ネットマネー 2017年2月号より一部を特別公開!

持ち家vs賃貸どちらがお得?

賃貸派は、家を持つと住宅ローンなどの借金に縛られて人生の負担が重くなるという。

一方、持ち家派は、老後に住む環境を考えると常に不安がつきまとうから、自分の家を持ったほうがいいという意見もある。賃貸か持ち家かは誰もが悩むところだ。不動産価格や金利の推移を見ながら、現時点ではどう考えればいいのかを検証した。

持ち家購入派はローン完済でラクに。72歳で負担額が逆転

「マイホームを購入するか、賃貸で過ごすか」。誰もが悩むところだ。

実際に30歳で35年ローンを組んで家を購入した場合と、賃貸に住み続けた場合、どちらが得なのか。住宅ローンの返済額と賃料の月額がほぼ同じになる物件を埼玉県さいたま市で探して、シミュレーションしたのが上の図。不動産価格は新築マンションで4500万円の物件としている。

結果を見ると、最初の10年間はローン残高の1%が控除される住宅ローン控除のおかげで、購入派のほうが安く済むが、10年でその恩恵がなくなると、賃貸派の負担が軽くなる。その状態が40代から60代まで続き、購入派が65歳で住宅ローンを完済した後は負担がぐっと軽くなるため、72歳で負担額は逆転。85 歳までの計算では、賃貸派が約1500万円近く負担が重くなる。

フラット35 の金利1%と税制優遇を見逃すな!

買うか借りるかの判断は、いくつかの要素を組み合わせて考える必要がある。その中で、今、見逃せないお得なポイントは金利と税制優遇だ。もしも、賃貸派でいく場合の条件もチェックしよう。

買うか借りるかを見極める4つのポイント

不動産価格、ローン金利、税制優遇、ライフプラン、この4つが重要ポイント

シミュレーションの結果だけみると、老後に向けて、家を買っておいたほうが、不安が少ないというように見える。

しかし、シミュレーションは条件設定次第でどんな計算もできる。自分の場合も本当にそうなのか。ファイナンシャル・プランナーの竹下さくらさんは4つのポイントを押さえるよう、アドバイスする。

「判断材料は4つあると考えてください。1つ目は不動産価格。今はとにかく割高という印象ですね。2つ目に住宅ローンの金利がどうなのか。現在は史上最低の水準にあります。3つ目は税制優遇です。今は過去から見てもピカイチで、とてもいい内容となっています。4つ目が自身のライフプランです」

この4つのポイントで、竹下さんが注目するのは、まずローン金利だ。「フラット35は全期間固定金利なので、一度借りたら返済額が変わりません。今なら、1%ほどで住宅ローンが組めるので、借りるなら今〞と考えてもいい低金利です」(竹下さん) 税制優遇が過去最高レベルである点も見逃せない。

「よく、独身の人が『俺たち、税制面で恵まれてない』と言ってますよね。結婚していないので扶養控除もないし、と。その点、家を買えば、10年間、所得税が場合によってはすべて戻ってくるくらいの優遇措置があります。国として、景気浮揚のために家を買ってほしいという意向があるから、優遇されているのです。素直にその方針に沿うという考え方も判断基準のひとつとしてあります」(竹下さん)

今の生活スタイルでどのくらいの期間過ごすかを見極める

逆に、ライフプランから考えると、金利や税制優遇だけでは判断できない面がある。家族構成や、今の生活スタイルで暮らす期間がどのくらいあるのかを見極めないと、購入した家がすぐに陳腐化する可能性があるからだ。

「たとえば今、中学生と高校生のお子さんがいたとします。現在の住まいが手狭になったから家でも買おうかと思うでしょう。ただ、あと3年したら1人目の子供が大学に入ったら家を出てしまうということがわかっていたらどうでしょう。広めの家は、すぐに使わない部屋が生まれて、結果的に非効率な家になってしまうことも」(竹下さん)

それなら、子供が独立するタイミングで、夫婦二人で住める家を買うという選択肢や、子供が将来大きくなることを見越して、もっと早い時期に家を買う、というのがライフプランから考えたときの〝家の買い時〞ということがいえるだろう。

賃貸派の必須条件は年金で家賃を払えるか、保証人の確保ができるか

もちろん、賃貸派で一生いくのもひとつの選択肢だ。そのとき気をつけてほしいことが2点ある、と竹下さんは力説する。

「ひとつが年金から家賃を出し続けられるのか、ということ。持ち家派は、年金をもらうころには住宅ローンを完済しているため、毎月の住居費は減っています。その点、賃貸派は年金から家賃を支払わなければならない。もしも、年金から支払えず、貯蓄から毎月5万円を取り崩すことになると、精神的なストレスが継続的にたまっていくことになります」

つまり、年金受給世代になったときに、貯金を取り崩して、家賃を支払うはめになることは絶対に避けるべき、ということだ。「50代になれば、『ねんきん定期便』などで、だいたいの年金額がわかります。生活費も考えて、年金から支払える家賃の住居に早めに引っ越すというのもひとつの解決策になるかもしれません」(竹下さん)

もうひとつ、確認しておいたほうがいいのが、連帯保証人を確保することができるかということ。「今どきは、連帯保証人なしでも貸してくれるのでは……と思いがちですが、現実はそう甘くありません。特に貸す相手が高齢となると、家賃の支払いができるかだけでなく、万が一、急に倒れた場合などに引き取り手がいるのかということを大家さんは非常に気にします」(竹下さん)

公的な賃貸物件はどうかというと、たとえばUR都市機構の賃貸住宅の場合、就労者向け物件という本来の趣旨があるため、無職である年金受給者などは毎年、貯蓄残高証明書の提出が必要だ。また、都営や県営といった公的住居では年収制限があり、条件が合致しても、何年もの間、空き物件を待つ場合がある。

高齢になればなるほど住宅の確保には、それなりのハードルがあることを理解しておかなければならないというわけだ。

家を買うなら周辺の賃料相場と比較を!

上昇基調の不動産価格はどうなる?

不動産を購入する場合、せっかくなら価格が下がりにくい物件を買いたいと思うのは誰しも同じ。価格が下がりにくり物件は何を基準に探せばいいのか。不動産価値の見極め方と今後の価格動向を探った。

不動産を購入するなら万一のときは売却して財産になる物件を選ぶ

持ち家か賃貸かを考えるうえでもうひとつ気になる点は、不動産の価値そのものについて。住宅は何千万円もする、人生で最も高い買い物だ。

せっかく購入しても、5000万円で購入したものが、あっという間に1000万円の価値に下がってしまっては、長い時間をかけてローンを組んで返済しても、骨折り損の気分になってしまう。

家を購入するのであれば、不動産の価値をどのように見立てればいいのか、また、現在値上がりしている不動産価格はこれからどう推移するのか、不動産・住宅サイト「HOME'S」のシンクタンク、HOME'S総研に考え方を聞いた。

まず、不動産の価値については、ズバリ「下がらないものを選んで買う」だという。

不動産価値の下がらない物件を買えば、転勤や転職で家から職場に通えない、親の介護で実家のそばに住まなければならない、さらには、年をとって自分が介護施設に入居する……など、人生の節目で現在住んでいる家を売って、まとまったお金をつくることができるからだ。

では、価値の下がらない物件をどのように探せばいいのか。仮に5000万円で買ったマンションを10年後に4000万円で売ったとする。この場合の考え方は、10年で1000万円下がった=1000万円使ったと仮定。

つまり、年間100万円、月額にすると約8万3000円を使ったと考えられる。つまりその金額が、実際に払った家賃相当ということになる。

そこに固定資産税や都市計画税、管理費、修繕積立金を加えると、月12万〜13万円に。支払った金額が、その地域に家を借りて住んでいたのと同じであれば、借りて住んでも、買って住んでも、かかるお金は同じと考えられる。

将来的に価格が下がらない不動産を探すなら、賃料の水準を調べる

ところが、5000万円の物件が10年後に半額の2500万円でしか売れないなら、10年で2500万円。月額では約21万円かかったということになり、場合によっては、購入のほうが損という判断になる。逆に5000万円で購入した物件が、10年後に4500万円で売却できれば、10年で500万円、月額4万円程度。これは、買ったほうが絶対に得だ、となるかもしれない。

つまり、借りるほうが得か、買うほうが得か、というのは、どこの、どんな不動産を買うかで違ってくる。さらに言うなら、将来も価格が下がらない、もしくは下がりにくいところに買うべきだということになる。

では、そういった不動産はどの地域かというと、誰もが思い浮かべるのは、東京の港区や渋谷区。今なら少し広めの新築マンションが1億円するといった手が出ない物件というイメージでしょう。 「港区に買えば安心なのはもちろんですが、自分で買える予算の範囲で、賃料を基準に考えてもらいたいです」(HOME'S総研)

賃料というのは、住みたい人が多いところ、都心に近くて便利なところ、駅に近いところ、築年数の浅いところなどが高くなる。逆に、郊外にあるところ、古いところ、駅から遠いところは安くなる。つまり、賃料の高さは不動産価値のバロメーターと見ることができる。

「自分の予算の範囲内で、賃料水準の一番高いところを探せば、価値の高い物件を購入できるという方程式が成り立つのです」(HOME'S総研)

この2年で2割上昇!上昇要因はあっても下落要因はなし!

とはいっても、今の不動産価格は高すぎるのではないか。せめて東京オリンピックが終われば、価格が下がるのではないかと考える向きもあるだろう。

これに対して、ちまたでは「ここ数年で不動産価格が大きく下落することはありえない」ともいわれている。

新築マンションで見ると、ここ2年で価格が2割程度上昇している。その最大の要因は、東日本大震災以降、復興支援が優先し、資材と人手が圧倒的に不足してしまっているという背景がある。この状況は、1年や2年では改善しそうもない。

アベノミクスの金融政策も、今すぐ変わる可能性は低い。ゼロ金利政策が続く限り、土地を購入しやすい状況が続く。〝ゼロ金利政策維持=土地は下がらない〞ということになるのだ。また、円安要因で資材価格の高騰以外に、海外からの投資が容易になっていることも、不動産価格が上がっている要因といえる。

価格1割ダウン、金利0・2%アップでも、結果は変わらず

こうした複数要因を勘案すると、東京オリンピックが終わったから、といった理由で不動産価格が大きく下落することは考えにくいという。「東京オリンピック開催の2020年の後に、もし不動産価格が下がっているようなことがあったとしても、せいぜい1割程度のダウンでしょう。そのときは、住宅ローン金利も0・2%程度上がっているかもしれません。結果的に今とイーブンということにもなります」(HOME'S総研)

その条件でのシミュレーションが、45ページの結果だ。35歳で購入、ローン借入期間は30年で設定しているが、持ち家派の支払総額が72歳時点で賃貸派より安くなっている。85歳時点では、賃貸派の支払総額が持ち家派より約1400万円高くなり、30歳でのシミュレーションとそう変わらない結果となった。今のところ、持ち家派が優位ということになりそうだ。