学習,大学生
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【相場概況編】FX――今年後半戦の動きを決定づけるヤマ場到来!

本誌が発売されるころには、何かしらの方向性が出ているかもしれない英国のEU離脱。その影響が市場に与えるインパクトは大きい。

リスク回避の動きが増長すれば円高がさらに進み、米ドル/円の底はますます見えなくなる。動きだす2016年夏の外為市場の今を追った。

市場の不安定な心理が顕著に表れた6月の米ドル/円相場

6月は、3日に公表された5月の米国雇用統計の非農業部門雇用者数が3.8万人と市場予想を大幅に下回る弱い数字となったことを受けて、市場はリスクオフの動きを強めることになりました。また、23日に国民投票を控えた「英国EU(欧州連合)離脱」というテーマでの売り仕掛けがマクロファンド勢からも観測されました。息子の出来が悪いことから、85歳にもなって再びマーケットのフロントに顔を出さざるをえなくなった伝説の相場師、ジョージ・ソロス氏が、そのコバンザメたちを引き入れるべく自らのポジションを公にしてまで目先の相場をつくり上げようとする、彼流の〝オールドスタイル〞な相場形成が展開されたことも、これらリスクオフの動きを増長させました。

続々と報じられる各種世論調査が示す数字が、日に日に英国のEU離脱の可能性を高めていき、にわかに離脱懸念が現実的なカオスとして台頭していったのです。

そうした中、米国と日本では重要な金融政策決定会合が開催されました。6月14〜15日に開かれたFOMC(連邦公開市場委員会)では、利上げを見送り。声明文では第1段落の現状認識のみがアップデートされただけで、その他のフォワードガイダンスやリスクバランスについての認識には何の変更も見つけられないままでした。唯一、これまで利上げを主張してきたジョージ米国カンザスシティー地区連銀総裁が賛成票を投じたことがサプライズに。同時に公表された「経済金利見通し」では、2016年末のFF(フェデラルファンド)金利見通しで、中央値こそ据え置きとなったものの、年4回の利上げ予想が前回と比べて3人から1人、3回予想が3人から1人に減少。一方で2回予想が9人のまま。1回予想が1人から6人まで増加。2017年末と2018年末の中央値もそろって下方修正されるなど、全般的にハト派な内容でした。

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ただ、イエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長が定例記者会見で「1〜2回の統計に過剰反応すべきではない。第2四半期の指標は著しい持ち直しを示すだろう」との見解を示したほか、「7月利上げは不可能ではない。適切と判断すれば数カ月以内に行動する」との見通しに言及しています。市場では解釈の違いからか、受け取り方にバラツキが出ており、市場の反応もそうした不安定な心理状況を表す動きとなりました

一方、6月15〜16日に開催された日銀金融政策決定会合では大方の予想通り「政策の現状維持」を決定しましたが、一部では根強い緩和期待があったこともあり、米ドル/円や日経平均株価が一気に売り浴びせられることに。加えて、黒田日銀総裁の〝きわめて緊張感のない記者会見〞も格好の売り材料となりました。

今年後半は英国次第!?すべては夏、明らかに

6月23日までは英国世論調査の動向に一喜一憂することになりましたが、本原稿を書いていた16日深夜、「英国のジョー・コックス下院議員が銃撃され死亡」とのショッキングな事件が勃発。野党・労働党でありながらEU残留を支持し、問題となっている移民への支援活動を行なっていた議員が極右志向の人物からの襲撃に倒れたとあって、この事件をきっかけに、一気に世論に変化が生じる可能性もあったのです。投票を決めかねている層にとっては、残留への投票を決心する大きな理由が飛び込んできたわけですから。いずれにしても、英国のEU離脱が、どれだけ世界経済や国際的枠組みにとって脅威であったかは、市場の動きを見ても明らか。英国のEU離脱が引き起こした、民族自決主義の台頭による欧州での独立運動の激化がさらに混乱を長期化させてしまうのか、それとも、市場の投機筋が明らかにはやし立ててきただけの「リスクオフ」が幻影的なものとして消え去るのか。すべてはこの夏に、明らかになります。

【マンガで押忍! 為替編】
〝伝説〞の影響力はまだまだ大きい!?の巻

“伝説”といわれる人物の影響力は思いのほか大きいものの、そのオールドスタイルな手法がいつまで通用するかは未知数。85歳になっても、引退できない辛さも垣間見え……。

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今月のマーケット先生

和田仁志
グローバルインフォ 代表取締役社長。シティバンク銀行、スタンダードチャータード銀行でディーラーとして活躍後、証券会社でFXを立ち上げるなど、業界に精通。

【投資戦略編】FX――英国のEU離脱で混乱の長期化は必至!

1ドル=100円割れには介入警戒感があるものの、EUの混乱を背景に根強い円買いの兆候も。下値のメドは87円近辺か!?

まさかの英国EU離脱で市場環境が一変。これをチャンスと見るべきか今月の戦略先生 !?

6月23日から翌24日にかけて、英国のEU離脱の報道がリーマン・ショック級の衝撃を持って世界のマーケットを席巻しました。

米ドル/円では一時99円台をつけるなど、他の通貨でも軒並み下げ幅を急拡大。株式市場でも日経平均株価が一時1200円以上も下落しましたが、「離脱は非現実的」と捉えていた市場参加者がいかに多く存在していたかの表れといえるでしょう。

後のポイントとしては、政局絡みの相場展開が色濃くなりそうだということです。特に〝英国が出たのなら〞という追随組みが勢力の拡大を図り、一方でEU本体としては、追随者を封じ込めて揺るぎない共同体を維持するために英国の早期離脱を画策することになります。

必然的に欧州の景気失速懸念が拭えないことで、FRBの金融政策までもが、年末くらいまで動きがとれない可能性が非常に大きくなりました。

数日がたち、市場は落ち着きを取り戻しつつありますが、週足の2011年からの長期波動を見ると、米ドル/円は3年半ほどをかけて約50円上昇した2015年6月の高値125円台から、現在は約25円下げた〝半値押し〞付近を推移しています。この状況からすると、今後ジリジリと下げて、〝4分の3押し〞である87円近辺が、ひとつのターゲットになりそうな気配です。

ただし、87円近辺というレベルは、あったとしても一瞬(ワンタッチ)の可能性が高く、100円近辺までの自律反発は強いと思われます。下のチャートを見ても、100円付近で落ち着く傾向があることがわかります。

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では、いったいいつまでこの円高トレンドは続くのでしょうか。正直なところ、それを見極めるのは非常に難しい状況と言わざるをえません。英国にはロンドンという巨大な国際金融センターがあり、EUからの離脱は欧州内での人とお金の動きがストップすることを意味します。各市場へのインパクトはきわめて大きく、米ドル/円相場にもたらす影響の大きさも未知数です。ただ、一方では急落が安値仕込みのチャンスであることも事実。このような相場展開では、リスク管理を徹底しながら相場に追従し、着実に安値を拾う投資スタイルが〝キモ〞になります。

相場を見ている時間がない、しっかり損切りできる自信がない……という方は、簡単な設定をするだけでシステムが相場に追従しながら自動で売買を繰り返す外為オンラインの「ⅰサイクル注文」を検討してみてはいかがでしょうか。

今月の戦略先生

松本公明
外為オンライン 外国為替本部長。1989年から金融市場に携わる。ライブスター証券の証券営業部長、為替営業部長を経て、2012年より外為オンラインの取締役外国為替本部長に。

【売買診断編】FX――金利差に注目すると為替レートの未来がわかる!

為替レートに多大な影響を与える2国間の金利差だが、その強い連動性には〝きっかけ〞も必要。雇用統計の悪化で再び連動性を強めた米ドル/円レートと米国10年債の値動きに注目!

雇用統計悪化で下方向の連動性が高まる米ドル/円と米10年債の行方は?

為替レートを動かす教科書的要因としては、2国間の国力や物価の差、財政状況や貿易量の差、2国間の金利の差などが挙げられています。ただ、これらの決定要因のうち「何に反応して為替レートが動いているか」は、その時々の状況に応じて変化するため普遍性はありません。そこがFX投資家にとっては悩ましい限りです。

ちなみに、景気がよくなればお金に対する需要が高まるため、2国間の金利差はある意味、景気の差とみなすこともできます。また、利回りの観点から高金利通貨が買われ、低金利通貨が売られやすくなるため、金利差が為替レートに与える影響は大きなものです。とはいえ、金利差とて絶対ではありません。ある〝きっかけ〞で、両者が急速に呼応して動くようになるケースが多く、その〝きっかけ〞を見極めることが重要なのです。

そこで、今年3月以降の米国10年物国債利回りと米ドル/円レートを比較したのが下の図です。図を見ると、3月以降、10年債利回りは水色の点線で示した1.7%近辺で下げ止まってきました。対して米ドル/円は日本が連休中だった5月初旬に1ドル=105円55銭の安値に到達。為替レートと米国金利の間に、あまり連動性はありませんでした。

しかし、6月3日に発表された5月の米国雇用統計が大幅に悪化したことで10年債利回りが1.7%の下限を超えて急低下。米ドル/円も105円55銭を割り込み、ドル安・円高方向に下落。金利差と為替レートの連動性が急速に高まっています

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米国の政策金利を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が、景気計測手段として最も重視しているのが雇用統計。その数字が予想外に悪化したことで、債券市場と為替市場が同時にしかも敏感に動く〝きっかけ〞を与えたとみていいでしょう。6月16日には10年債利回りが1.518%まで下落して、2月の安値を下回りました。それにすかさず呼応して米ドル/円も安値を更新し、103円55銭までドル安・円高が進行。いわゆる〝金利と為替の水準論〞がより敏感に効いてくるようになりました。

それは日米金利差の動きから米ドル/円レートをある程度予測できるステージに入ったことを意味します。今後の為替取引では、米国10年債の動向に注意を払うことが大切です。

今月のジャッジ先生

藤井明代
カブドットコム証券 投資情報室 投資アナリスト。株主優待からテクニカルまで幅広い分野の情報発信で人気。ラジオやテレビなどレギュラー出演多数。著書『勝てる「! 優待株」投資』(幻冬舎)。