ネットマネー 2017年1月号より一部を特別公開!

黒子役でも誰もが知ってる「シェア No.1」

テレビCMやドラッグストア店頭の商品パック―ジに添えられる「シェアNo.1」のうたい文句。その大半の調査元は、このインテージホールディングスである。「地味」を自称し、黒子の役回りに徹しているこの老舗は、それとは裏腹に、1967年にいち早くコンピューターを導入した“チャレンジャー"の顔も併せ持っている。

取材・文●西川修一 撮影●石橋素幸

今期も連続増収・増益、4期連続の増配を見込んでいる市場調査業界の老舗は、着実な歩みを継続中だ。

インテージホールディングス
(画像=ネットマネー)

米国アマゾンのビジネスモデルを半世紀前に先取り

創業は1960年(当時は社会調査研究所)。市場調査業界でトップシェアの老舗だが、「あまり目立たないように生きてきた」と笑う宮首賢治社長の言う通り、一般にはややなじみの薄いインテージホールディングス。

しかし、同社の名は、おそらく誰もが一度は目にしたことがあるはずである。「テレビ視聴率のビデオリサーチ、音楽のヒットチャートのオリコンと同じように、『今月の○○市場のA社のシェアは?』というときはわが社のデータが使われます。消費財の市場シェア調査は、ほぼインテージ調べ。メーカーのデファクト・スタンダード(事実上の業界標準)になっています」(宮首氏、以下同)

インテージホールディングス
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インテージホールディングス
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ドラッグストア店頭に並ぶ消費財に添えてある「シェア№1」のうたい文句。そのただし書きの大半には、調査元である「インテージ」の名が記してある。同社の調査を業界標準たらしめているのは2つ。全国に抱える約5万人の男女モニターから収集するデータを基盤とする全国消費者パネル調査(SCI)と、スーパーやコンビニ、ドラッグストアなどの約4000店舗から食品、飲料、日用雑貨品などのPOS(販売時点情報管理)データを集める全国小売店パネル調査(SRI)だ。

「SCIは、1964(昭和39)年に全国の主婦から毎日の購買情報を買物帳に記入していただく形式からスタートして、今はインターネット経由でバーコードをスキャンする仕組みをつくりました」 驚いたことに、創業間もないころからIT(情報技術)を活用する発想を持っていた。「1963(昭和38)年には、巨費を投じて当時の米国IBM製の超大型コンピューターを導入。データを打ち込むパンチセンターに倉庫を隣接させ、米国アマゾンと同じ発想で小売業を試みた」

あまりに早すぎたこの事業はさすがに頓挫したが、半世紀の経験を積んだ消費者モニターの扱いは他に類を見ない。「セールスに役立ててもらうため性別、年齢などに偏りのないように設計してあり、精度も相当上げています」

モニターは専用のUSBメモリーをパソコンに差し込み、自動的に立ち上がる画面を通じてどこで何を買ったかをバーコードとともに入力し、同社に送信する。謝礼を支払ったり、モニターの購買履歴がそのままパソコンで家計簿式に見られる仕組みをつくるなど、モニターを離さないメンテナンスのさまざまなノウハウが蓄積されているという。

一人の対象者から一気通貫で情報を採取し、総合的に分析

「SRIも、地域別・業態別に偏りのないよう店舗を割り当ててあり、そこから1日にどれだけ売り上げがあったか、各コードの品物が何個、いくらで売れたかを毎日送信して

もらっています。たとえば、『東海地区のコンビニでは今日、何がどれだけ売れたか』などがすぐわかります」 同社最大のセグメント(2016年3月期の売上高比率87・5%)であるマーケティング支援事業は、この2本柱のデータが基盤となっている。

「マーケティング支援事業は、昨年、市場調査・コンサルティング事業から名称を変えました。今後、リサーチ事業だけでなくもっと範囲を広げて、たとえばメーカーのプロモーションや、広告のプランニングといったマーケティング活動そのものまで踏み込んでいくという意味を込めました」

強固な基盤をもとに、さらに新しい段階に推し進めるべく画策中という同事業。これを消費財・サービス、ヘルスケア、ビジネスインテリジェンスの3分野別に見ていこう。「消費財・サービスは当社の創業以来のコア事業。今この分野で売り込み中なのはシングルソース。つまり、同じ個人のモニターについて、購買履歴だけでなく、テレビやパソコン、モバイルなどの各メディアや広告への接触に関わるデータを収集するサービスです」

同社が「i -SSP」と呼ぶこのサービスで集めたデータをもとに、顧客メーカーは、自身がターゲットとする層がどんなメディアに接しているか、キャンペーンが効率よくターゲット層に届いているか、あるいは購買やイメージアップにつながっているかまで、詳しく分析できる。

「これまでは購買データとメディアの効果を別々に分析していましたが、これからは一人のモニターから一気通貫で情報を収集し、総合的に分析を行ないます。これはデータの質的な意味からいって相当の水準であることを、世界の各メーカーから評価していただいています」

この分野は、2016年3月期に売上高が前期比3・9%増、営業利益が同6・8%増と業績面でも伸びている。 続くヘスルケア事業は、おのおの得意分野を持つグループ子会社4社で構成される。「その一社であるアスクレップは、製薬メーカーが行なう臨床実験や製造販売後の調査などの支援、たとえば安全性情報の調査を行なっています」

もう一社、アンテリオは、約4万5400人の医師モニターを対象とした調査が主業務だ。「4万人超のドクターとコミュニケ―ションがとれ、かつ1対1あるいは3人以上の座談会からかゆいところに手の届くインタビューができるので、ほとんどの製薬会社とご契約いただいており、この分野で圧倒的なシェアを誇っています」

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他社の参入を許さぬ泥臭くて地道な作業という〝障壁〞

この医師モニターを管理・運営するのがアンテリオの子会社、プラメドだ。「モニターの維持には謝礼だけでなく様々な工夫が必要。たとえば、『ゆうさく君』というサービスは、薬品の有害事象の検索システム。会員になっていただければ、データベース化した薬剤と有害事象の関連性などを、自由にご活用いただけます」

症例レポート数は910万件超(今年3月現在)と世界最大規模とか。個別の薬剤名を入力すれば、どんな副作用が起こるか、ひいては死亡者数といった情報も検索可能だ。 最後の3つ目、ビジネスインテリジェンス事業は、いわゆるシステムソリューション事業で、「医薬と旅行という2つの得意分野が売り上げの中心となっています」。

前述のマーケティング支援事業で安定したポジションを保っているインテージだが、この先、新規参入者にその立場を脅かされる心配はないのだろうか。「おそらく投資に見合わないでしょう。モニターのメンテナンスもそうですが、個々の商品のマスターデータを構築するには、バーコードの情報を自動的に集めただけでは、商品名がわかる程度で役に立たない。必ずどこかで人の手を介した付加データの入力が必要。いずれも泥臭くてめんどくさいですから(笑)。お金があってもなかなか他社ではまねできないと思います」

今後、宮首社長が注力するのはAI(人工知能)だ。「商品マスターの構築や、マスターデータが存在しないオンライン広告の分類・評価に役立つ。そのためにAIに何をどう記憶させるかが非常に難しい。これもマスターデータの構築と同様、地味な試行錯誤の連続です」。先端技術のいち早い実用化と、地道な基盤構築という伝統は不変のようだ。

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COLUMN 反発基調が強く2500円を目標に

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好業績予想や高いテーマ性を材料に上場来高値更新を意識

マーケティング支援事業が主力で、サービス業界向けにインタビュー調査などが好調に推移している。直近ではSBIグループの子会社とプライベートファンドを共同設立するなど、戦略的な投資も積極的だ。ビッグデータもしくはAI関連とも位置づけられており、市場の関心は高い。

2017年3月期は、マーケティング支援事業の消費財・サービス分野とヘルスケア分野、ビジネスインテリジェンス事業いずれも増収増益を見込んでおり、通期業績予想も増収増益だ。また、4期連続で増配を予定するなど積極的な株主還元策も好材料といえる。

株価は10月に年初来高値を更新した。短期的には、心理的な節目の2000円台を一時回復したことから上げ一服となる可能性はある。ただ、中長期的に見ると、2015年4月の上場来高値(株式分割考慮後)を起点とした上値抵抗ラインを上抜けていることから、反発基調は強いと想定する。株価は好業績予想や高いテーマ性などを材料に上場来高値更新を意識した展開へ。2500円をターゲットとする。