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老後不安が消える!失敗しないアパート経営

サラリーマン大家さんの憧れともいえるアパートの1棟買い。 先輩大家さんの話を聞くと、確かに儲かるらしいが、そこには“成功の法則"が存在する。そこで先輩大家さんの経営手法やアドバイスを取材し、アパート市場の現状と見通しをプロの意見を聞いた。

空室リスクの分散効果が期待できる賃貸アパートに異変!

老後の収入が見込める「サラリーマン大家さん」になるための選択肢は3つ。マンションの区分所有、一戸建て1棟、アパート1棟の投資だ。このうち、先輩大家さんが「アパート経営」に注目した理由は「空室リスクを分散できる」ところにある。マンションや一戸建ての場合、入居者が退去すると翌月から家賃収入はゼロになるが、アパートなら特殊な事情が生じない限り全室が一斉に空室になることはない。ただ、立地条件や家賃、設備などを適切に設定しないと周辺のアパートに入居者を奪われてしまうことに。とりわけ新築物件が次々と建つエリアでは、築年数の古いアパートの競争力はどんどん失われていく。

不動産情報流通サービスのアットホームが実施した首都圏の居住用賃貸物件を対象とした市場調査(2016年12月期)によると、首都圏の賃貸アパートの成約賃料(1戸当たりの平均賃料)は新築は3カ月連続の上昇だが、中古は全エリアで下落。東京23区は8カ月ぶり、神奈川県は1年1カ月ぶりに下落に転じた。賃料をエリア別に見ると、東京23区は7万円、23区外は6・02万円、神奈川県5・97万円、埼玉県5・55万円、千葉県5・39万円で、どこも前年同月比では値下がりして、中古の競争力の低下が見て取れる。

次に、不動産調査会社のタスが作成した、上の首都圏地図を見ていただきたい。都心を取り囲むドーナツのような帯が見える。マイナス金利、2015年の相続税改正という追い風により、新築アパートが続々と建てられて激しい競争が起こっていることがわかる。

この激戦を勝ち抜くために、先輩大家さんはどんな知恵を絞っているのだろう?

将来への生活不安を感じたことから不動産投資を始める

大手広告会社で営業マンとして活躍している脇太さんが不動産投資を始めたのは、「将来に対する不安」からだった。

「今でこそ正社員として働いていますが、27歳で入社した当時は契約社員でした。年収は400万円程度。しかも、3年ごとの契約更新です。幸い、1回目の更新は無事に果たせたのですが、結婚して家族もいるので、やはり長く安定した収入を得られる環境に身を置きたい。そんなふうに思っていたとき、会社の先輩から不動産投資を勧められました」

当時の脇さんの不動産投資に対するイメージは〝お金持ちの道楽?。自分には縁遠い世界だと思っていたが......。

「試しに不動産投資関連の本を買って読んでみると、とてもおもしろくてハマってしまいました。それからは手当たり次第に本を買っては、通勤時間や就寝前に読みあさりました」

そこで気づいたのは、多くの著者が不動産投資で成功する秘訣として、同じことを挙げていること。つまり、不動産投資で成功するには、一定の法則があるということだ。

「私は仕事上、自営業者向けのコンサルティングも手がけていたので、その知識と本で学んだ情報を組み合わせればうまくいくのではないか、そう思って、いくつかの不動産仲介会社に連絡をとってみたんです」

狙い目は木造物件RC構造より木造を選んだ理由とは

脇さんが挙げた希望は、「木造」であること。一般的にはRCのほうが投資家の人気は高いが、なぜ、あえて木造を?

「RC構造は木造より運営コストが高くなりがちだからです。仕事の経験から、倒産する自営業者は決まって売り上げに占めるコストの比率が高いことがわかっていました。大家業をやるからには、できるだけ長く続けたい。そのためには木造を手に入れておいたほうがいいと思ったんです」

ところが、仲介業者から紹介されたのは、RCの区分マンションだった。とはいえ、東京でも人気エリアの中野坂上駅近くの立地に加え、4戸購入すれば毎月約10万円のキャッシュフローが手に入るという好条件に引かれて購入を決断。購入資金の3600万円はすべて銀行からの融資で賄った。ところが、それが後に思わぬ事態を招くことに。

「新たな融資が受けられなくなったんです。最初、銀行に融資の相談に行ったとき、1億円まで可能と聞いていたので、まだ6400万円借りることができると思っていました。ところが、物件の購入により債務ができたことで評価が下がり、融資可能額が引き下げられたんです」

大家としての第一歩を踏み出したとたんのつまずきにショックを受けた脇さんだが、「 物件を増やすチャンスはいずれ訪れる。しばらくは入手した物件で大家業のノウハウをじっくり学べばいいと、前向きに考えることにしました」。

再び融資が受けられるようになるまでの間も、銀行や仲介業者とこまめにコンタクトを取り続けたという脇さん。そして、1年が過ぎようとしたころ、仲介会社から1件の物件を紹介された。

「念願の木造アパートでした。立地も将来的にリニア中央新幹線の駅が設置される予定のJRと京王線の橋本駅の近くと申し分ありません。銀行に相談したところ、融資も受けられるとのことでしたので、即、購入を決断しました」

現在では、8棟63室を所有する脇さんの目標は、「大家業一本で食べていけるようになること」。その第一歩として2015年には会社を設立し、目標に向かって一歩一歩着実に歩みを進めている。近い将来、目指すゴールにきっとたどり着くことだろう。

マイホームの購入で老後への不安が倍増。大家業で起死回生する

今でこそ、年間約4000万円もの家賃収入を手にしているひろ*さんだが、不動産投資を始めたきっかけは、〝生活苦?だったという。

「2007年に結婚したのを機に、都内で一戸建てを購入したですが、かなり背伸びをした返済計画を立てたせいで、生活費が不足しがちに。貯金もままならない状況がこの先何年も続くのかと思うと、老後の生活が不安になってきて、何か対策を講じる必要を痛感するようになりました」

そこで目をつけたのが、長く安定的に収入を得られる不動産投資だった。1年間を勉強期間と定め、関連書籍を読みあさったり、セミナーに通い詰めたりして情報を収集。そうして2009年秋、満を持して北海道札幌市のマンションを2棟同時に購入する。

「物件は2つともセミナーで知り合った仲介業者に紹介してもらいました。片方は安定的に収益をもたらしてくれたのですが、もう片方は空室が埋まらず苦労しました」

購入時点で、全22部屋のうち17部屋が空室。最初のうちは、すぐに人が入るだろうと高をくくっていたが、3カ月たっても改善の兆しは一向に見られない。

「自分で何とかするしかないと思い立ち、有休を2週間とって北海道に向かいました」

物件の空き部屋に宿泊して、朝から地元の不動産会社を訪ねては「どんなワケありの人でもいいから客付けしてほしい」と頼んで回ったり、自作のチラシを配ったりする日々が始まった。しかし、2週間程度では状況が改善するはずもない。ところが......。

「帰京前日の夜、肩を落として荷造りをしていたとき、部屋の呼び鈴が鳴って......。ドアを開けると、不動産会社の人が立っていたんです」

ひろ*さんが「どうしたんですか?」と聞くと、彼はにっこり笑って「1件、決まりました」と教えてくれた。

「うれしかったですね。正攻法で努力すれば、ちゃんと結果が出る。それが大家業の魅力なんですね」

一戸建ての現金買いで生活に余裕が生まれ、本業の評価もアップ!

現在は東京都内に住んでいるが、出身は北海道札幌市というYASUさんが不動産投資を始めた動機は、自動車レースの資金を稼ぐためだった。

「株式投資やFX(外国為替証拠金取引)の経験もあるんですが、相場が気になって仕事に集中できなくて......。そんなとき、不動産投資の本を読んで興味を持ったんです」

2009年に、まずネットで探したマンションの300万円の区分物件をローンを組んで買った。この投資が成功したことから、次は土地勘のある札幌市郊外の一戸建てに進出。その理由は現金で買える価格帯の物件が多いこと、管理の手間が省けることだ。

「一戸建てなら転勤や相続で空いた家を貸している素人と思われるので、入居者自身が物件を管理してくれ、丁寧に住んでもらえます」

YASUさんの物件の平均利回りは年30%程度。原則としてローンは組まない(一部例外もある)ため、家賃収入が丸々貯まる。地方の一戸建て物件には駐車スペースが必須だが、マンションは駐車料金が別途発生するため、競合しても広さと家賃が同じなら一戸建てでも勝てるという。

YASUさんは、サラリーマンが大家さんになるメリットは2つあると考える。まず給料以外の安定収入が確保できたことで腰が据わった。上司の顔色をうかがうことなく自分の意見を述べることができ、周囲の評価もより高くなった。もうひとつは「経営の視点が持てたことです」。大家を経営者、入居者を社員に見立てることで、「経営者の考え方、経営手法、部下の気持ちがより深く理解できるようになりました」と話す。

現在は一戸建てを10棟保有して、リスク分散している。

「〝小さく生んで大きく育てる"ためにも、これからは資産を大きくしようとアパート経営も検討していきます」

アパート賃貸で失敗しないために今、知っておきたい落とし穴

20年も30年も先の私的年金づくりを目的としたアパート経営を成功させるためには、現在の状況と将来の見通しをしっかり理解しておかなければならない。少子高齢化による人口減により住宅需要は減少傾向だから、2人の専門家の意見はなかなか厳しいが、参考にしてよい物件を購入すれば活路は見いだせる

投資用アパートの8~9割が損をする!?ハイリスク物件とは?

冒頭のページでも触れたが、賃貸住宅が増え始めたきっかけはマイナス金利によりローンが組みやすくなったことと、2015年1月の相続税改正による増税だ。賃貸住宅には入居者に借地権や借家権が生じるため、相続税を課す際の評価額が更地で保有するより低くなる。節税になるうえ、家賃という私的年金の確保もできるという一挙両得のアイデアのはず。

ところがそう甘くはないと、住宅ジャーナリストの山下和之さんは指摘する。「不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンといわれますが、私は二極化していると考えます。ローリスクの物件は買ってもいいが、ハイリスクの物件は見送るべき。8?9割がハイリスクの物件です」

理由はこうだ。まず老朽化の問題。仮に30代で新築のアパートを建てることができて も、私的年金を受け取るころには築30年の老朽物件になってしまう。修繕費用がかさむし、何よりも競争力を失う。

業界の事情もある。左上のグラフのように大手住宅メーカーでさえ売り上げの柱は賃貸住宅なのである。

「業者によっては、空室を保証する一括借り上げを売り文句に立地が悪い場所でもアパートを建てるように勧めます。しかし一括借り上げは家賃を保証するわけではなく、契約書には2~3年に1度賃料額の見直しや、賃料額について大家と業者が合意できないときは契約を解除するという条項が入っていることに注意してください」(山下さん)

そこで山下さんは「もしアパート経営をするなら、無理な受注を避ける傾向が強い大手が建てた立地条件のよい物件を探してください」と言う。また、資金がなく、貯まるまで待てない人は、「リスクを覚悟で都心に近い、駅近のタワーマンションの低層階のような中古物件を5年ほど保有して、値上がりしたところで売る方法で資金を貯めて、アパート経営に乗り出すといいでしょう」とアドバイスする。

アパート投資環境は今後厳しくなるため、物件選びはより慎重に

では、賃貸アパートの現状と見通しはどうなっているのか。不動産調査会社タスの藤井和之さんによると「首都圏では全体的に苦戦している状況にある」という。空室率が2015年5月から跳ね上がる中で、新築物件の供給が増えるという中古物件には厳しい状況が続いている。そこで大家さんは、世帯数の推移や人の動きのようなマクロ的な条件を検討して立地を決めることが重要だという。

「たとえば世帯数は、東京と神奈川では2025年をピークに減少、埼玉と千葉は2020年には減少に転じるでしょう。今後はますます状況が厳しくなることを念頭をおいてください」(藤井さん)

そのため満室に近い状態のアパート経営を想定すると、失敗する可能性が大きい。

「7割程度埋まっている状態でも利益が出る計画を作らないと20年後、30年後に生き残ることはできないでしょう」(藤井さん)

ただ、個別に見ていくと人口が増えているエリアもある。

「人口増で徒歩10分以内の立地のよい物件を探すといいでしょう」(藤井さん)

ゼロから物件選びが自由にできるのも、サラリーマン大家の強み、醍醐味だろう。