ネットマネー 2017年2月号より一部を特別公開!

IoTの「リーディングカンパニー」

電力・ガスや航空・鉄道・道路など、社会インフラのシステムを扱う社会システム事業が創業以来の事業の柱であるアドソル日進。老朽化したインフラのシステムの入れ替えで好調だが、米国ソフト会社の日本総代理店を務める中でその基盤を築いてきた技術力が、IoTという未来の新分野で大きく花開こうとしている。

取材・文●西川修一 撮影●小原孝博

IoTのリーディングカンパニーを自負しながら、新中期経営計画で9期連続の増収増益を目指す

「もはやソフトウエア会社ではない」―社長が言い切る理由

あらゆるモノがインターネットでつながり、相互に情報をやりとりしつつ制御や遠隔操作を行なうIoT(Internetof Things)。第4次産業革命といわれるこの流れに応じ、多くの企業がIoT推進部など新部門を立ち上げて試行錯誤を始めている。

しかし、すでに「IoTシステム事業部」という実動部隊を動かしている企業がある。

「IoTのリーディングカンパニーという自負があります」と上田富三社長が言い切るアドソル日進がそれだ。
「もはやソフトウエア会社ではなく、「IoTで未来を拓く総合エンジニアリング企業」。そこが同業他社と大きく違うところ」(上田氏、以下同)

2016年に創業40周年、社長7年目を迎えた上田氏の表情は明るい。一般にはシステム開発会社にカテゴライズされているが、2016年3月期に6期連続の増収増益を達成、2019年3月期までさらに3期連続の最高収益を目指すという今、ソフトウエア開発会社の範疇には収まらないという気概が、上田氏の言葉の端々からうかがえる。

同社の事業の柱は2つ。まず、電力・ガスなどのエネルギーや航空・鉄道・道路といった交通関連など社会システム事業が創業以来の柱で、売上高構成比率も約8割。取引先に日本のインフラを担うリーディングカンパニーがずらりと並ぶ。

「日本のソフトウエア業界の多くは金融が柱だが、インフラを柱とするところは意外に少ない。しかもわが社は独立系。どのメーカーさんとも等距離でお仕事をさせていただいています」

安倍政権下で老朽化した社会インフラのシステムの総入れ替えが始まっており、その需要が根強いことが大きい。「実際、日本の社会のシステムは老朽化している。特にコンピューターシステムは新しいテクノロジーで手がけなければなりません」

さらに電力・ガス自由化により、新規参入する企業のシステム受注などのビジネスチャンスが生まれる。「その次に来るのは電力・ガス会社の分社化。全国の電力・ガス会社とその数多い関連会社も含めて、組織が変わるということはシステムが変わるということです」

ますますステージが上がり、付加価値も確実に上がっている、と上田氏。価格競争力をつけるために、海外で中国・ベトナムに開発センターを設けた。

「今後も社会インフラの案件は続けていきたい。同時に社会的責務も感じています。『これが動かないと社会の動きが滞る』という仕事がいくつもあるし、開発に従事した社員のプライドは大事にしたいですね」

OSのハンドリングやカスタマイズが可能な高水準の技術

2つ目の柱が売上高構成比率約2割のIoTシステム事業だ。各種センサーやOS(Operating System)、近距離無線通信技術などのデバイス制御から、広域ネットワーク、大規模基幹システム、ビッグデータ、クラウドに至るまで、すべてのIoTシステムの領域を、さらに企業全体に及ぶ情報セキュリティーガバナンスの設計からネットワーク、デバイス、フィジカルに至るセキュリティー対策も自社ですべて提供する。

上田氏がIoTに関する同社の強みを強調する理由には、少し説明が必要だろう。

コンピューターのOSと言われて連想するのは普通、机上のパソコンに組み込まれたマイクロソフトの「ウィンドウズ」だろう。が、「自動車や医療機器、半導体製造装置などは、みんな特殊なOSで動いています」。

それらのOSを「リアルタイムOS」と呼ぶが、アドソル日進は25年前から、そのリアルタイムOSを扱う米国のリンクス・ソフトウエア・テクノロジーズの日本総代理店を務める。このOSをメーカーに納めて使用料を得たり、カスタマイズするという。

「このOSは米国の国防系の機器・装置に使っている特殊なものですが、長年その中身に触れてきたおかげで、これを使いこなせる技術者がわが社に出てきました」

OSはソフトウエアすべてのベースとなるもの。OSの上に乗せるソフトのみ扱うソフトウエア会社と、OSの基幹そのものに触れているアドソル日進とで差がつくのは必然だろう。

「仕様書をもとにプログラムを組む社員を集めている会社はたくさんありますが、OSまでわかっている会社はそうそうありません。わが社にはOSと、これを搭載するハードウエアの設計ができる技術者がそろっています」

国内自動車大手とも直接パートナーを組んで、自動車の最先端のOSを受託開発している。「リナックス」「アンドロイド」などが出現したOSだが、重要な機器・装置には今もリアルタイムOSが使われているという。

「国内自動車大手から絶大な信頼を得て、『リアルタイムOSのハンドリングやカスタマイズができるのは、日本ではアドソル日進くらい』と認識されています。先進的な組み込みシステムと、センサー技術や近距離無線通信技術、地理情報や位置情報を融合した先進的なスマートソリューションなど、IoTシステム向けの先進技術を提供しています」

1人当たり5つ以上の資格を持つ技術者のレベルの高さが、顧客評価を高めている基盤だと上田氏は言う。

自動運転中の車のハッキングにも対応が可能なソリューション

「今でさえIoTが話題ですが、たとえば医療機器メーカーさん向けに、病院の患者さんのさまざまなデータをセンサーから取り込んでナースステーションの大型テレビに送り込むといったシステムを、昔から手がけてきました」何を今さらというところか。半面、これからはIoTには新たなセキュリティーの付与が必要だ。

昨年、IoTの代表格、自動運転中の車へのハッキング実験に成功したとのニュースが流れた。機器同士がつながるIo Tのネットワークでハッキングが拡大すれば、パソコンに流し込むウイルス対策のパッケージのような従来の手法では対応が困難だ。

「組込みレベルの新しいセキュリティが必要。リンクスが一昨年、米国で発売を開始した『リンクスセキュア』がそれです」

個々の制御システムや通信システムと暗号キー、さらハードウエアの内部を隔離・遮断し、サーバー攻撃をシャットアウトする組込み型のソリューションだという。

「昨年開催したセミナーでの反響が大きく、大手メーカーのメイン工場でテスト中。たとえば工場のネットワークの隔離と遮断とか、これがまさにIoTセキュリティーなんです」

だからこそ、IoTのリーディングカンパニーという自負には、十分説得力があるようだ。

アドソル日進は、電力・制御に強いICT(情報通信技術)企業として40年に及ぶ実績と経験を持っている。それをもとに、デバイスから、広域ネットワーク、大規模基幹システム、クラウド、ビッグデータに至るIoTシステムの全域にセキュリティ加えた、ワンストップ・ソリューションを提供。また、グローバル分散開発を可能とする独自の開発ツール等も保有しており、「安心」「安全」「快適」「環境」をキーワードに、「IoTで未来を拓く総合エンジニアリング企業」だ。

今後は、特にIoT関連のセキュリティービジネスの高成長が期待される。IoT機器をサイバー攻撃から守る「リンクスセキュア」は、車載、医療、FA、金融、エッジサーバー分野への適用が可能で大型商品になりそうだ。

今年2月24日に東証ジャスダックから東証2部に、9月16日に東証1部に市場変更し、機関投資家や外国人投資家の注目をさらに集めそうだ。