中学2年生にして初めて株を買い、高校時代には早くも資産が1000万円を突破していたというかぶ1000さん。専業トレーダーの先駆けとして、一度も就職することなく30年に及ぶ投資歴を重ねてきた。

そんなかぶ1000さんは今回のコロナショックにはどのように対処したのだろうか。これまでの投資の経緯や、最近の状況などについて話を聞いた。

かぶ1000
かぶ1000
中学2年(1988年)から株式投資を開始。専業投資家歴は30年を超える。2019年7月16日に累積利益で4億円を突破。PMV(プライベート・マーケット・バリュー)とカタリスト(触媒、材料)に重点を置いたネットネット株、資産バリュー株への投資がメイン。年間20%の運用利回りを目標に、いまだ日々研鑽を重ねる。
Twitter:@kabu1000

著名投資家の手法を自分なりに工夫し、投資スタイルを確立

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(画像=TK Kurikawa/Shutterstock.com)

――まずは、投資を始めたきっかけについて教えてください。

子ども時代、正月にもらったお年玉を定期預金にずっと積み立てていて、それが中学生2年生の頃に満期を迎えました。その後、同じ定期預金にもう一度預けようとしたのですが、積み立てを始めた頃と比べて金利がかなり下がっていることに気付いて。

もう定期預金を選ぶのはバカバカしいと思い、叔父に相談してみたら「株を買ってみたらどうか?」とアドバイスされました。そこで、預けていた40万円で株を始めることにしたのです。

ただ、最小売買単位が100株に統一されている今とは違って、当時は1000株単位の銘柄が主流で、40万円で買えるものはかなり限られていました。少ない選択肢の中から中学生の僕が選んだのは、海運株と自動車関連株の2銘柄です。日本は島国だから船舶が不可欠だと思ったことと、トヨタが本拠を構える東海地方に住んでいて自動車に馴染みがあったことがその理由でした。

当時はよくわかっていませんでしたが、ちょうど日本でバブルが膨らみ始めていた頃で、僕が買った2銘柄の株価はびっくりするほど上昇し、わずか1年後には300万円に資産が増えていたのです。

――それは上々の株デビューですね。中学2年生に株式投資を勧める叔父様もすごいです。

その後も株価は上昇を続け、高校生になった頃には1000万円を突破し、バブルのピーク時には1500万円にまで増えました。でも、バブル崩壊で株価が急落し始め、気がつけば保有株の時価評価は200万円まで減っていたんです。

自分の勉強不足を痛感して、高校卒業後には会計の専門学校に入りました。損益計算書や貸借対照表を読みこなせないと、正当に企業を分析できないと考えたからです。専門学校卒業後はあえて就職せず、専業投資家の道を選びました。ただ、その頃はまだ自分なりの投資スタイルを確立できていなかったですし、株だけで生計を立てるのは難しかったので、フリーマーケットで安く仕入れたものをマニアに高く売るアービトラージ(サヤ取り狙いの転売)で補っていました。

大きな転機になったのは、タイバーツをはじめとするアジア諸国の通貨が暴落した1997年のアジア通貨危機です。世界的に株価も急落したので投資チャンスだと思ったのですが、まだまだ勉強不足で確信をもてずにいました。そうした状況下で、投資関連の書籍を読み漁っているうちに、ベンジャミン・グレアムが書いた「賢明なる投資家」に出合ったのです。

――グレアムは長期投資家のなかでもファンが多いですね。

グレアムはウォーレン・バフェットの師匠で、「長期的に割安株は高いパフォーマンスをもたらす」という教えに感銘を受けました。グレアムの手法をベースに自分なりの改良を加えて、僕は自分自身の投資手法を確立できました。

――その投資手法とはどのようなものですか?

手法のベースは、グレアムが考案した「ネットネット株」です。グレアムは、流動資産から負債などを差し引いた資産(流動資産-〈負債+貸倒引当金〉)を、「正味現金性資産(極めて換金性の高い資産)」と定義し、その3分の2が時価総額よりも大きければ、「ネットネット株」として有望な投資対象としています。

もっとも、グレアムによる流動資産の定義には少し疑問を感じました。現金と預金、受取手形・売掛金、有価証券に加え、売れ残り(不良在庫)である棚卸資産も資産として計上していたからです。そこで、僕は棚卸資産を除外した「正味現金性資産」が時価総額を上回っている銘柄をターゲットとすることにしました。たとえば、「正味現金性資産」が10億円、時価総額を6億円とすると、1万円札が入った財布が6000円で売られているようなものなんです。

――なるほど。中に1万円札が入ってることに気付けば買いの一手ですよね。

ただ、「ネットネット株」の株価が割安な水準にあるのは、市場参加者からほとんど注目されていないからなんです。そのまま放置されてしまうリスクもあるので、株式市場が注目するきっかけとなるカタリスト(材料)を抱えていることも条件に加えました。

具体的には、市場変更やTOB(株式公開買付)、優待制度の新設などですね。こうして自分自身の手法を確立させたうえで、2000年から600万円で株式投資を再スタートしたところ、2011年には累積利益が1億円に達し、2015年には3億円、2019年には4億円を突破することができました。

コロナショックで自分のスタイルを再認識

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(画像=OSORIOartist/Shutterstock.com)

――リーマンショック以降で最も大勝ちしたケースを教えて下さい。

換金性の高い資産が潤沢な「ネットネット株」のほかに、不動産をたくさん所有しているのにその価値が株価に反映されていない会社、いわゆる“不動産リッチ”の銘柄にも注目しているのですが、その典型例だった光製作所を2011年頃から買い始め、2013年以降に何度かにわたって利食いを入れながら、累計で約3200万円の利益を得ました。同社は業務用と家庭用の家具を製作する会社ですが、実は売上の半分以上を不動産賃貸事業が占めていたんです。

この銘柄はMBO(マネジメントバイアウト=経営陣による企業買収)が実施されて2019年2月に上場廃止となり、すべての持ち株を手放すことになりました。資産バリュー株は結果が出るまでにかなりの時間を要するケースが多いのですが、僕の場合は利益の「率」よりも「額」に重きを置いて、投資を行っているので、時間についてはあまり気にしていません。

――2年で3200万円というのも十分すごいんですが・・・。損失のほうはどうですか?ネットネット株への投資は、もともとの株価水準が低いので、大損のイメージは湧かないのですが。

完全に見込み違いだったのは、2016年に売買した三井住友フィナンシャルグループですね。約780万円の損失を出しました。2015年6月のチャイナショックで相場全体が急落した後、騰落レシオ(一定期間中における値上がり銘柄数の合計÷一定期間中における値上がり銘柄数の合計)が60%にまで達していたことが、この銘柄を買った理由でした。騰落レシオがこの水準まで下がれば95%の確率で反発するという法則性があるので、外国人投資家の持ち株比率が高いこの銘柄が率先してリバウンドすると考えたわけです。

しかし、この目論見は不発だったので、潔く損切りしました。結果的には、そのままずっと保有し続けていたらプラスに転換したのですが、信用取引でレバレッジを効かせていましたし、自分の想定とは違っていて損切りをしたわけなので、後悔はしていません。

――ショック安といえば、今回のコロナ禍にはどう対応しましたか?

過去20年間、年間の収支がマイナスとなったのはリーマンショックが発生した2008年だけでした。ところが、2020年は7月末の時点でそれを上回る損失を抱えていて、18%の評価損が発生しています。配当や短期売買(スキャルピング)で得た収益と損益通算すれば、13%の評価損です。

基本的に長期的なスパンでバリュー株に投資するので、自然とポートフォリオ全体に占める小型株の割合が大きいんですね。だいたい65%程度といったところでしょうか。小型株は流動性が高くないため、コロナショックのような乱高下相場では、売りづらいのが難点です。しかも、米国市場ではナスダック、日本国内でも東証マザーズが好調だったように、コロナ禍で上昇が目立ったのは新興市場でした。新興市場には、ネットネット株のようなバリュー株はなかなかないんです。

――確かに、マザーズはPER(株価収益率)が100倍をゆうに超えるなど割高な銘柄が多いイメージですね。

スキャルピングなどの様々な手法も試してみましたが、早朝から準備して取引時間中はずっと相場を凝視するというのは非常に疲れるんですよ(笑) これは自分のスタイルには合っていないと思いました。

また、企業分析に重点を置くのが自分にに最も合ったやり方なんだということを改めて認識することができたんです。パフォーマンスがよかったので、一時は成長株もポートフォリオに混在させていましたが、それらも減らして整理しました。僕が大前提としているのは「相場から退場しないこと」。そのためには、むやみにレバレッジを効かせた取引は行わないように心掛けています。

――今後の相場の動向についてはどう考えていますか?

まず、どのような時間軸で臨むのかが重要になってくるでしょう。3月期末決算企業の第1四半期決算発表によって、①業績が好調、②コロナの影響で一時的に悪化、③今後も業績不振が続きそうという3つに区分けできます。

たとえば、ファストフードはテイクアウトが伸びているのに対し、居酒屋チェーンは営業時間短縮の要請で厳しいといったように、同じ業界内でも明暗が分かれています。こうして見分けられやすくなっているわけですから、今後の業績回復が期待できそうな企業や、過大に悲観視されて売られすぎている企業にウエートを置いて投資するつもりです。

ただ、政策が迷走するリスクには気をつけたいと思います。安倍内閣の不支持率が高まってきているようなので要注意ですね。

いまは初心者にとって投資を始めるチャンス!

――主に利用しているのはどの証券会社ですか?その会社を選んだ理由についてもお聞かせください。

窓口での取引は野村證券ですが、オンライン取引ではauカブコム証券と楽天証券を併用しています。auカブコム証券は、前身の日本オンライン証券時代から使っていて慣れていることもありますが、銀行口座からの即時入金のみならず、銀行口座への即時出金にも対応しており、その上限も100億円と大きいことにメリットを感じています。

やはり、いざという場面ですぐさま資金を引き上げられるというのは安心材料ですから。また、楽天証券は楽天スーパーポイントで投資できるので、REIT(不動産投資信託)の積立に利用しています。

――最期に、これから投資を始めようかと考えている人たちへアドバイスをお願いします。

コロナの感染拡大が収まらなくてただでさえ不安がかさむうえ、不安定な相場も続いているので、投資を始めようかと思いながらも二の足を踏んでいる人が多いのではないでしょうか。

しかし、そういった局面だからこそ、絶好のチャンスととらえることができます。なぜなら、投資で最も大事なのは、「安いときに買って高いときに売ること」だからです。現実には、自信がなくて不安になってしまい、安い場面ではなかなか手を出せず、高くなってから慌てて買って真逆のパターンをたどってしまう人が少なくありません。

目先は相場の方向感もはっきりしていないだけに、経験がないと不安になるのは仕方ないかもしれませんが、いまは日銀のETF(上場投資信託)買いなどの金融政策によって株式相場が守られている状態、つまり下値が限定的であることは確かです。また、先に述べたように企業によって業績のよしあしがはっきりと分かれているので、中途半端な銘柄にうっかり手を出してしまう恐れも少ないでしょう。

これらを総合的に考えてみると、むしろいまの相場は初心者にもわかりやすい状況と言えるかもしれません。まずは、無理のない範囲にとどめた金額で、自分にとって身近な存在の企業を買ってみるといいと思います。