ネットマネー 2017年2月号より一部を特別公開!

世界中が注目した米国の大統領選挙でトランプ氏が当選。これを受けて米国株相場が急伸する一方、新興国の一部では指数が大幅に下落するなど、11月の外国株相場は波乱だらけの展開となった。今後の行方に目が離せない。

トランプ氏当選でNYダウが史上最高値へ。東南アジアが安い

11月の外国株相場は、大統領選挙でドナルド・トランプ氏が次期大統領に選出されたことを受けて米国株が過去最高値を更新。一方、東南アジアでは、米国の金利上昇による域内からの資金流出が懸念されて、インドネシア株やマレーシア株などが下落した。

米国のダウ平均は、民主党のヒラリー・クリントン氏の私用メール問題でFBI(連邦捜査局)が再捜査を開始したことなどが悪材料視されて11月4日まで7日続落したが、その後、FBIがクリントン氏を訴追しないと発表したことから急反発し、8日の大統領選挙を迎えた。

当初はクリントン氏が当選すると予想されていたが、これに反してトランプ氏が次期大統領に選ばれ、結果判明後に開いた日本時間9日の東京市場では日経平均株価が900円以上も下落。しかし、同日のニューヨーク市場では、選挙期間中の先行き不透明感が払拭されたことに加え、トランプ氏が法人税減税など企業寄りの政策を行なうとの期待感から株式市場に資金が流入し、NYダウは大幅高となった。その後、トランプ氏への期待はますます膨らみ、NYダウは22日に史上初の1万9000ドルを突破。30日には石油輸出国機構(OPEC)の石油減産合意を受けて1万9123ドルまで上伸した。

これとは対照的に、トランプ氏当選を受けて大幅に調整したのがインドネシアやマレーシアなどの東南アジア株だ。

トランプ政権下では米金利が上昇し、新興国から資金が流出するとの懸念から売り込まれ、インドネシアの主要インデックスであるジャカルタ総合指数は11月の1カ月間で5・1%安、マレーシアのFTSEブルサマレーシアKLCIは3・2%安となった。

一方、中国の上海総合指数は、各種経済指標に底入れの兆しが見え始めていることなどから4・8%上昇した。
取材・文●渡辺賢一

今月の注目国 ディフェンシブが狙い目!注目のインドネシア株

クリスマス前で一時的に調整も。年明けから急反発か?

2億5500万人と東南アジア最大、世界でも4番目の人口を誇り、天然ガスやニッケルなどの資源も豊富なインドネシア。しかも「工業も盛んで、イスラム圏の国々の中では製造業が発展している国のです。イスラムの教えを守って製造された食品であるハラールフード*など、世界で約16億人に上るイスラム教徒向けに製品を供給できることも、インドネシアの経済成長を支える力になっています」と語るのは、日本アジア証券グローバルマーケティング部の今井正之さん。

そうした成長力への期待から、2016年のインドネシア株相場は右肩上がりで上昇。主要インデックスであるジャカルタ総合指数は、年初の4500ポイント台から11月初旬には5400ポイント台と1年足らずで20%以上も上昇。東南アジアの中では、ベトナム株などと並んで好調なパフォーマンスを実現した。

ところが、11月中旬に入るとジャカルタ総合指数は一転して急落。12月初旬時点では5200ポイント台と、やや軟調に推移している。

だが、「これはあくまでも一時的な調整と考えられ、年明け以降のインドネシア株は反発する可能性が高いとみています。足元のインドネシア株相場が急落したのは、米国の利上げが意識されたことによる資金流出と、毎年恒例の〝クリスマスバーゲン〞によるものだからです」と今井さんは指摘する。
「ヘッジファンドなどの機関投資家は、クリスマス休暇が目前に迫ると、休暇中に株価が下落して損失を出すことがないように、持ち高を調整する傾向があります。そのため、為替リスクのあるインドネシア株は売られやすくなるのです。これがいわゆる〝クリスマスバーゲン〞です」(今井さん)

もちろんヘッジファンドなどはインドネシアの潜在成長力の高さはよく理解しているので、クリスマス休暇が明ければ再び株を買う動きに出る。結果、年明け以降のインドネシア株相場は急反発するというのが今井さんの見立てだ。「とりわけ食品やたばこといった安定感があり、業績が景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄に注目しています。先進国と違って、新興国ではディフェンシブ銘柄も大きな成長が期待できるのが魅力です。典型的なディフェンシブ株で、時価総額も大きな食品大手のインドフード・サクセス・マクムール、たばこ大手のグダン・ガラムなどが狙い目ではないでしょうか」(今井さん)

前者はハラルフードを生産し、インドネシア国内のみならずイスラム圏全体に販売しているのが強み。後者はインドネシアで喫煙人口が増え続けているのが追い風だ。

*ハラールフード…「許されている」という意味のアラビア語が「ハラール」。ハラールフードはイスラム教の戒律に沿った食べ物を指す。

米国株を買わないのはなぜですか?

国の大統領選挙以降、日本株はもちろん米国株も強い動きを示して上昇局面に入りました。そんな中で、さらに上値余地があるのはどの業種でしょうか? 撮影●村越将浩

第30回 2017年の米国株も勢いは続く?

トランプ相場の恩恵はどのセクターが一番受ける?

下のNYダウ平均のチャートを見ると、リーマン・ショック後の2009年から上昇しており、チャイナ・ショック、利上げ観測などで一服した2015年以外はすべての年において始値を終値が上回っています。

2016年は新大統領がトランプ氏に決定したことで、11月の決定日以降はさらに強く上昇しました。トランプ氏の決定は市場にとってはポジティブサプライズであり、期待先行でリスクオン相場となりました。その結果、ドル高・株高が進んでいます。

特にすぐに上昇したセクターとしては、JPモルガン・チェースなどの銀行関連。大統領就任後、真っ先に税制改革等に取り組むと思われ、5兆ドル規模の超大型減税と金融機関の規制緩和の予定が追い風となりました。

また、防衛に力を入れていくといわれており、ロッキード・マーチンなどの防衛関連。さらに、大型減税を富裕層に厚くすると想定されていることから、ノードストローム百貨店関連やジュエリーのティファニーなどにも好材料で、2017年は注目のセクターや銘柄になるでしょう。

逆に、投資価値の高いフェイスブックやアマゾン・ドット・コム、グーグルなどネット関連株などは弱含みとなりました。しかし、大きく下落するようなことがあれば、逆張りとして注目できます。

2017年も米国株は楽しみな年になりそうです。

スパイシ〜・マ〜ケットの歩き方

成長期待と不安定な経済・・・激変する新興国事情をリサーチ

第57味 米国 次期大統領の政策姿勢「トランプノミクス」は、メキシコを襲う〝政策ハリケーン〞か!?

米国とのつながりが強い新興国経済には、マイナスの影響も

2016年最大の政治イベントだった米国大統領選挙は、ドナルド・トランプ氏の勝利という結果に終わりました。

選挙期間中は、「もしトラ(もしもトランプが大統領になったら)リスク」という言葉が噴出するほど警戒されていましたが、終わってみれば、むしろ日米の金融市場は手の平を返したような反応(ドル高・株高)を見せました。

2017年1月に始動するトランプ次期政権の経済政策での大幅減税やインフラ投資などの大型財政支出や金融機関への規制緩和といった、政策姿勢「トランプノミクス」への期待を先取りし始めたといえるでしょう。しかし、トランプノミクスには、期待通りに「実現してほしい政策」だけでなく、保護貿易主義や移民政策などの「実現されては困る政策」も混在しています。

実際のトランプ次期政権の政策運営がどのようになるのかはまだ不透明ですが、米国とのつながりが強い新興国経済にとっては、マイナスの影響が濃くなる可能性があります。とりわけ、警戒されているのが隣国のメキシコです。

トランプ氏の勝利を受け、メキシコは為替、株式、債券がそろって下落する〝トリプル安〞に見舞われ、メキシコ中央銀行は米国大統領選挙直後の11月17日に利上げを決定しています。

選挙期間中にトランプ氏が言及してきた具体的な政策は、「NAFTA(北米自由貿易協定)の見直し」「メキシコに移転した企業からの輸入品に35%の課税」といった内容です。さらに、不法移民の強制送還をはじめ、「メキシコ国境の壁」建設なども主張してきました。

メキシコはNAFTAによって貿易規模を拡大し、経済的恩恵をフルに享受した国です。安い労働力と低い関税障壁で、米国企業や海外企業が米国向けの製品や部品を製造するための工場をつくり、米国に輸出するという構図です。また、米国内の不法移民の約半分が、メキシコ系といわれています。

とはいえ、米国自体への影響も懸念されます。強硬な通商政策でダメージを受けるのは、メキシコ国内に工場を持つ米国企業です。また、米国の労働力人口における不法移民は5%以上を占めており、不法移民排除の政策は労働者不足とコスト増を招き、トランプ氏が推進しようとするインフラ投資の足を引っ張る可能性もあります。トランプ氏の〝政策ハリケーン〞がどのような勢力となってメキシコに接近するのか、注意深く見ていく必要がありそうです。