ネットマネー 2017年3月号より一部を特別公開!

減税ばかりがトランプ新政権の経済政策の主眼と見なされているようだが、ジュリアーニ元ニューヨーク市長によると、金融制度に関する大幅な見直しが予定されているという。
ゴシップの絶えない新政権だが、銀行には稼がせてあげるらしい。
銀行のお行儀がよくなるという副作用が期待できるかもしれない…?

大統領選挙の翌週の昨年11月14日夜、
ワシントンDCのフォーシーズンズホテルに
トランプ次期大統領の選挙活動を支援した
ジュリアーニ元ニューヨーク市長が顔を出していた。

経営者を集めた会合があり、主賓として呼ばれていたのだ。

 ジュリアーニ氏は、「トランプ氏は選挙期間中にいろいろな人と会い、規制がいかに米国のビジネスを阻害しているかを理解した」と指摘し、「減税ばかりが新政権の経済政策の主眼と見なされているが、本当は規制緩和に注目している」と語った。

 そして、トランプ氏の政権移行チームが「米国のビジネスに関する重し」として注目しているのが『金融制度改革法』だ。ジュリアーニ氏によると「大幅な見直しが予定されている」という。

 この”ジュリアーニ発言”に飛びついたのが、株式マーケットだった。ある程度は織り込まれていたが、大統領選挙後はバンク・オブ・アメリカなど銀行株が軒並み急騰。違法に顧客口座を開設して処分されたウェルズ・ファーゴや、住宅ローン担保証券を販売して米国司法省からの巨額罰金が予想されているドイツ銀行ですら、大きな見直し買いが入る勢いである。大手銀行で構成される銀行株価指数は投票日のあった11月8日から22%上昇し、代表的な株価指数であるS&P500種を14ポイントも上回った(2016年12月16日現在)。

 材料は主に2つある。1つ目はジュリアーニ発言に裏づけされた、金融制度改革法の条項緩和への期待だ。経済的自由主義で知られるポール・アトキンスSEC(証券取引委員会)元委員が新政権に加わる見通しが高くなり、この”期待”はまんざら的外れではない。

 2010年制定の金融制度改革法は、金融危機の反省から生まれた法律。法文だけで2300ページという大法典で、金融システムに影響を与える金融機関に対して、堅固な財務内容や事業縮小を要求している。これに対して期待されているのが、自己売買制限、資産リスク査定、自己資本比率などの見直し。この見直しでリスク資産の増加に合わせて借り入れを増やすことができれば、株式部分のリターンが高まる―つまり、銀行の株価が上がるわけである。

 2つ目が、成長期待の高まりによる金利上昇だ。トランプ次期大統領はインフラ投資を公約しており、「財政支出増↓成長率上昇↓金利上昇」という期待が生まれている。

 銀行は基本的に長短金利差で儲ける仕組みの事業構造。バランスシートを使って商売する銀行にとってインフレ期待は経営に追い風になる。オバマ政権下では、ウェルズ・ファーゴにしてもドイツ銀行にしても長短金利差で稼げなくなって無理に手数料を抜こうとしたのが、米国の銀行が起こした不祥事の典型的な原因だった。

 ゴシップの絶えない新政権だが、どうやら銀行には稼がせてあげるつもりらしい。それなら、銀行のお行儀がよくなるという予想外の副作用が期待できるかもしれない。