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成長期待と不安定な経済… 激変する新興国事情をリサーチ

インド

突如発表されたインドの高額紙幣廃止。モディ首相のもくろむ真の狙いとは?

現金主義のインド。偽造紙幣や不正蓄財、脱税問題の一掃が目的

 2016年11月8日といえば、世界中が注目した米国大統領選挙が行なわれた日でしたが、ちょうど同じ日の夜、インドでは「高額紙幣の五百ルピー札と千ルピー札が明日から使えなくなる」とナレンドラ・モディ首相が発表しました。

 今回の廃止が決まった紙幣がインド国内で流通していた量は、全体の80%以上を占めていたため、当然のことながら、翌日以降のインド国内は大混乱となりました。

 これまで使っていた紙幣はどうなるかというと、身分証を持って銀行に足を運び、百ルピー札や新紙幣の二千ルピー札に交換するか、もしくは口座を作って預金すれば、保有している廃止紙幣が紙くずになってしまうことはありません。

 インド経済は比較的好調が続いていますが、今回の紙幣廃止はブレーキになってしまうリスクを伴います。実際にインド株のSENSEX指数が大きく下落する場面もありました。にもかかわらず、モディ政権が思い切って踏み込んだ狙いは、偽造紙幣や不正蓄財、脱税などの問題を一掃することです。

 インドは極度に現金主義が根強い国で、現金決済比率は約78%といわれています。先進国の現金決済比率はだいたい20%ぐらいなので、その数字の大きさがうかがえます。現金主義が根強いとタンス預金が増える、つまり銀行を経由しないお金が多くなり、国がマネーの流れを把握しづらくなります。国の目が行き届かない通貨が増えると、先ほど挙げたような問題が深刻になっていくというわけです。

 今回の紙幣廃止の重要なポイントは「お金を銀行経由にさせる」ことです。不正な資金を持つ人は、そのお金を表に出すことができないので、身分証持参で銀行へ行くことはできません。また、紙くずになってしまいかねないタンス預金は、銀行預金に代わります。そして、マネーの流れを国が把握できることで、税収アップも見込めます。ちなみに、インドで所得税をきちんと納税している人は全体の3%程度といわれています。

 さらに、銀行にお金が集まることで、クレジットカードなど現金以外の決済手段の普及も期待できます。インドのクレジットカード保有率は約2%です。

 モディ首相は今回の紙幣廃止について、「私とともに50日間耐えてほしい」と国民に理解を求めました。まだ混乱は続いていますが、長い目で見ればメリットの大きい政策になるのかもしれません。