ネットマネー 2017年5月号より一部を特別公開!

亀井幸一郎が金の魅力と今後の市場動向を解説

トランプ新政権がスタートを切って2カ月。閣僚の承認の遅れなどもあり、大統領令を使った公約実現への動きは混乱を招いた。政権運営への懸念も高まって米国政治の不確実性がリスク要因となり、金への関心を高めている。

米国政治の不確実性が欧州の選挙と相まって金の押し上げ要因に

 前回、欧州の選挙や米国新政権の保護主義傾向の強い政策など政治的要因によるリスク全般を「不確実性」として、金市場の買い要因となることを指摘した。トランプ新政権は、閣僚の承認が進まず政権の体裁が整わない段階で、大統領令を頻発することで公約の実行を印象づけようとした。しかし、なかには不備もあり、ホワイトハウスの思惑とは逆に警戒感を内外で生み出すことになった。選挙戦時に見られたラフな物言いや物腰が変わらなかったこと、さらに「フェイク(偽)ニュース」という言葉を連発しての主要メディアとの対立姿勢も目立っている。結局、市場では政策内容を吟味する前に、政権運営能力への疑問が高まることになった。その結果、2月に入って金ETF(上場投信)への資金流入が勢いを増し、金価格も年初来高値を更新することになったのだ。 

 ここまでの経過から私が思うのは、例えるならばドナルド・トランプというトランプ・ワールドのCEO(最高経営責任者)は、選挙という最安コストのM&A(企業の合併・買収)で、米国を傘下に入れてしまったという感覚だろう。もとより意識面では「大統領」より「CEO」が勝っているので、いろいろ周りとの感覚の違いや行き違いが生じる。周りは言うまでもなく、“大統領はかくあるべし” という既存の認識の中で接しており、当然ながら摩擦が生じた。「CEO」は、思うように事が運ばないことにストレスを感じている。しかし、周 りはもっとストレスを感じているといったところだ。既存の政治家にはできない流れの変化につながると、政治経験のなさが評価されて大統領になったものの、あまりの政権運営の拙さに懸念が高まり、身構える運用者が増えている。つまり、政治的不確実性を要因にした金価格の上昇予想は、欧州のみならず米国の材料も存在感が増している。

 もともと本命の欧州だが、最も反EU(欧州連合)機運の高いフランスの大統領選挙が混迷の度合を増幅する気配がある。極右政党、国民戦線のルペン党首の支持率は高くとも半数は超えられず、5月7日の上位2名の決選投票では、中道・右派と左派の支持者が連合することで当選はないというのがメインシナリオだ。ところが、既存の政治勢力にはない流れの変化を望む有権者にルペン候補が支持層を広げる傾向が指摘されている。これは米国大統領選挙と似た構図だ。中道のフィヨン、マクロン両候補に決定的な強みがないことも想定外を思わせ、金に関心を高まらせているのだ。