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【相場概況編】FX――大混乱の為替市場。先行きはいっそう不透明に

英国のEU離脱という予想外の結果に世界中が動揺した6月。7月に入っても、その動揺は収まる気配を見せない。

混乱の大波にのみ込まれた市場に安息の日はやって来るのか?マーケットのプロが鋭い視点で分析する。

まさかの連続で、市場は大混乱…。6月24日は歴史に残る一日となった

世の中には、こんなにも「まさか!?」が続くことがあるのでしょうか。6月16日に英国で、2児の母である野党・労働党のジョー・コックス下院議員がEU(欧州連合)残留を訴える集会が終わった直後、離脱を支持する極右思想の人物の銃弾に倒れ、刺殺されるというまさかの惨劇が起きたわけですが、この悲惨な事件をきっかけに市場のセンチメントは数々の世論調査の逆転劇とともに、英国の国民投票の当日まで、もっと言えば投票締め切り直後まで、英国のEU残留へと傾いていました。

市場の反応も、これまでのリスクオフ(リスク回避)ポジションを巻き戻す動きに。6月23日のニューヨーク市場の引けとほぼ同時に発表された、ユーガブの世論調査が残留52%、離脱48%との結果を受けて、6月24日早朝のオセアニア市場では、米ドル/円が一時106.838円、英ポンド/米ドルが一時1.5018ドルまで買い上げられました。離脱キャンペーンを先導してきた独立党のファラージュ党首は、早々に敗北を認めるコメントを出したほか、残留側では「シャンパンを用意」し始めるなど、まさに結果を決めつけるような雰囲気となりました。

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そんな状況の中、382地区の開票結果が出始めます。2番目に公表されたニューカッスル地区で51対49と残留が離脱を上回ったものの、BBC放送では「予想ではもっと残留が引き離さないといけなかった」との声が。そして、もともと離脱支持が多いと予想されていたサンダーランド地区で39対61と、離脱支持が予想を大幅に上回る得票となったことがわかると、市場には「えっ!?もしかすると、もしかするぞ」といった雰囲気が急速に蔓延。その後は僅差が続きましたが、オックスフォードやグラスゴーといった大票田地区が残留優勢の結果になったことを受けて、トータルで残留支持が離脱を上回ることに。市場もほっと一息つきましたが、そういった安堵の感もつかの間、再び離脱が逆転してしまいます。それでもまだ、市場は「ロンドン市内の票が開き始めれば、最終的には残留が離脱を引き離すだろう」と楽観していたわけですが、その都市部の票も予想外に残留が伸びません。ジリジリと票差が拡大していきます。市場関係者からは「おい、ちょっと待てよ。本当に逆転できないかもしれないぞ。ヤバイな」という電話が何件も……。そして11時30分過ぎ、離脱が残留を50万票以上引き離すと、「もう、だめだ。これは離脱だよ」という認識が一気に市場に広まりました。

米ドル/円は、なんと103円台から98.949円まで、ほとんど出合いのない中で急落。その後の乱高下はもう未知の世界です。市場参加者に言わせれば、思い出したくもない、でも忘れることのできない、長く憔悴(しょうすい)した一日となったわけです。

買い戻しの動きも鈍く、再び100円割れに

その日の海外市場では、当然のようにG7(先進7カ国)の財務相、中央銀行総裁が緊急の電話会議を開催。「われわれは、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済および金融の安定に対して悪影響を与えうることを再認識する」「われわれは、引き続き市場の動向と金融の安定を緊密に協議し、適切に協力する」との緊急の共同声明文を表明したほか、日本も独自に「政府・日銀は、世界経済の成長と、為替市場を含む金融市場の安定に万全を期すため、他のG7諸国とも連携しつつ、対応していく」と財務相・日本銀行総裁共同談話なる仰々しい声明を公表しました。

その後の市場は……というと、買い戻しも鈍いまま、7月8日に発表された6月の米国雇用統計を受けて一時99.99円まで下げ、再び下値を試す動きとなりましたが、7月10日の参議院選挙が終わった直後から、安倍首相がイチかバチかの勝負に出てきました。結末は次回にお伝えできるはずです。

【マンガで押忍! 為替編】
選んだ方もまさか!? な結果に、みんな大後悔の巻

後悔先に立たず……とは、まさにこのこと。投票のやり直しを求める動きもありますが、それをやったら民主主義自体が揺らぐことになりかねません。国民投票の難しさを世界に投げかけた、今回の出来事。まだまだ混乱は続きそうです。

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今月のマーケット先生

和田仁志
グローバルインフォ 代表取締役社長。シティバンク銀行、スタンダードチャータード銀行でディーラーとして活躍後、証券会社でFXを立ち上げるなど、業界に精通。

【投資戦略編】FX――1ドル=100円を割った米ドル/円相場の行方

6月24日の英国ショックで、ついに1ドル=100円を割り込んだ米ドル/円相場。不透明感が増す相場の先行きを、長期波動から分析する。

まだまだ楽観視できない米ドル/円相場。87円にワンタッチの可能性も

世界中に激震が走った6月24日の英国ショックで大底を見た米ドル/円相場は、その後、ニューヨーク・ダウ平均株価の7営業日連続最高値更新という好調に支えられ、7月20日には一時107円台まで回復しました。

英国のEU離脱リスクも織り込み済みとなり、市場は安定を取り戻したといえるのでしょうか?私の見解は否。今回のドル高は、ドルの強さで買われたというよりも、英国ショックで投げ売りをした人たちが、100円台まで戻ったところで買い戻しに走ったとみるのが妥当だろうと考えています。

英国のEU離脱リスクは、離脱交渉が本格化するにつれてより鮮明となり、ますます深刻さを増していくでしょうし、米国の好景気も年末にかけてピークアウトしていく危険をはらんでいるのです。米国の失業率は、この1年ほど完全雇用に近い低い水準で推移しています。つまり、ずっと景気のいい状態をキープしているわけですが、経済循環を考えると、やがて失速していくことは避けられません。こうしたさまざまな要因を鑑みるにつけ、このまま120円近くまで上昇していくイメージがどうしても描けないのです。

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米ドル/円の月足チャートを見ると、今年に入って2012年から下支えしてきた支持線を割り込み、いよいよ下降トレンドに入ったことがわかります。2012年から約4年間かけて50円近く上昇した分の〝半値押し〞が1ドル=100円付近で、市場は105円を割ったときから、100円をずっと意識してきました。そして6月24日、米ドル/円はついに100円を割り込んだのです。

そうなると次に意識されるのは〝4分の3押し〞の87円付近。そしてチャートを少し離して全体を見ると、2006年から2007年にかけてのチャートとよく似た形を描いていることがわかります。ここを境に米ドル/円は史上最安値の75円台へと向かっていったわけですが、今回はさすがに80円を切るところまでは行かなくても87円をタッチする可能性は高いといえそうです。

また、直近の注目ポイントとしては、主要国の中央銀行幹部らが参加する毎夏恒例の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が8月25日から米国ワイオミング州で開かれます。26日にはFRB(連邦準備制度理事会)のイエレン議長が講演を行なう予定ですので、何を語るのか、しっかり注目しておきたいところです。特に利上げに関する発言には注目です。

今月の戦略先生

松本公明
外為オンライン 外国為替本部長。1989年から金融市場に携わる。ライブスター証券の証券営業部長、為替営業部長を経て、2012年より外為オンラインの取締役外国為替本部長に。

【売買診断編】FX――FXでは「価格が情報を織り込んだか」に注目!

英国EU離脱のようなショックに見舞われると、為替相場は大きく動くもの。その後は、ビッグニュースの為替レートへの織り込み具合を確認することが相場の未来展望に役立つ!

英国のEU離脱を織り込んだ米ドル。英ポンド、ユーロは未消化

6月24日、英国の国民投票でまさかのEU離脱=ブレグジットが決まり、金融市場は大激震に見舞われました。

為替市場では、当然のことながらリスク回避の円買いが起こり、米ドル/円は一時1ドル=99.0円まで急落。当の英ポンドや離脱される側のユーロはそれを上回る大暴落となりました。

株価であれ為替レートであれ、金融市場で取引される〝価格〞は時々刻々と世界中のあらゆる情報を反映して動いていますが、これを投資の世界では「価格が情報を織り込む」「情報が価格に織り込まれる」などと表現します。

今回のブレグジットのようなバッドニュースの場合、為替レートがそれ以前の〝価格〞まで戻せば、悪い事象は〝価格〞に織り込まれ、ブレグジットによる急落がすべて打ち消された、と判断できます。

実際、米ドル/円は7月20日にブレグジット直前の1ドル=106.82円を回復し、107円台に到達。ブレグジットというバッドニュースは〝価格〞に織り込まれ、過去のものと化したと考えていいでしょう。

では、当事者といえる英ポンドの場合はどうでしょうか?英ポンド/米ドルは、ブレグジット・ショックで1ポンド=1.2796ドルの最安値をつけた後、ブレグジット直前の1.5019ドルを回復するどころか、依然1.35ドルを上限に下値もちあいを続けています。つまり、依然として英国がEU離脱のショックから回復していないことは明らかです。それは、ブレグジット直後に1ユーロ=1.0928ドルまで暴落し、その後も1.1ドル近辺で低迷しているユーロについても同様です。

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英国では残留派だった保守党のテリーザ・メイ氏が新首相に就任しましたが、英ポンドの低迷は今後の同国経済の軟調を示唆しているようです。少なくとも為替レートは、英国経済の今後の低迷を警戒して上げ渋っています

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このように、ビッグニュース発生前と発生後の為替レートを比較して、「情報が〝価格〞に織り込まれたかどうか」を確認することは、未来予測に大いに役立つのです。

今月のジャッジ先生

藤井明代
カブドットコム証券 投資情報室 投資アナリスト。株主優待からテクニカルまで幅広い分野の情報発信で人気。ラジオやテレビなどレギュラー出演多数。著書『勝てる「! 優待株」投資(』幻冬舎)。