ネットマネー 2017年4月号より一部を特別公開!

充実の研修コンテンツ事業で高成を長持続

研修といえば、一方的に話す講師、睡魔と闘う聴講生という図が思い浮かぶが、さにあらず。 「日本で最も多く研修を行なっている」と自負するインソースの、8000ページを超す自社ホームページに掲載した独自開発の研修コンテンツは、実に2000種類超。 「研修は息抜きという受講者の先入観をつぶすのが楽しい」という。

取材・文●西川修一 撮影●石橋素幸

2002年の創業以来、毎年ほぼ売り上げ120%成長を持続。リーマン ・ショックなど混乱期にも業績を伸ばしてきた気鋭のベンチャー。

リーマン・ショックの直後でも売上高増、危機をチャンスに

「人事もやったことないし、興味もない。研修は出ないでバックレてたほうです」

企業向けの講師派遣型研修事業を営むインソースだが、元銀行員で創業者の舟橋孝之社長はそう笑って振り返った。当時はシステムエンジニア、営業からネットバンクやコンビニATMといった新規事業、さらにあらゆる金融新商品を手がけ、「商品開発者であり、エンジニア」(舟橋氏)というキャリアを持つ。

それにしても、事業化を着想しにくそうな研修業界だが、「当社の推定では、市場規模は3360億円で、2000社以上の小規模業者が入り乱れた競争状態。売上高29億円、シェア0.8%の当社でも大手と呼ばれています」。

その同社は2002年の創業以来、毎年売り上げで20%増を持続し、前2016年9月期も増配。今期から2019年9月期までの中期経営計画では、売上高経常利益率15%以上、前期比で20%以上の売上高成長率が目標だ。

「シェアが伸びる余地はまだあります。現在、全国各地に拠点がありますが、特に東京23区内を中心に営業拠点を増やしています。お客さまに密着したほうが、対応が迅速になり、成長の可能性も高くなります」

同社の業績が特に急伸したのは、意外にも2008年度と2011年度。リーマン・ショックと東日本大震災の起こった年だ。

「大きな変動の年は、保守的な人事部門もコストダウンのために研修会社を変える。当社も値下げ要請の連続でしたが、官公庁や研修未経験の業界の開拓により売上高を伸ばすことができました」

そもそも、研修事業のどこに目をつけたのだろうか。

「一度転職して、戦略コンサルタントみたいなことをやっていましたが、プランを作ってもそこで終わり。まずお客さまには実行されない。それより、研修は実際にお客さまの行動そのものを変えて組織の活性化やその人の成果向上につながるからおもしろい」

加えて、広く事業化しやすい面にも着目した。

「毎回一つ一つ違うものを作る。とはいえ、同じ業界なら同じ部分があって、コンサルティングより横展開しやすい。また、受注から研修の実施、事後フォローまでのプロセスをITで管理することにより、コストを下げることができると考えました」

検索ランキングが急上昇!リアル営業とバーチャルの相乗効果

エンジニアと商品開発という2つのキャリアが、ここで両立するわけだが、まずは、「グーグルに最適化して伸びてきたネット企業」と舟橋氏が定義する由縁を聞いた。

「昔は本でベストセラーを出さないと成り立たなかった事業ですが、今は研修もネットで探す時代。当社のホームページは8000ページ以上。内容は秘密にせずに、ありとあらゆる研修を掲載したので、営業も省力化できました」

現在抱えている研修コンテンツは実に2000超。これが100種類程度だと、顧客のニーズに応じきれずせっかくのチャンスを逃すという。

事業展開の過程で徹底してITを活用。創業以来取り組んでいるデジタルマーケティングという〝バーチャル〞営業と、約80人の〝リアル〞営業部隊の連動セールスが得意技だ。

「そもそも研修はなかなか売れないもの。こちらから営業で働きかけるのと、メールなどネットでニーズを喚起し、出たニーズにいかに早く対応するかが、デジタルマーケティングのカギと考えています」

創業以来、顧客のメールアドレスの取得を目指して電話セールスを徹底している。当初は無名の会社で、〝ガチャ切り〞されるのが常だったというが、「あとでグーグルで検索してくれたんです。『インソースって何だ?』とすると、グーグル検索ランキングがぐんぐん上がった。するとガチャ切りされたところからも問い合わせが入るようになった」

検索ランキングでいったんトップになると、その後はなかなか落ちない。

「今はグーグル検索ランキング1位が174㌻ある。アマゾンのレビューのように、お客さまのアンケートのコメントや評価をすべて掲載しています。ちゃんとしたウェブがあれば、積極的な電話営業は効果ありです。CMより堅いと思いますよ」

自社の経験に裏打ちされた、こうした電話代行を含む営業支援システムを外部に販売中だ。現在、研修事業以外の売上高構成比が約6%。これを2019年までに25%とし、次なる収益の柱にするという。

では、いよいよ主力商品である研修コンテンツの品質向上について見てみよう。

「最新の研修を一番最初につくる。世の中のニーズに一番初めに応える」と、〝商品開発者〞舟橋氏の顔が現れる。

「実際の現場には課題があり、悩みがある。それを踏まえてカリキュラムを作ると結果的に喜ばれます。それを徹底してやりました。講師自身が伝えたいことをどう教えるかではなく、困っていることからスタートして研修をつくって、それを研修の中で解決していく、受講者の皆さんに考えて結論を出してもらうという作り方をとっています」

講師がしゃべるのは3〜4割。あとは受講者が演習を行ない、自分で考える。

「私が考える研修は、自分が受けてもイヤじゃない研修。

自分がこうやりたいというより、理解度をどう上げるか、どうやったら喜んでもらえるかに力点を置いています」

脚本家のようにケーススタディーを作り上げる開発担当

同社の開発担当は、あたかも脚本家のように、ドラマ仕立てのケーススタディーを作り上げていく。たとえば、鉄道の車掌を対象とした研修コンテンツ。N306列車が新宿駅を発車した。終点近くは大雪。系列ホテルで○○高校の同窓会が開かれ、70代の酔客が30人。では出発直後、どんなアナウンスをする?

「難問ですよね。雪で交通が遮断される可能性がある。年配客、酔客がいる夜10時。乗り過ごしたら後続はないかも。客が倒れるかも。スリや痴漢が出る可能性もある中で、エレガントにアナウンスしようとすると、そうとう考えないと。マニュアルでは無理」

顧客とともに難問に挑むのが、約200人の講師。社員とは別枠の業務委託だ。

「教師ではない人を採用しています。サービス業の一員で、自分が褒められたいというよりは、受講者によくなってほしいという愛情が強く、管理職の経験のある人ですね」

しかし、コンテンツ作りには講師は関わらない。自社の開発担当者による内製だ。

「講師とテキストがひもついていると、いいものを作っても横展開できない。部下の伸び悩み、ハラスメントといった悩みはもう100万件以上データベース化されており、そのタネをもとにお客さまに個々の悩み、課題を聞いてテキストに反映しているから、お客さまの満足度は高いです」

IT化で先行し、「命ある限り、ものづくり」と舟橋氏が話すインソース。今後の歩みに期待大だ。

COLUMN 「働き方改革」の進展が追い風に

調整入りでも上昇トレンド。ターゲットは株価2500円

師派遣型研修事業。昨年7月に東証マザーズに上場した直近IPO(新規株式公開)銘柄である。

引き続き人材不足を人材教育による効率化で補いたいというニーズが見込まれることから、講師派遣型研修事業、公開講座事業ともに前期同様に売上高の増加が期待できそうだ。また、その他事業でも、好調なストレスチェック支援サービス、人事サポートシステム「Leaf」、新サービスである営業力強化トータルサービス「Plants」等が堅調に推移しそうだ。政府が進める「働き方改革」の進展が大きな追い風となるだろう。

上場後は株価1000円以下でもみ合っていたが、「働き方改革」関連の一角として関心が向かい、じりじりとした上昇を継 続 。好業績予想、高値更新に伴う需給面なども材料に、上場来高値更新の強い展開が期待できそうだ。多少の調整が入りつつも目標株価は2500円としたい。