
(画像=NET MONEY編集部)
【目次】
①️クリングルファーマIPOの基礎情報
②ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)(12/14更新)
③IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント(12/10更新)
- 会社名
- クリングルファーマ株式会社
- コード
- 4884
- 市場
- マザーズ
- 業種
- 医薬品
- 売買単位
- 100株
- 代表者名
- 代表取締役社長 安達 喜一 /1967年生
- 会社住所
- 大阪府茨木市彩都あさぎ七丁目7番15号 彩都バイオインキュベータ207
- 設立年
- 2001年
- 社員数
- 10人(2020年10月31日現在)
- 事業内容
- HGF(肝細胞増殖因子)タンパク質を用いた難治性疾患の治療薬の研究開発
- URL
- https://www.kringle-pharma.com/
- 資本金
- 300,000,000円 (2020年11月24日現在)
- 上場時発行済み株数
- 4,227,700株
- 公開株数
- 580,000株
- 連結会社
- なし
- スケジュール
- 仮条件決定:2020/12/08→950~1,000円に決定
- ブックビルディング期間:2020/12/10 - 12/16
- 公開価格決定:2020/12/17→1,000円に決定
- 申込期間:2020/12/18 - 12/23
- 上場日:2020/12/28→初値1,480円
- シンジケート ※会社名をクリックすると外部サイトへ飛びます
- 主幹事証券:野村證券
- 引受証券:SBI証券
(SBI証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:SMBC日興証券
(SMBC日興証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:
楽天証券 (楽天証券の詳細記事はこちら)
- 引受証券:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- 引受証券:いちよし証券
- 引受証券:東洋証券
- 引受証券:エース証券
- 引受証券:岡三証券 (岡三証券の詳細記事はこちら)
- 大株主
- 日本全薬工業(株) 12.12%
- 慶應イノベーション・イニシアティブ1号投資事業有限責任組合 11.38%
- DBJキャピタル投資事業有限責任組合 7.74%
- THVP-1号投資事業有限責任組合 5.48%
- CYBERDYNE(株) 4.84%
- OUVC1号投資事業有限責任組合 4.84%
- 安達喜一 4.16%
- 岩谷邦夫 3.20%
- 丸石製薬(株) 2.42%
- (株)リプロセル とうほう・ふるさと総活躍応援ファンド投資事業有限責任組合 2.42%
- 業績動向(単位:1千円)
売上高 経常利益 当期利益 純資産 - 2017/09 単体実績
ー -101,676 -102,096 382,997 - 2018/09 単体実績
ー -64,134 -64,554 518,443 - 2019/09 単体実績
ー -301,630 -302,050 216,393 - 2020/06 第3四半期単体実績
61,566 -166,046 -167,163 1,739,189 - ロックアップ情報
- 指定された株主は上場後90日目の2021年3月27日までは普通株式の売却ができず(例外あり)
- 調達額(公開株数×公開価格)
- 5億8000万0000円(580,000株×1,000円)
- 潜在株数(ストックオプション)
- 485,000株
- ビジネスモデル解説(執筆=株価プレス管理人)
- クリングルファーマ株式会社<4884>はHGF(肝細胞増殖因子)タンパク質を用いた難治性疾患の治療薬の研究開発を行うバイオベンチャー企業である。尚、本社を大阪府茨木市に置いている。
■設立背景
同社は「症例数が少なく、原因不明で、治療法が確立しておらず、生活面への長期にわたる支障がある疾患」に対する治療薬の研究開発を目指すバイオベンチャー企業として2001年12月に設立された。
中村敏一氏(当時:大阪大学大学院医学研究科教授)の発見したHGF(Hepatocyte Growth Factor:肝細胞増殖因子)タンパク質の開発実施権の許諾を2005年に受け、難治性疾患を対象としたパイプラインを導入し、組み替えDNA技術を応用したタンパク質の製造法の確立、非臨床試験の実施を経て、欧米及び日本における臨床試験を複数実施した。
その結果、組換えヒトHGFタンパク質の医薬品としての安全性を確認し、脊髄損傷急性期を対象とする臨床試験において有効性を示唆する結果を得ている。
■事業モデル
同社では自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針に、下記図のA.自社開発・販売モデル、B.導出・共同開発モデル、C.原薬供給モデルを対象疾患や提携先に応じて組み合わせたハイブリッド型の事業モデルを志向している。
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
■開発状況
臨床試験までステージが進んでいるパイプライン 4件
・脊髄損傷急性期
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・声帯瘢痕
・急性腎障害
動物疾患モデルにおいて有効性が認められた臨床試験準備ステージが1件(眼科疾患)あり、基礎研究のステージにあるパイプラインが複数ある。
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
●脊髄損傷急性期について
同社では慶應義塾大学医学部整形外科との共同研究により、脊髄損傷モデル動物を用いてHGFの有効性を確認し、臨床試験に開発ステージを進めている。これまでの第Ⅰ/Ⅱ相試験の結果を踏まえて、HGF(脊髄腔内投与用製剤:KP-100IT)は2019年9月に厚生労働省から脊髄損傷急性期を対象とした希少疾病用医薬品指定を受けている。
2020年7月より第Ⅲ相試験計画を開始しており、2022年後半に終了予定である。本試験で有効性を占めるデータが得られれば製造販売承認申請を進める予定である。
■製造販売体制について
同社は組換えヒトHGFタンパク質の製造方法(原薬製造及び製剤製造)のノウハウを有しており、2社の製造受託会社に原薬製造及び製剤製造を委託することで製品の供給を行う。
既に脊髄損傷急性期を対象とした製品のサプライチェーンは、販売元:丸石製薬株式会社<未上場の中堅製薬会社>、卸売・流通:東邦HD<8219>との提携が構築されている。
(画像=新株式発行並びに株式売出届出目論見書)
■業績推移
2017年9月期 売上高0億円、経常利益▲1.0億円、当期純利益▲1.0億円
2018年9月期 売上高0億円、経常利益▲0.6億円、当期純利益▲0.6億円
2019年9月期 売上高0億円、経常利益▲3.0億円、当期純利益▲3.0億円
2020年9月期 売上高4.7億円、経常利益▲1.2億円、当期純利益▲1.2億円
2021年9月期(予想) 売上高2.1億円、経常利益▲10億円、当期純利益▲10億円
2019年9月期まで売上の計上がなされず赤字が継続。2020年9月期は丸石製薬株式会社との間で締結した「KP-100ITの独占的販売許諾に関する契約書」に基づく契約一時金などで売上高4.7億円を計上した。ただし赤字は継続している。
2021年9月期は米国クラリス・バイオセラビューティクス社向けの売上を見込むものの、対前年同期比で減収の予想である。また研究開発費の上積み(2020年9月期4.9億円→2021年9月期10.0億円)により経常利益▲10億円と、赤字額は拡大の予想である。
尚、2019年9月期が公開申請決算期であり、期越え決算でのIPOである。
■財務内容
2019年9月期末時点で資産合計2.5億円に対し、純資産合計2.2億円、自己資本比率86%である。
2020年9月期末時点では資産合計24億円、純資産合計22億円、自己資本比率93%となっている。2020年9月期末時点で借入金なく現預金21億円を有しており、財務内容に対し特段の懸念事項はない。
■資金調達
IPOにより5.9億円の資金調達を行い、脊髄損傷(SCI)急性期パイプラインの研究開発費用(第Ⅲ相試験:5.9億円)に調達資金を充当する予定である。
尚、公募のみの予定であり売出は予定されていない。
■株主構成
筆頭株主は日本全薬工業株式会社(未上場:株式シェア12%)である。
第2位株主の慶応イノベーション・イニシアティブ1号投資事業有限責任組合(同11%)以下、多数のVCが出資を行っておりVCシェアは54%である。尚、VCはIPO後90日もしくは株価1.5倍のロックアップ契約を締結済み。
またCYBERDYNE株式会社(7779:同4.8%)、取引先・丸石製薬株式会社(同2.4%)他の事業会社も出資している。
安達社長は第7位株主(同4.2%、うち3.1%は潜在株式)の株主である。
■まとめ
HGF(肝細胞増殖因子)タンパク質を用いた難治性疾患の治療薬の研究開発を行う大阪(茨木市)に本社を置くバイオベンチャー企業のIPO案件である。
脊髄損傷急性期の開発が進んでおり、2020年9月期に丸石製薬株式会社と「KP-100ITの独占的販売許諾に関する契約書」を締結し契約一時金を計上している。
脊髄損傷急性期などのパイプラインの成果物はいつ上市されるのか、という点が今後の注目ポイントになると考えられる。また多くのバイオベンチャー企業と同様VC比率が高い状態であり、株主状況にも注意が必要といえる。 - IPOジャパン編集長 西堀敬 氏のコメント
- 当社は、難治性疾患(症例数が少なく、原因不明で、治療法が確立しておらず、生活面への長期にわたる支障がある疾患)に対する治療薬の研究開発を目指す大学発バイオベンチャーとして設立された。HGF(Hepatocyte Growth Factor:肝細胞増殖因子)タンパク質を開発パイプラインとして導入し、組換えDNA技術を応用したタンパク質の製造法の確立、非臨床試験の実施を経て、欧米及び日本における臨床試験を複数実施した結果、組換えヒトHGFタンパク質の医薬品としての安全性を確認し、脊髄損傷急性期を対象とする臨床試験においては有効性を示唆する結果を得ている。
株価のバリュエーションは、公開価格時価総額42億円、赤字であるため予想利益ベースのPERは算出できない。上場当日の株価動向は、同日IPOは当社のみなので、資金吸収額も少なく需給はタイトであり、初値は公開価格を上回って付くと予想するが、バイオベンチャー企業はコロナ禍にあって、人気薄セクターとなっているため、初値が付いた後、上値を追うような動きにはならないと考える。
セカンダリー市場においては、上場前の株主にVCが発行済株式の44%を保有しており、VCにとっては上場イコールイグジットであるため、ロックアップ明けに売りが一気に出て来る可能性がある。