ネットマネー 2017年5月号より一部を特別公開!

今回は“スター猫” たちと共演。

完璧な演技をする猫たちに思わず嫉妬するほどでした

いつもの散歩コースというか、よく通る道に猫が2匹ウロウロしているんです。毎回、触ろうと思って近づくんですけど、必ず逃げられる。残念な気持ちを抱きながら通り過ぎていたのですが、今回『ねこあつめの家』という作品をやらせていただいて、“猫との付き合い方”を学びました。

決して声をかけたり、近づいたりしちゃいけないんです。目が合ってもそのまま通り過ぎて、そっと振り返る。すると、まだ猫はこっちを見ていて、じっとしていたら、ちょっとずつ向こうから近づいてくる......、自分から行きすぎちゃいけない(笑)。僕自身は犬を飼っているんですが、やっぱり仕事を終えて疲れて帰宅すると癒やされます。 

最初に映画のお話をいただいたときは、「どういう作品になるんだろう」ってちょっと想像がつかなかったんです。でも、台本を読んでみて、猫に動かされる主人公の気持ちがすごくよくわかって、ぜひやらせていただきたい気持ちでいっぱいになりました。 

実際に映画を撮ってみて、猫たちの優秀さに感じ入りました。それもただ優秀というだけではなくて、わりと人間と似ているんじゃないかって。だって台本に、無茶なト書きがあるんです。僕が演じるのは佐久本という小説家なんですけど、たとえば「佐久本が部屋で小説を書いている。庭に1匹の猫が現れ、縁側にピョンと飛び乗り、トコトコと部屋へ歩いて入る。佐久本の机の上に飛び乗り、気がついたらキーボードのキーを踏んでいて、文字が消えていく......」。いやいや、猫には無理でしょうって(笑)。動物の場合はだいたい、カットを割って撮るんですね。まず庭を歩いているところだけを撮って、次はキーボードの上にいる場面という具合に。でも、今回はお芝居を含めて、監督さんから基本的にワンシーン・ワンカットでいきたいと言われて。「絶対に、無理でしょ〜」と思っていたら、テストなしの一発OKでした(笑)。スター猫たちの想像を上回る優秀さに、感嘆しました。

仕事はあくまでいただくものなので、「2年後、3年後、こんな役をやりたい」というのではなくて、とにかく目の前の仕事にしっかり向き合って100%の力を出し切ることを常に意識しています。作品によっては、専門的な知識も必要になります。医療もののドラマに出演したときは、実際にオペを見学させてもらいました。“神の手を持つドクター” のオペを目の前で見て、いま考えると、ものすごい体験をさせていただいたと思います。 

どの仕事も辛いです(笑)。でも、間違いなく言えるのは、演じているときは本当に苦しくて「もうイヤだ」って思った作品のほうが、いつまでも心に残るということ。辛い思い出って、不思議と時間とともにどんどん美化されていって、美しい思い出に変わるんですね。だから、またチャレンジしたいと思うし、乗り越えたいと思うんでしょう。 

PROFILE
伊藤淳史(いとう・あつし)●1983年11月25日生まれ、千葉県出身。映画初主演は1997年の『鉄塔 武蔵野線』。2005年、ドラマ『電車男』の主人公役で大きな話題に。連続ドラマ初主演は2008年の『チーム・バチスタの栄光』。2015年公開の『映画 ビリギャル』での演技により、第39回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。テレビ、映画などで大活躍中。