ネットマネー 2017年1月号より一部を特別公開!

来月の日本株はどう動く? 世界の市場ではどんなことが起こっている? 日々めまぐるしく動く国内外の経済情勢を解説&予想する「サテライト」連載。前半は日本株メインの投資戦略を3連発、後半は先進国やアジアなど気になる海外の国にスポットライトを当てながら、フレッシュな情報を「誌面中継」します!

関連の大型株は少ない。個人に好都合の展開へ

オバマ7対プーチン14。第1次安倍政権時代を含めて、安倍晋三首相が米露両国の大統領と会談した回数である。米国は同盟国で、ロシアとは平和条約さえ未締結だが、トップ会談の頻度はダブルスコアの差がついた。

そして12月15日、安倍首相は地元の山口県にプーチン氏を招き、15回目の会談に臨む。首相続投の前提になる自民党総裁任期の延長に道筋がつき、来年2月とも予想されている総選挙では与党の圧勝観測も強まっている。安倍氏が手にしていないものは、対ロシア交渉での果実だけだろう。

交渉は予測が難しい。しかし、両国政府とも会談を儀式に終わらせない姿勢を示しているため、会談が迫るにつれて、関連銘柄が思惑先行的に動きだしてくるのではないか。

北方領土返還やロシアとの経済協力が投資の着眼点となる。ただ、機関投資家の好む大型株は石油・天然ガス開発に関わる商社やプラント大手などに限られるだろう。

むしろ、ナラサキのような北海道企業やロシア向け物流の東あずま海運といった、個人が主導権を握る時価総額100億円未満の小型株に投資妙味がありそうだ。

国内市場はこう動く…まとめ

  1. 安倍首相がプーチン大統領と通算15回目の会談
  2. 交渉の行方とは別に思惑先行で株価が動きだしそう
  3. 時価総額100億円未満の小型株に投資妙味

知っておきたい言葉、それは「債務の株式化」

中国企業が抱える債務の株式化について、中国政府と共産党内部でようやく意見統一ができたもようだ。この話題が急速に進展する可能性は低い。しかし、中国株がパニック的な急落に見舞われた際に「債務の株式化」というキーワードが頻繁に取り上げられれば、事態は急速に収束に向かうだろう。BIS(国際決済銀行)の資料によれば、中国の非金融部門の債務残高はGDP(国内総生産)対比で225%に膨張した。非金融企業の借金ではあるが、こうした過重債務企業に融資している銀行も不良債権という時限爆弾を抱えている格好だ。

そこで中国国務院(日本の内閣に相当)は10月10日、「市場化した銀行債権の株式化に関する指導意見」を公表した。これで企業の負債を株式に置き換え、中国版の整理回収機構に買い取らせれば、過重債務企業の再建と銀行の不良債権リスク除去という難問の同時解決に道が開ける。

昨夏の上海株暴落など中国市場は何度も動揺し、そのたびに日本や欧米でも株価が崩れた。しかし、暴落局面で中国企業の過重債務処理が進展の兆しを見せれば、株価は急速に立ち直るだろう。

世界市場はこう動く…まとめ

  1. 中国では、非金融企業は過重債務状態にある
  2. 企業の過重債務は、銀行ににとっては不良債権の原因
  3. 中国政府は債務株式化をようやく容認した

日本株年末高で儲けるには、今年の勝ち株・負け株を見極めるべし

今月の投資戦略日本株機関投資家などのプロがお休みモードに入り、節税目的の個人が処分売りをしがちな12月。年末高の波に乗るためには、その特性を理解した銘柄選びが重要だ!

個人投資家が前向きな理由でロスカットをする12月

「終わりよければすべてよし」と言います。株式市場でも、そんな気分が生まれがち。年末に株が上がれば、来年に向けて投資の機運も上がるといった雰囲気があります。

早いもので、もうすぐ12月。2016年も年末です。12月には、ほかの月にはあまりない投資行動が見られます。これを意識しておくだけで、年末高が現実となったときに取り残されるといったことも避けられるはず。今月のテーマは、「今年の勝ち株、負け株を見極めるべし!」です。

12月は、普段は活発に売買しないような個人投資家が重い腰を上げる唯一の時期になります。その理由は……「節税」です。値上がりを期待しながら我慢して持ち続けた塩漬け株も、この時期に限っては節税という前向きな理由が生まれるため、損切り(売却)する投資家が出てきます。

たとえば、値上がりしている保有株の含み益が100万円の投資家がいたとします。一方で塩漬け株の含み損も100万円あった場合、年内に売却して損失を確定すれば損益が相殺できますよね。今年、全体相場が年末高に向かった場合も、個人投資家の多くが塩漬けにしていると想像される銘柄については、節税目的の売りに見舞われ、地合いの波に乗れない可能性が考えられるわけです。

昨年の負け株はソフトバンクグループ。今年の負け株は…

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(画像=ネットマネー編集部)

昨年でいえば、ソフトバンクグループが年末の損切り株の代表格でした。12月初旬にかけて上昇した日経平均株価とは逆に動き、11月末時点で年初来1割ほども下落していたのです。信用買い残の多い人気銘柄ですが、それが逆に需給を悪くしたのでしょう。

昨年の後半には「アップルの成長神話崩壊」という大きな転換期を意識させられる話題もありました。それが村田製作所など、年前半に上昇していた電子部品株の崩壊につながります。結果、年末にかけてアルプス電気をはじめとする〝含み損の優良銘柄〞を持っていた投資家は損切りの売却に走りました。この現象と同じことが、今年の負け株の中から起こる可能性が高いでしょう。

では、今年の負け株は? まず、最も想定外だった失速テーマは「インバウンド(訪日外国人)」関連で間違いないはずです。昨年の流行語大賞にもなった「爆買い」のバブルは今年に入ってあっさり崩壊してしまいました。

象徴的な存在だったラオックスのチャートを見れば、塩漬け株の多さも想像できます。百貨店のJ・フロントリテイリングや松屋、時計のセイコーHDも軒並み下方修正されました。インバウンド関連株の悲観材料は、すでに存分に織り込んでしまったともいえます。ただ、「そろそろ戻るだろう」と、チャートを見た感覚で買うのは避けたいところ。こうしたリバウンド狙いの買いに、節税目的での処分売りをぶつけたい投資家がかなり多いと思われるからです。 主力銘柄の塩漬け株としては、今年は小野薬品工業でしょうか。夢のガン免疫治療薬「オプジーボ」による収益急拡大から、今年の4月に上場来高値の5880円をつけました。

ただ、超高額な薬であることが社会問題にもなり、「厚生労働省が薬価改定を待たずに臨時で薬価を引き下げる方針」との報道が……。小野薬品工業の来期の利益拡大シナリオが崩れたことから、株価も高値から半分以下に。信用買い残は1000万株強と、2日分に相当する規模で積み上がったままです。薬価のリスクを織り込んだとみてもいいのですが、それにしても需給整理には相当な時間がかかりそう。

年末にかけて日本株全体の地合いがよくなったとしても、こういった負け株は避けたいところ。需給が良好な勝ち株で真っ向勝負するべきです。VR(仮想現実)元年となった今年、高値圏を維持した強いソニーの存在が光りました。デフレに強い株が見直される流れから、上場来高値を再チャレンジする鳥貴族も勢いがあります。

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金融ジャーナリスト 岡村友哉さん
証券会社の営業、金融情報ベンダーでアナリストを務めた後、現職。日経CNBCで日々、キャスターをこなす

日銀ETF買いがTOPIXにシフトして恩恵を受ける銘柄

これまでとは異なる意味合いで市場の意表を突いた日銀の金融政策見直し。〝量〞から〝金利〞へのターゲットの切り替えの陰で、実はETF買いの対象もひそかに見直されている。今回は、その点に着目!

日銀ETF買いの対象が日経平均からTOPIXへとシフト

ひと言で表現すれば、足元の相場は〝買い手不在〞の様相を呈してきました。8月に外国人投資家は1・3兆円超もの売り越しに転じ、個人投資家もその動きに追随したのです。唯一の買い手は、従来3・3兆円だったETF(上場投信)の年間購入枠を6兆円に拡大する追加緩和策を7月下旬に発表した日本銀行のみでした。

金融緩和策の一環である日銀によるETF買いは、単に枠を大きく広げただけにとどまりません。これまで日経平均株価に連動するETFを中心に買い付けていたことから、識者の間でその弊害が指摘されてきました。そこで、8月以降は日経平均に代わって、TOPIX(東証株価指数)に連動するETFを買い付けの中心に位置づけています。

日経平均は東証1部上場の225銘柄の株価から算出されますが、その計算方法の特性から、株価の高い銘柄ほど構成比率が高くなっています。言い換えれば、株価の高い一部の銘柄が日経平均に大きな影響を及ぼすようになっているのです。日銀が日経平均連動型のETFをどんどん買えば、そういった銘柄の株価がいっそう上昇しやすくなるうえ、日銀がそれらの筆頭株主に躍り出てしまう可能性も出てきます。

こうしたことから、矛先がTOPIX運動型へと向けられたわけです。同指数は時価総額に比例した算出のため、日経平均のようなゆがみは生じません。今回のランキングは、この日銀の政策見直しに着目したもの。まず、左ページ上段の表は「TOPIX構成比率-日経平均構成比率」のマイナス数値が高かった10銘柄。すなわち、日経平均への寄与(影響)度が高い銘柄とみなせます。

TOPIXにおける構成比率が高い銘柄の株価上昇が顕著に!?

【日銀のETF買いの方針転換で上がりやすい株・上がりにくい株トップ10】

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(画像=ネットマネー編集部)
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特に日経平均に大きなインパクトを与える〝ご三家〞と位置づけられ、投機的な動きも観測されてきたのがファーストリテイリング、ファナック、ソフトバンクの3銘柄。そして、KDDIもそれらに次ぐ存在とされてきましたが、みごとに4位までの顔ぶれが一致しています。

5位以下は、上位4銘柄と比べれば寄与度は低くなっています。日銀による買い支えがTOPIX連動型へとシフトした以上、日経平均は今までと比べれば値動きが限定的になってくる可能性があるでしょう。そうなると、日経平均の寄与度が高い銘柄の値動きもさえなくなりそうです。

これに対し、左ページ下段の表は逆に「TOPIX構成比率-日経平均構成比率」の数値が高かった銘柄です。つまり、TOPIX連動型のETFが買われると、連動しやすい銘柄ということになります。国内最大の時価総額を誇りながらも、日経平均への寄与度はさほど高くなかったトヨタ自動車が1位となったのは当然でしょう。

2位以下の特徴としては、メガバンク3銘柄が顔をそろえていること。銀行株はマイナス金利導入に伴う収益性の悪化が悲観され、かなり売り込まれてきました。その結果、日経平均における構成比率は低いのですが、TOPIXの構成比率では3銘柄ともファーストリテイリングをしのぐ存在感を示しています。

10位以内に入った他の銘柄は、BtoB(企業間取引)のビジネスを営むキーエンスを除けば、いずれも個人投資家になじみの深い銘柄ばかりです。これまで日銀は、相場の下落局面でETF買いを実施してきました。この先、米国の利上げ決定で米国株にツレ安することがあれば、〝TOPIX敏感銘柄〞を仕込む好機となるでしょう。

松井証券 シニアマーケットアナリスト
窪田朋一郎さん
2001年、松井証券に入社。マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場を見続けている。個人投資家動向にも詳しい。

日立が子会社リストラ、富士通はパソコン事業売却…株価的に◎!

不採算部門を切り、期待できる事業に経営資金を振り向ける「選択と集中」を行なう企業の株が買われる!そういう銘柄は外国人投資家に好かれる点もポイントです。

リストラではなく飛躍への一歩。後日、株価もアップへ

皆さんは、「選択と集中」という言葉をご存じでしょうか? 以前はやったことがありますが、最近再び株式市場で話題となっているキーワードのひとつです。選択と集中とは、事業再編によって不採算部門を切り離す一方で、成長が期待される事業に資源を集中する経営戦略のことをいいます。たとえば先日の報道で、電機大手の日立製作所がグループ内連結子会社の「工具」と「半導体製造装置」に関連する事業の売却を検討中と伝わりました。日立製作所は他の電機企業に先駆けて積極的に事業再編を行なってきましたが、選択と集中を一段と加速させることで収益力を強化する見込みです。

同じく電機業界ですが、富士通が、不振の続くパソコン事業の切り離しを検討しているようです。そのほか、セブン&アイ・ホールディングスが阪急阪神百貨店などを抱えるエイチ・ツー・オーリテイリングと資本・業務提携し、関西のそごう、西武の店舗を譲渡する方針とのこと。身近な業界でも選択と集中が話題となっています。 不採算事業からの撤退というと、リストラの後ろ向きなイメージかもしれません。でも、注目したいのは、事業の売却によって得た資金をいかに前向きに使うかです。前述の日立製作所は、あらゆるモノをインターネットでつなげるIoTという分野に注力しています。経営戦略としてはアリですね。

選択と集中は外国人投資家からの評価も高いです。最近、外国人投資家による日本株の売り越し基調が続いているのは、日本企業のROEの伸び悩みが原因のひとつ。そこで、限られた経営資源を有効に活用し、効率的に利益を稼げる体制を整える企業が買われるのです。

下の表には、上場している連結子会社を多く抱える企業(選択と集中を行なう可能性がある企業)と、上場企業が筆頭株主の企業(選択と集中の対象となる可能性がある企業)です。要注目!

株KABUサテライト
(画像=ネットマネー編集部)

岡三証券 投資戦略部ストラテジスト
小川佳紀さん
フィスコなどを経て、現職。相場概況から注目株まで日本株全般をウオッチし、本誌読者にオススメの銘柄を拾ってくれる貴重な存在。