「アベノミクス」への期待感と成功させるためのポイント

すでに国内相場的には大きな変化が出てきているが、この変化は「アベノミクス」と称されるものによってもたらされたと言ってよいだろう。今後、この経済の元気を本物にしなければならない。

イメージ撮影●村越将浩 人物撮影●永井 浩

 今年の干支は癸巳(訓読み:みずのとみ、音読み:キシ)でありますが、この癸というのは、十干(じっかん)の10番目、すなわち最後の年です。十年一世と言いますが、ある意味その十年一世が終わり、そして次時代に移って行くという年です。

 そしてまた、癸巳という年は甲子(きのえね)から始まってちょうど30年という干支60年の中間点にあたります。前世代の古い体質の支配というものを完全に抜けて、現世代の本質が支配する大転換の初めの年となります。

 したがって、良くなるか悪くなるかはいまだにわからない状況ではありますが、はっきり言えるのは大転換が起こる可能性が高いということであり、良くなるか否かは政治経済の舵取りが誰の手によって、いかなる形で行なわれるかにかかっているということです。

 さて、すでに国内相場的には大きな変化が出てきたわけですが、この変化というのは「アベノミクス」と称されるものによってもたらされたと言ってもよく、私はどちらかといえばイェール大学の浜田宏一名誉教授と同じように日本の置かれた状況を捉えています。

 すなわち、この「アベノミクス」に対しては日銀をはじめ学者等の中でも、その副作用に懸念を示して批判的見解を述べる人がたくさんいることも事実ですが、私に言わせれば日本のデフレ問題はきわめて貨幣的な現象であり、金融政策が有効であるということです。日銀の白川総裁も浜田名誉教授の教え子ということですが、その教え子がかつての先生に反対するような状況の下で経済が良くなったのかというと、ずっと悪くなってきたわけです。

 あのリーマン・ショック以後、米国はQE3(量的緩和第3弾)に至るまで量的緩和の拡大をどんどん激しく実施してきましたが、その一方で日本はというと、日銀は米国に追随するような形で、ある意味で嫌々ながら施策を講じてきたというのが昨年11月の「電撃解散」前の状況でした。そういう中で安倍氏が、「大胆な金融緩和」こそがデフレ状態にある日本経済に対する最善の処方箋であると言い出したら、それだけでとたんに世の中が変わってきたというのが現況です。

 以前から世界の経済学者の中でも著名な人達の中では、「増税などはもっての外。まずは金融政策で徹底的にデフレ退治をした後に増税せねば大変なことになる」というふうな考え方をする人が結構多い状況ではありました。私としてはぜひ今後、そうした形で早急にデフレから脱却できればと思いますし、読者の皆さんも浜田名誉教授が最近書かれた本を一度読まれることをご推奨します。

 安倍総理は、大胆な金融政策、機動的な財政出動、民間の投資を引き出す成長戦略の"3本の矢"により経済を成長させていくことを強調していますが、日本における現実の変化も考慮すれば的を射た、いま非常に大事な部分であろうと思います。

 大金融緩和を実施していくうえでは、米国のように、どれだけの量的緩和をどの期間に何を購入して行なうかといった形で日本も非常に細かく公表すべきであり、ざっくり言って米国の半分である日本の経済規模にふさわしく、米国の量的緩和の半分程度の量的緩和へ早急に拡大していくべきであると考えています。

 仮にインフレターゲットを2%に設定した後には、当然のことながら調節の難しさが出てくることになるでしょう。インフレ状況下において金利がゼロのままとどまるということはありえませんから、当然、金利も上昇していき、そうなると国債漬けになっている日本の金融機関、とりわけ運用対象がなく国債漬けの地方金融機関等が壊滅的打撃を受けることにもなりかねず、このあたりのさじ加減を誤るととんでもない結果が生じるかもしれないということです。

 しかし、今はそのくらいのつもりでデフレからの脱却を第一優先で徹底的に貫き通し、それが日本国民や世界中に伝わっていくということが「アベノミクス」を成功させるうえでも大変重要になるのです。

 経済もやはり「気」であって、景気に「気」という字がなぜ当てはめられているかということをよく考えてみるべきで、元気の「気」と同じように経済を元気にしようと思えば、そういう「気」は国民に伝わるものです。言い方を変えると、消費者も投資家も皆そういうマインドになり、そして世界の人々もそういうふうに思っていくわけで、このマインドの醸成こそが非常に大事になってくるということです。

 日銀の誤った金融政策の下、日本はこれだけ長期にわたってデフレと円高に悩まされてきたわけですから、この問題が解消すればさまざまな事柄が大きく変わってくると思います。

 企業の収益状況も変わってくるでしょうし、これまで世界中から無視されてきた日本株が、再び投資対象として世界中から見直される時期にきていると私は認識しています。一言で言えば、「谷深ければ山高し」ということなのだろうと思います。

201304_資本主義の未来を見据えて経済脳を磨きなさい! 北尾吉考
(画像=ネットマネー)

北尾吉孝 きたお・よしたか●1951年、兵庫県生まれ。 74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95年にソフトバンク入社、常務取締役。99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。 現在、インターネット総合金融グループを形成するSBIホールディングスの代表取締役執行役員社長。 『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。 「face book」にてブログを執筆中。