ネットマネー 2017年4月号より一部を特別公開!

トランプ政権下で金融バブルが発生する

今月のテーマ

米国でトランプ政権が発足した。さっそく、TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱、メキシコとの国境壁の建設、オバマケア(医療保険制度改革法)廃止などの大統領令に署名した。今後、どのような政策が飛び出してくるのかさっぱりわからない。ただ、はっきりしているのは、不透明さと支離滅裂さがトランプ政治の代名詞となりそうだという点であろう。思いつきをストレートに発言するのは私人として、あるいはせいぜい彼の不動産事業までにとどめてもらいたいものである。

過激発言の新大統領、トランプ氏の一挙一動を世界が注視している

トランプ氏は世界最大の経済大国にして、最強の軍事力を誇る米国の最高権力者、つまり大統領である。軽々しい発言や思いつきでの行動は、世界経済のみならず、国際的な秩序や社会の安定をズタズタにしかねない。

今後、トランプ氏の発言やツイッターメッセージが世界にどれほど揺さぶりをかけてくるのか、想像すらできない。世界中が警戒モードを高めて、新大統領の一挙一動を注視している。トランプ氏の登場を一番歓迎しているのは、テレビや新聞をはじめとしたメディア関係者だろう。彼は過激な発言や脅し口上で連日、メディアに報道材料を提供している。メディアにとっては願ってもない強烈なキャラクターの登場である。なにしろ、取材でメディアを敵対視はするわ、思いつき発言は連発するわで、ネタに事欠かないからだ。

逆に世界のマーケットは、過激な報道に振り回されている。

とりわけ株式市場は、トランプ氏の一言一句で激しく乱高下を繰り返すと思われる。

そう読む背景としては、敵対視あるいは、上から目線で見られているメディアが、反トランプ感情丸出しで大騒ぎするからだ。否定的な取り上げ方を含め、マスコミの厳しい報道で相場が大崩れするといった展開が、頻繁に見られることだろう。

もちろん、われわれ長期投資家は〝これは〞と思える企業の株価が大きく下がったところを、しっかりと買い増していくだけのこと。おそらく、トランプ政治をものともせず投資対象となるであろう企業は、案外と絞り込みやすくなる。というよりも、マーケットが乱高下を繰り返している間に、反発力のある企業とそうでないところが、はっきりと分かれてくるからだ。

ただ、株価暴落時にはどちらも一緒くたに売られる。そこを冷静に選別買いするのだ。

トランプ政権は金融を武器にして、世界で暴れようとしている

トランプ政治がどう出ようと、ファンダメンタルズがしっかりした企業はそう大きな影響を受けない。一方、トランプ政治に振り回されて右往左往する企業は、どんどんついていけなくなってしまうことだろう。

狙いは地味でも本業がしっかりしている企業群だ。人々の毎日の生活になくてはならない企業のビジネスは、意外と安定しているものである。

そういった企業の商売は、トランプ政治とは関係なしに続いていく。だから、トランプ政権下では、ますます企業選別が重要になってくるわけだ。これからはインデックス運用よりも、アクティブ運用の時代となっていくだろう。

もうひとつ、見逃せない視点がある。それはトランプ政権の中枢に、ゴールドマン・サックスなど金融大手出身者がズラリと並んでいることだ。その心はといえば、トランプ氏の米国第一主義を最も体現できるのが金融ビジネスだからである。おそらくトランプ政権は、金融を武器に世界で暴れまくろうとしているのだろう。

サブプライムローン問題、リーマン・ショックではじけた世界の金融バブルだが、米国の銀行はいち早くその後始末を終え、身軽な経営体質になった。EU(欧州連合)はいまだにマイナス金利に陥っているし、日本は金融バブル崩壊の影響は軽微だったが、やはりマイナス金利を続けている。中国も不良資産問題で身動きがとれず、資本の対外流出が顕著になっている。

その点、米国の大手銀行(以下、米銀)は絶対的に有利な立場にある。その身軽な立場を利した政策をトランプ政権が次々と打ち出せば、一気に世界の金融ビジネスを牛耳ってしまうことも十分に可能だ。

トランプ政治に乗じて、世界を舞台に米銀が好き放題に暴れだす!?

推測だが、おそらく世界の金融分野で米銀が独走するような展開が見られることだろう。懸念されるのは、米銀主体の金融万能主義がまたぞろ暴走しかねない点である。米国第一主義を唱えるトランプ政治に乗じて、世界を舞台に米銀が好き放題に暴れだしたら、もう歯止めが利かなくなってしまう恐れは大ありだ。

ゴールドマン・サックスなど金融界出身の米国政府の幹部は、いずれも大金持ちである。彼らの富の大半は、金融バブルに乗って荒稼ぎした結果、もたらされたものだ。その彼らが金融バブルに近い状況を演出すると想定したところで、そう異和感はない。

ただし、長期金利が上昇傾向を見せ始めている。この点からは目を離さないようにしたい。2000年代に入ってからの金融バブルは、超低金利下で発生している。それが野放図で天文学的な金融取引の拡大を招いた。

ところが、いずれ発生するであろう第2の金融バブルは、長期金利の上昇を伴ってのもの。前回とは条件が違う。それがマーケットにどう反映されるか、しっかり見ておきたい。一筋縄のバブルではない展開も想定しておく必要があるだろう。

長期金利の上昇も、株式市場波乱の要因となる。大きな下げを逃げずにしっかり買えるかどうか、そこで筋金入りの長期投資家かどうかが問われることになる。

澤上篤人ATSUTO SAWAKAMI

さわかみ投信取締役会長 1947年、愛知県名古屋市生まれ。
73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所 国際経済学修士課程履修。
ピクテジャパン(現・ピクテ投信)代表取締役を経て、96年にサラリーマン世帯を対象にさわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)を設立。
『国債暴落をものともしない長期投資』(小社刊)、『お金に支配されない生き方』(ビジネス社)など著書多数。