ネットマネー 2017年5月号より一部を特別公開!

来月の日本株はどう動く?世界の市場ではどんなことが起こっている?日々めまぐるしく動く国内外の経済情勢を解説&予想する「サテライト」連載。
前半は日本株メインの投資戦略を3連発、後半は先進国やアジアなど気になる海外の国にスポットライトを当てながら、フレッシュな情報を「誌面中継」します!

理論上は150円安に。年金は株式買い増しへ

今年は3月28日が3月決算企業の株主権利付き最終売買日。この日の大引け時点で株を持っていれば、株主総会への出席、配当や優待を受ける権利を得られる。

2017年3月期は株主還元強化の流れを反映し、3月期末配当は日経平均株価の150円分に相当する見通し。このため、3月29日の日経平均は配当の権利がなくなった分だけ値下がりすることになる。これが「配当落ち」だ。

今年は権利付き最終日の翌日に日経平均は計算上150円下落するはずだが、実際には為替や米国株の動向などで理屈通りには動かない。150円安相当の配当落ち分を埋めて、3月29日の日経平均がプラスで引ければ、買い需要が相当強いということだ。反対に配当落ち分がなかなか埋まらなければ、その後の下落に注意が必要となってくる。 4月は新年度入りで、公的年金や生命保険会社などの機関投資家の新規資金が入ってくる月でもある。公的年金は目標とする資産配分比率より株式の保有割合が低いとみられる。

4月以降、株式のさらなる買い増しを実施する可能性があり、需給改善が期待できそうだ。

国内市場はこう動く...まとめ

  1. 3月期末の配当落ちは日経平均150円分
  2. 配当落ち分を即日埋めたら強気相場のサイン
  3. 4月の年金資産配分変更は株のプラス材

選挙は親中国派リード。中国株安に日本も連動

トランプ旋風が世界の金融市場を席巻する陰で、中国への関心が薄れつつある。しかし世界経済は「中国バブル崩壊」という爆弾を抱えたままだ。焦点は3月26日。香港で政治のトップである行政長官選挙が実施される。香港住民には投票権がなく、選挙人を通じた間接選挙となる。

2月下旬時点で、親中国派の有力候補である前政務官の林鄭月娥(キャリー・ラム)氏が大きくリードしており、同氏当選後の民主派の反発は必至だ。過去の例を振り返るまでもなく、内政問題が紛糾すれば、中国政府が言論弾圧と不満そらしの反日運動に傾くのは想像に難くない。

沖縄・尖閣諸島はこれまで何度か周囲が中国漁船で埋め尽くされたが、行動が軍事的挑発へとエスカレートすれば、地政学リスクから円売りが進む可能性がある。

しかも4月には、マイク・ペンス米国副大統領が来日の見通しで安倍首相のロシア訪問も予定されている。トランプ政権は日本やロシアを抱き込んだ中国包囲網の構築を目指しているとみられ、中国側が一段と態度を硬化させれば中国株が下げ、株安が日本にも連鎖しかねない。

世界市場はこう動く...まとめ

  1. 3月26日に香港で行政長官選挙が実施される
  2. 民主化問題対策で反日激化すれば円相場は軟化か
  3. 日米露の3国で事実上の中国包囲網構築へ

今月の投資戦略 日本株 1〝不透明は売り〞が市場の習性。セクター間の明暗を投資に生かす

大型株をメインに考える

トランプ大統領への期待から爆上げしてきた日本市場だが、このところ上値が重く、為替も円安の動きが鈍くなり…。理由は「米国でモノを作って売っている企業はOK、輸出だけの企業はNG」という市場判断。この傾向を生かした投資を!

米国の大規模減税には国境税調整の導入が避けられず

初の日米首脳会談では、トランプ米国大統領と安倍首相の友好的な関係が確認されました。それでも、多くの市場参加者の意に反して日経平均株価は上値の重さが色濃く出ている形です。この間、米国の主要株価指数が史上最高値を更新していたにもかかわらず……。為替も思うようには円安方向へ動かなくなってしまいました。

そもそもこれまでの株高は、トランプ大統領が米国経済を過熱気味に成長させてくれそうだという期待からのものでした。「米国第一」を掲げ、驚異的な法人税や所得税の減税、巨大なインフラ投資を約束してくれたからです。ただ、そんな減税をするにも原資が必要。それが「国境税調整の導入」です。マーケットにとって聞こえのいい減税と、常に隣り合わせにあるのがコレ。

この国境税調整が導入されて影響を受けるのが、米国に製品を輸出する日本企業です。時価総額の大きい自動車大手などへの漠然とした警戒が、日経平均を上がりにくくした一因。国境税調整の導入は、米国経済にとってもよくない面があります。輸入品の値上がりは、米国民の消費にはマイナスなのです。減税をしても、その経済効果を抑えてしまいます。だからこそ、トランプ政権は経済刺激策とは矛盾するドル安を強く志向しているのでしょう。

米国の減税は、日本にとってプラスではないし、極端なドル高も見込めなくなったからこそ、東証2部やジャスダックなどの中小型株への資金シフトが始まったわけです。

自動車やハイテクセクターでペアトレードが隆盛に!

米国で国境税調整の導入が実施された場合のリスクをどう見るか―。これが海外投資家にとっても関心が高いようです。日本の輸出相手国のトップは全体の2割強を占める米国。そして、その米国向け輸出を品目別で見た場合、全体の35%と一番大きいのが「自動車、自動車部品」です。次いで22%が「一般機械」で、14%が「電気機器」、食料品などは1%未満。やはり国境税調整の導入の影響は、典型的な輸出関連株に偏ると予想されます。

今のところは具体像の見えていない段階ですから、市場はわかりやすい動き方をしているようです。その象徴的な現象が、影響が大きいとみられる自動車セクターで起こりました。1月末に、時価総額で三菱自動車がマツダを4年ぶりに逆転したのです。三菱自動車は業績回復局面にあるとはいえ、現状の業績では説明が難しい現象。ただ、国境税調整の導入のリスクが反映されていると見ると腑に落ちます。マツダも三菱自動車も米国での製造比率はゼロ。一方で、米国向けの売上高比率がマツダは約20%で、三菱自動車は約10%。この点を根拠とした「マツダ売り・三菱自動車買い」のペアトレードが市場で活発に組成されたのだと思われます。

左ページのチャートを見ればわかるように、代表的な自動車株の年初からのパフォーマンスの差は顕著です。上昇率トップのホンダは、米国向けの売上高比率が約30%と高い一方、米国製造比率も約30%。日本の自動車メーカーで最も米国生産に比重を置いている「ホンダを買い、トヨタ自動車は売る」といったペアトレードもかなり入っていたのではないでしょうか。今後はこういったポジションが、機械や電子部品、半導体といったセクターでもとられていくでしょう。北米売上高比率の高さが成長のカギといわれてきましたが、今は「メイド・イン・アメリカかどうか」も問われる時代なのです。

今月の投資戦略 日本株 2 主要指数に対する影響力の高い銘柄を知っておこう

独自ランキングから考える

日経平均が目立って下げていると、「今日は市場全体がパッとしない」と受け止めがち。だが、実は特定の銘柄の下落がそれを誘発し、全般的にはさほど悲観色を強めていないケースも…。その原因はどこに?

〝ご三家〞銘柄に翻弄されがちな日経平均の推移

日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった指数は市場の平均的な動きを示すといわれますが、特定の銘柄が強く影響を及ぼすのも確かです。ただ、おのおのの指数においてどの銘柄の構成比率が大きいかは、意外と知られていないもの。そこで、今回は主要指数における構成比率でランキングしてみました。

まず、個人投資家にとって最もなじみ深いのが日経平均ですが、日経平均はかなり特徴的な動きをしがち。東証1部上場銘柄の中から225社を選んで算出していますが、その計算式の特性から、値ガサ株(1単元当たりの株価水準が高い株)の構成比率が高くなっているからです。

左ページの上段左のランキングを見れば明らかなように、「ユニクロ」のファーストリテイリングが突出しており、以下のソフトバンク、ファナック、KDDIも5位以下に1%以上の差をつけています。これら4社だけで実に構成比率の約20%に達しているのです。

特に構成比率が高い上位3社は日経平均への寄与度も大きく、〝ご三家〞と呼ばれます。たとえばファーストリテイリングが大きく売られると、全体相場で東証1部が強含んでいても日経平均が下げ基調になることもありますし、その逆のケースもあります。

一方、トヨタ自動車は時価総額が国内最大でありながら、構成比率ランキングのトップ10には入っていません。こうしたことから、日経平均は「ゆがんだ指数」と揶や揄ゆする声も聞かれます。その点、TOPIXの構成比率ランキング(左ページの上段右)は実に単純明快。時価総額が大きい銘柄ほど、構成比率が高くなっています。

TOPIXは東証1部上場全銘柄を対象に、時価総額加重方式によって算出します。トヨタ自動車の構成比率が目立って高いのは、2位の三菱UFJフィナンシャル・グループの約2倍の時価総額を誇っているので当然。いずれにしても、時価総額上位の銘柄が指数に及ぼす影響が大きくなるのはきわめて自然なことです。

指数の銘柄入れ替えが個別銘柄の需給に大きなインパクトを!

こうした日経平均やTOPIXの特性はすでに知っていた読者もいると思いますが、日経ジャスダック平均株価はどうでしょうか。構成比率上位10社の顔ぶれは、左ページの下段左の表の通りです。

日経平均と同様、1単元当たりの株価が高い銘柄の構成比率が高いのが特徴です。時価総額では日本マクドナルドホールディングスがトップですが、1単元当たりの株価水準が高くないため、ランキングでは10位以内に入っていません。もっとも日経平均と比べれば、ゆがみはそれほど大きくないといえそうです。

むしろ、TOPIXと同じく時価総額加重平均方式の東証マザーズ指数のほうが特定の銘柄によるインパクトが大きいでしょう。なぜなら、左ページの下段右の構成比率ランキングでトップ3に入ったミクシィ、そーせいグループ、CYBERDYNEの時価総額が突出して大きいからです。したがって、東証マザーズ市場の全体相場の基調よりも、これら3社の株価の動きが指数に強い影響を及ぼします。

指数をめぐる動きが個別銘柄の需給に大きなインパクトをもたらすことがあります。昨夏、合併に伴いユニーグループ・ホールディングスが日経平均の算出対象から除外され、代わってユニー・ファミリーマートホールディングスが採用された際には、先駆けて同銘柄への買いが活発化しました。日経平均に連動するETF(上場投信)などの入れ替えに伴い、機械的に同銘柄を先回り買いしたわけです。

今月の投資戦略 日本株 3 自社株買いブームの再来に備え、低RОEで手元資金が豊富な株を

来期、注目のキーワードを考える

2016年1月のNTTドコモの大規模自社株買い以来、減っている大型の株主還元策…。だが実は国内民間企業の現預金は約250兆円!まだまだ余裕があるのだ。

市場が業績とともに気にしているのは企業の株主還元策!

市場の注目は2018年3月期における企業の業績予想などに向かっています。業績とともに投資家が注目しているのが株主還元策。特に「自社株買い」についてです。

なぜ自社株買いが注目されるかというと、3月決算企業の2017年3月期第3四半期決算までに自社株買いの発表がほとんどなかったため。昨年1月のNTTドコモ(上限5000億円)のような、大型の自社株買い発表が最近はないのです。

企業が自社株買いを見送っている最大の理由は、昨年11月の米国大統領選挙後の株価上昇ではないでしょうか。トランプラリーによって自社の株価が上昇してしまったため、企業側から見た自社株買いの妙味が薄れたのです。

でも自社株買いブームは終わっていないと思います。企業は手元に潤沢な資金を抱えており、自社株買いや配当に振り向ける余地が大きいためです。日銀の資金循環統計によると、国内民間企業の現金・預金は2016年9月末時点で246兆円まで積み上がっています。そのため、今後も国内企業は業績にかかわらず、豊富な資金を株主還元の強化に充てる可能性が高いでしょう。リッチかつ低ROEな銘柄をピックアップしてみました。自社株買いブームの再到来に備えて要注目です。

外国人投資家が企業の背中を押すことも予想されます。外国人投資家は昨年、国内企業のROE(自己資本利益率)が伸び悩んでいることなどを背景に、日本株を大幅に売り越しましたが、米国大統領選挙後は買い越しに転じました。そのためROEが低い企業に対して、豊富な手元資金を株主還元などに振り向けるよう促す可能性があります。そこで注目したいのが、手元に潤沢な資金を抱えているキャッシュリッチ企業です。なかでも、まだROEが低く、自社株買いを行なう可能性がより高い銘柄に注目しましょう。

下の表は時価総額5000億円を基準に、キャッシュ・リッチかつ低ROEな銘柄をピックアップしてみました。自社株買いブームの再到来に備えて要注目です。