ネットマネー 2017年3月号より一部を特別公開!

来月の日本株はどう動く? 世界の市場ではどんなことが起こっている? 日々めまぐるしく動く国内外の経済情勢を解説&予想する「サテライト」連載。前半は日本株メインの投資戦略を3連発、後半は先進国やアジアなど気になる海外の国にスポットライトを当てながら、フレッシュな情報を「誌面中継」します!

来3月期業績に関心。買い手が増えて需給◎

1月下旬から第3四半期(昨年10〜12月期)の決算発表が本格化する。この時期は企業が公表する2017年1-3月期よりも、その先の2018年3月期見通しに投資家の関心が移っていくのだが、会社側による2018年3月期見通しは存在しない。このため、投資家はアナリストレポートなどの予想に頼ることになり、情報戦の色合いが濃くなる。

今期は昨年11月の米国大統領選挙後の円安進行が効いて、輸出企業を中心に業績の急回復が予想される。1〜3月は為替予約もあって、円安が即、業績に跳ね返るわけではない。しかし1ドル=110円を超える円安が続けば、ほとんどの輸出企業は上半期を超える利益を手にすることになる。

需給面では、買い手の増加が株価にとって心強い援軍になるだろう。1月からは主婦や公務員も個人型確定拠出年金に加入できるようになり、1兆円規模の資金が運用に回るとみられる。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など、公的年金も推計5兆円を超える買い余力がある。「安くなれば買いたい」と思う投資家が多い限り、株価は下がりそうで下がらない。

国内市場はこう動く… まとめ

  1. 1〜3月、会社発表の来期業績予想が存在しない
  2. 投資家はアナリストレポートなどの予想に頼る
  3. 今年は買い手が増えて需給の改善が見込まれる

欧州に不安再来の火種。3月は「政治の季節」

2016年の世界の株式市場は2度のショック安に見舞われた。6月の英国によるEU(欧州連合)離脱と、11月の米国大統領選挙によるトランプ氏選出である。2017年は欧州で懸念要因がいくつも待ち構えているが、2016年は2回のショック安の後、株価が急反発し、市場の動揺は収益チャンスになることが再確認された。

火種がくすぶるのは3月。9〜10日に欧州首脳会議があり、難民問題をめぐる負担の押しつけ合いが予想される。EU結束の乱れが表面化すれば、為替市場が円高・ユーロ安に流れ、株式には悪材料。同じく3月には15日までオランダの総選挙がある。昨年12月にあったイタリアの国民投票と同様に、排外主義を唱える極右勢力の台頭が警戒されている。また、3月31日は英国のメイ首相がEUに対して正式に離脱を通告すると自ら設定した期限日。EU諸国は離脱を決めた英国に対して、速やかな退出を望んでいる。しかし、離脱通告が遅れれば、英国とEUの関係悪化を招き、こちらも欧州域内の景気停滞を引き起こしかねない。3月の市場は政治の季節になりそうだ。

世界市場はこう動く… まとめ

  1. 3月に欧州首脳会議やオランダ総選挙などの予定
  2. 欧州の結束が乱れれば、為替はユーロ売りで反応
  3. マーケットの動揺は収益獲得のチャンスでもある

1 今月の投資戦略 日本株 キーエンスは分割しても値ガサ株。 個人が触らない株に目をつけよう

高いから、と値ガサ株を敬遠する個人投資家は多いもの。ただ、超優良な値ガサ株には 安心して長期保有できる魅力がある。運用のベース銘柄として一考の価値あり!

気軽には近寄れない超値ガサ株。個人に敬遠されがちだが…

値ガサ株は「値段が高いの 」で、低位株は「値段が安くてもあまり買われなかった株」という言い方ができます。

低位株は、「短期間で利益を稼ぎたい」と考える小口の個人投資家が大量に参戦していますが、株価が高い値ガサ株は、利ザヤ稼ぎの資金が豊富な個人投資家に限られます。

たとえばFA(工場の自動化)センサー大手で時価総額4兆8000万円超の、日本を代表する大型株キーエンス。最低投資金額は800万円以上の超値ガサ株でしたが、1月20日時点の株主対象に初めて1対2の株式分割をしました。キーエンスは1994年から3年に1回ペースで「1・1分割」を7回もやっていたのですが、その分割が2012年を最後に止まっていただけに、4年ぶりの株式分割となったわけですから市場にとってはサプライズ。さらに、初めて1・1分割ではなかったことにも驚きがありました。流動性の向上につながるといった評価も多いようですが、最低投資金額が400万円前後になったからといって、何か変わるでしょうか?

全上場銘柄を見回すと、上には上の値ガサ株があります。全市場1位はジャスダックのエスケー化研。最低投資金額はナント1000万円超! そのほかに、500万円台には東証2部の歌舞伎座、300万円台後半に東証1部のファーストリテイリング。

これらの値ガサ株に共通するポイントは、〝個人投資家が近寄っていない感じがある〞という点です。

信用買い残で見ると個人投資家は明らかに値ガサ株を避けている

個人投資家の売買のうち、信用取引が占めるシェアは常に7割前後です。信用取引で買った分の残高が信用買い残ですが、この数値から実証できることがあります(2016年12月5日終値で計算)。

前述のキーエンスでいえば、時価総額に占める信用買い残の比率は……わずか0・02%! 本当に個人投資家が近寄っていなかったわけです。上場株唯一の1000万円銘柄、エスケー化研の信用買い残はゼロ。生活に身近で、誰もが知っているユニクロのファーストリテイリングですら0・13%です。

最低投資金額の価格帯別で、時価総額に占める信用買い残比率を見てみましょう。300万円以上必要な銘柄の信用買い残比率の平均は0・07%、200万円以上300万円未満が0・40%、100万円以上200万円未満が1・18%(突出して高いそーせいグループ、ブイ・テクノロジーの2銘柄を除くと0・52%)、50万円以上100万円未満が0・68%、30万円以上50万円未満が1・02%、10万円以上30万円未満が1・64%、10万円未満が2・36%でした。最低投資金額が小さくなればなるほど、信用取引比率が高くなっています。

信用取引には決済期日があるため、信用買い残はすべて投機的なポジションと理解されます。つまり短期的な売り圧力ということです。そのため、信用買い残比率が高い銘柄ほど、個人投資家の損益状況は影響を受けやすくなります。たとえば、昨年前半の人気株だったそーせいの上昇にはすさまじいものがありました。ただ、信用買い残比率は17・2%と高水準になり、人気が一巡した後は個人投資家の売り圧力に常時さらされています。業績とは関係なく、地合いや個人投資家の損益状況に振り回されて株価が安定しなくなるのです。  

一方、キーエンスなどの値ガサ株の信用買い残比率は0・1%以下の銘柄が多く、個人投資家の売買が与える影響はほぼゼロといっていいでしょう。国内外の機関投資家が中心なので、業績が素直に時間をかけて株価に織り込まれます。キーエンスが8年以上をかけて株価7倍になった事実が何よりの証拠です。

外国人投資家が日本株の買い手に回ってくれている今、個人投資家に人気の銘柄より、外国人投資家でもバッチリ知っているような日本の優良株を買うことで波に乗ろうと考えるべき。そういった優良株を探していくと、自ずと値ガサ株へとたどり着くことが多くなるはずです。

2 今月の投資戦略 日本株「トランプラリー」で買われた株、 逆に売られた株の特徴は?

まさかの連続だった2016年。米国でトランプ氏が大統領に選ばれたのはその最たるものだったし、以降の株価上昇も想定外だった。では、この「トランプラリー」でもっぱら買われた銘柄と売られた銘柄とは?

トランプ氏の政策を踏まえて金融株と公共投資関連が人気化

今号発売の前日、1月20日に就任したトランプ大統領ですが、株式市場では同氏の当選が決まった直後から彼の政策に期待する動きが活発化しました。いわゆる「トランプラリー」で、大統領就任後に実行すると目される政策に関連する銘柄が盛んに物色されたのです。周知の通り、相場全体も大幅に上昇し、日経平均株価は年初来高値を更新しました。

もっとも、その陰では逆に下げ基調が鮮明になった銘柄も存在しているはずです。そこで今回は、トランプラリーの中で活発に買われた銘柄と売られた銘柄を紹介するとともに、明暗が分かれた背景を探ってみましょう。

左ページの表はトランプ氏当選後の騰落率ランキングです。騰落率上位ベスト10入りを果たした銘柄が上の表です。ただし1位については、トランプラリーとは無関係な動きだったので、除外したほうが無難でしょう。日産自動車がカルソニックカンセイを米国投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)に売却することが明らかになり、そのニュースが材料視されたからです。

こうした例を除けば、2位以下の顔ぶれにははっきりとした傾向がうかがえます。2位の三菱UFJファナンシャル・グループ、6位の第一生命ホールディングス、8位の東京海上ホールディングス、9位のりそなホールディングスといった具合に、金融機関が多数ランクインしているのがそのひとつ。トランプ氏が大規模な公共投資と減税を実施する方針を示し、それを踏まえて米国の長期金利(米国債10年物利回り)が上昇したことが影響しているようです。

また、オバマ政権が進めてきた金融機関に対する規制強化を撤回する、とトランプ氏が発言していることも支援材料です。こうしたことから、米国の金融機関の株価は大きく上昇しました。さらに、長期金利の上昇は米国だけにとどまらず、世界的に長期金利の上昇傾向がうかがえました。そして、金利が上がれば利ザヤも拡大することから、日本の金融機関の収益性も改善が期待され盛んに物色されたのです。

トランプ氏の失言を機に売られた銘柄のリバウンドも!?

一方、米国における公共投資拡大を期待し、その関連銘柄の上昇も目立っています。7位の太平洋セメントは米国に工場を所有していることから、公共投資関連銘柄の中でも特に注目された様子。また、シェールガス・オイル関連も再び脚光を浴びつつあります。10位の大陽日酸は、米国でシェールガス由来の化学工場にガスを供給しています。

これらの活況銘柄とは対照的に、大きく売り込まれたのが左ページ下の表です。こちらもいくつかの傾向がうかがえますが、ひとつは、ゲームも含めたネット関連がさかったこと。米国でもトランプ氏の当選以降、アップルをはじめとするナスダック市場 の主要銘柄がパッとしません。

もうひとつ、トランプ氏が当選するまで買われてきた銘柄が打って変わって売られ始めたことも挙げられるでしょう。それまでは世界的に長期金利の低下が続いてきたことから、キャッシュフローが潤沢で安定配当を見込める銘柄が人気化してきました。ところが、前述したように長期金利が急上昇に転じ、相対的にそういった銘柄の魅力がややダウンしてしまったのです。2位の明治ホールディングスや7位のキユーピーなどがその典型でしょう。

さらに言えば、トランプ氏の当選を機に為替相場で円安・ドル高が進んだこともワーストランキングのほうに影響を及ぼしているようです。騰落率の上位組では、円安の恩恵を受ける銘柄がさほど目につきませんでしたが、下位組では円安がデメリットとなる銘柄が散見されます。ワースト10入りは免れたものの、ニトリホールディングスや東邦ガスがその代表例です。

しかしながら、トランプ政権はまだ船出したばかりで、今後の進路はまだ明確になっていません。選挙前も何度となく物議を醸してきましたし、逆に今後のトランプ大統領の発言が市場にショックをもたらす展開も起こりうるはず。そのような場面では、むしろトランプラリーで売り込まれた銘柄のリバウンドが期待できそうです。

こうした流れの変化を敏感に察知し、巧みに作戦を切り替えるのが賢明でしょう。

3 今月の投資戦略 日本株 JPX日経400の中小型株版が 3月末登場。組み入れ銘柄は?

始まる前は浸透に懐疑的だった「JPX日経400」も、今や銘柄入れ替えのたびに相場が盛り上がるようになった。この中小型版が始まるということで、今から情報戦!

各市場の時価総額上位20%「以外」の銘柄で構成される

日本取引所グループは、昨年12月、「JPX日経中小型株指数」の算出・公表を発表しました。ここ数カ月の株高局面では大型株が注目されましたが、今年は中小型株にも関心が高まりそうです。

「JPX日経中小型株指数」は、「JPX日経400」の中小型株版。つまり中小型株にJPX日経400のコンセプトを適用するわけです。まず、東証1部や2部、マザーズ、ジャスダック市場の中から、時価総額上位の20%の銘柄は対象外となります。さらにRОE(自己資本利益率)の高さなどを評価項目として、最終的に指数構成の200銘柄が決定します。今年3月の算出・公表が決まり、今後は組み入れ銘柄に注目が集まりそう。

中小型株の中にはROEが低い企業が多いため、この部分がより大事な視点となるのでは? 投資指標といえばPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が代表的ですが、今年前半はROEが改めて注目されるでしょう。なぜなら、昨年10月以降、海外投資家が日本株市場に舞い戻ってきているからです。海外投資家は、数ある投資指標の中で最もRОEに注目しています。

では、具体的にどのような銘柄が、JPX日経中小型株指数に採用されたのでしょうか。

実際に採用銘柄を見てみると、東急建設など時価総額がやや小さい建設株が組み入れられています。また、小型のインターネット関連株が多く入っている点なども特徴と言えるでしょう。

採用基準のポイントは海外投資家も注目するRОE!直近3年の平均が高いほど◎

採用銘柄の中で特に直近3年間の「平均ROE」に注目

今後、JPX日経中小型株指数に連動するETF(上場投資信託)などが登場すれば、構成銘柄には需給妙味が大きくなりそう。特に、指数の採用基準にもなっている直近3年間の「平均ROE」が高い銘柄については、外国人投資家からの関心が高まる可能性が高いといえるでしょう。