTSを"取引所外"として定義すること自体がまったくナンセンスです。

 公正取引委員会は7月5日に東証と大阪証券取引所の経営統合を承認し、統合計画が簡単に認められた印象を受けるわけですが、残された「10%ルール」(PTS運営において取引量が対国内全取引所比の全売買代金の10%を超えてはいけないという制限)という過去の遺物のような制度についても独占禁止法に鑑み、撤廃すべきではないかと考えています。

 上場審査を筆頭にさまざまな審査上のコストがかかる中、一方はそれを負担し、もう一方は負担しないのはおかしいのではないかという意見もあり、私もそれについて理解はできますが、ではなぜ10%なのかという問題はいまだ残ったままです。

 この10%という数字は精緻なコストを割って算出されたものでもないでしょうから「なぜ10%なのか」「20%ではいけないのか」といったことは問われるべきですし、さらには「ある意味、独禁法上の違反とも思われるような合併が行なわれた場合、なぜその10%は維持されなければならないのか」といったことについても再度検証し、妥当性があるか否かをまずは明らかにすべきではないかと思っています。

 また「5%ルール」の撤廃の次の課題として取り組むべきなのは「信用取引規制」の問題です。世界の非常識である理解不能なこの規制は一刻も早く撤廃し、信用取引をPTSでも認めるべきです。日本ではおびただしい数のばかげた規制がいまだに敷かれているわけですが、規制当局に変革の必要性を訴え続けて改善させるという努力をしていかない限り絶対に変わることはありえませんから、私は今後も変革を促していきたいと思っています。

 規制特権を排除し自由競争をすべてに行き渡らせることこそが、投資家やサービス受益者に最大貢献しうる唯一の方法であると私は強く信じており、たとえば本連載でも時々批評を加えてきた東京電力(以下、東電)をめぐる一連の問題に対しても当てはまることだと考えています。

 すなわち、結局中途半端な形で実質国有化するというのであれば、なぜ初めから私企業としての東電に対してその責任を明確化し単純に法的処理を行なって一時国有化しなかったのでしょうか。そのうえで債権者および株主に対して投資家責任というものをきちっと問い、そしてまた東電元社員の年金受給者に対しても厳しく負担を負わせるべきであったにもかかわらず、実際は資本主義の原則から逸脱する形で破綻処理が進められ、非常に由々しき事態が生じてしまったというわけです。

 こうしたことを続ける中で段々と資本主義が資本主義でなくなっていくということに大変な危惧の念を抱いており、これからも資本主義と自由競争を守るために私は全力で戦い続けたいと思っています。

 最後に2013年12月末で終了となる証券税制の10%軽減税率の延長について一言述べておきます。

 6月29 日の日本経済新聞朝刊の意見広告をご覧になった方もおられるかと思いますが、インターネット証券4社(SBI証券、カブドットコム証券、マネックス証券、楽天証券)共同で「証券税制の10%軽減税率延長を求めるオンライン署名」を個人投資家の皆さまに呼びかけました。「証券市場を守ろう!」「投資家のために動こう!」という意図でようやくインターネット証券4社が立ち上がったことはよいと思うのですが、その一方で本来こうした役割を率先して担うべきは最大証券会社たる野村證券ではなかったのかという思いがしています。

 かつての"銀・証"の争いにおいても野村證券こそが立ち上がり証券業界を守ろうと尽力していたわけですが、今の野村證券というのは昨今多数報道されている通りインサイダー取引への関与などとんでもない事件を引き起こすばかりで、そうした役割を担おうという意思すら感じられず大変残念に思っています。

 こうした信じ難い事件を起こし続けていれば、時間の問題で"日本一の証券会社"というものは過去の話になるでしょうし、近年の野村證券を見ていて感じるのは自ら"ナンバーワン"の地位を捨て去ろうとしているのではないかということです。

201210_資本主義の未来を見据えて経済脳を磨きなさい! 北尾吉考
(画像=ネットマネー)

北尾吉孝 きたお・よしたか●1951年、兵庫県生まれ。 74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95年にソフトバンク入社、常務取締役。99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。 現在、インターネット総合金融グループを形成するSBIホールディングスの代表取締役執行役員社長。 『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。 「face book」にてブログを執筆中。

201302_資本主義の未来を見据えて経済脳を磨きなさい! 北尾吉考
(画像=ネットマネー)

話題の著書 好評発売中!

『日本経済に追い風が吹いている』 北尾吉孝/著  産経新聞出版 1575円 「欧州危機、米国の景気失速懸念がある今、日本は悲願のデフレ脱却を実現できる絶好の機会を迎えている」、日本が“上昇気流”に乗るためのビジョンを具体的に示し、話題の1冊です。