第2次安倍内閣のこれまでとこれから

高い内閣支持率を得ている安倍総理だが、「世界の中の日本」という意識を持って、今後の日本の舵取りを行なっていくために強いリーダーシップで前向きな政策をどんどん打ってもらいたい。

イメージ撮影●村越将浩 人物撮影●永井 浩

 今、安倍総理の顔つきを見、発言を聞いていて思うのは、前回の首相当時に比して大変元気になっておられるということです。

 安倍総理は10代で潰瘍性大腸炎という難病を発症し、第1次安倍内閣においてはその持病が最悪の状態になり回復の兆しもなかったそうですが、現在の彼はかつてとは別人のような印象を受けます。やはり指導的立場に就くべき者は、健康(体力)をベースとして気力・知力が充実していることが非常に大事です。

 現在の高い内閣支持率は大いに結構なことであり、ぜひとも安倍総理には「世界の中の日本」という意識を持って、日本の舵取りを上手に行なっていただきたいと思う次第です。

 国内外における経済問題への対応のみならず、深刻化する中・韓・露との領土問題や核兵器開発を進める北朝鮮問題等への対応、そしてまた国内政治においては何としても夏の参院選で勝利を収め、強いリーダーシップを発揮しうる「ねじれ」なき状況で、前向きな政策をどんどん打ってもらいたいと思っています。

 いわゆる「アベノミクス」に対しては、昭和恐慌時に高橋是清蔵相が国債の日銀引き受けを実施したことが戦後のハイパーインフレにつながったとして、今回の物価目標政策に警告を発する人もいるようです。

 確かに日本のみならず世界的にも、そうした教訓を得て中央銀行の独立性というものは保たねばならないという共通理解が歴史的に規定されてきたことは事実ですが、何も安倍政権はハイパーインフレを生じさせようなどということを考えてはいないでしょうし、また財務省もハイパーインフレによる政府債務の実質的価値の大幅低下といったことを狙っているわけではないでしょう。

 いま考えるべきは、前回の当連載でも指摘した通り、2%に設定したインフレターゲットについて、いかにしてさじ加減を誤らないよう、うまくコントロールしながらそこまで持っていくか、もっと言えば、いかにして国民の間に「インフレ期待」を醸成し、国民の多くが抱いているデフレマインドを取り除くか、ということではないかと思います。

 また財政政策という観点から述べますと、私は今の局面ではむしろ積極財政に打って出るべきだと考えていますが、これまでも各所で散々指摘されてきた通り、積極財政とはいえ闇雲にコンクリートに資金を投下するのは論外です。

 たとえば、十分な需要を見込みえない新幹線事業に対し多額の予算を計上するなどというのはもってのほかですが、その一方で今こそ重点的に取り組まねばならないのが防災・減災に対する投資です。昨年12月に発生した「笹子トンネル崩落事故」は大変な事態となってしまったわけですが、今後は一層、さまざまな所で老朽化してきているインフラを徹底的に調査し補強していかねばなりません。そうしたところに重点的に予算配分すべきであって、金をバラまけばよいというものではなく、このあたりをはき違えないようにしてもらわねばなりません。

 それからもうひとつ、「脱工業化社会」へ向かうに相応しい新産業を興し育てていくべく、日本の新たな産業構造というものを模索し、税金投下の在り方を再考せねばなりません。円安によって輸出が振興する企業もありますが、時代に取り残され国際競争力を喪失した企業もあるわけで、そのゾンビ企業をいくらテコ入れしようと、もはや不可能でありましょう。

 そして、金融政策・財政政策に加えて参院選後に最も大事になってくるのは、構造改革等による潜在成長率上昇をもたらす政策の積極的な執行です。当連載でも幾度となく主張してきましたが、具体的に言うならば、まずはTPP参加の意思表明を即刻行なうべきでしょう。

 次に、少子高齢化に向かう日本が抱える問題の解決には移民政策によるしかないのですから、移民政策に対してもう少し前向きに取り組むことが必要ではないかと思います。

 3つ目は、現下の激動する国際情勢においてさまざまな事柄を適切に判断すべく、戦後GHQに押し付けられた現行憲法の改正に踏み切るということ、また憲法改正とともに、戦後数年以内につくられたような時代錯誤で生産性上昇の障害となっている法律を根本的に見直すことです。後者の具体例としては、「農地法」や「漁業法」などが挙げられますが、そうした我々の血税をずっと無駄遣いし続けてきた「天下り・わたり」先の根拠法等々、あらゆるものを根本的に見直し、法体系そのものを抜本的に変えていくべきだと思っています。ドイツの財政学者アドルフ・ワグナーの言う「国家経費膨張の原則」(=経済発展とともに政府の活動範囲は拡大し、国家経費は膨張していくという原則)に従って増え続けてきた日本の国家経費は、この「天下り・わたり」システムを裏づける根拠法を切り捨てて修正を加える中で大幅に節減できるのではないかと思います。

 安倍総理には、ぜひとも潜在成長率上昇をもたらす前記3点を着実に遂行してもらいたいと思う次第です。

201305_資本主義の未来を見据えて経済脳を磨きなさい! 北尾吉考
(画像=ネットマネー)

北尾吉孝 きたお・よしたか●1951年、兵庫県生まれ。 74年、慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78年、英国ケンブリッジ大学経済学部卒業。野村證券で事業法人三部長等を経たのち、95年にソフトバンク入社、常務取締役。99年、ソフトバンク・ファイナンス社長。 現在、インターネット総合金融グループを形成するSBIホールディングスの代表取締役執行役員社長。 『何のために働くのか』(致知出版社)など著書多数。 「face book」にてブログを執筆中。