ネットマネー 2017年5月号より一部を特別公開!

トランプ大統領が掲げた大型減税策やインフラ投資への期待などから、2月の米国株は絶好調。ほかの国々の株式相場もおおむね堅調に推移した。今月も外国株投資にまつわるホットな話題を盛りだくさんにお届けします!

NYダウが12日連続最高値!ベトナムは金融株好調

2月の外国株相場は、1月に2万ドルの大台を突破した米国のNYダウが12営業日連続最高値を更新。〝上げ潮〞ムードが波及して中国、ブラジル、インドなど主な新興国のインデックスも上伸した。

NYダウは1月末にいったん2万ドルを割り込んだものの、2月3日に発表された1月の米国雇用統計で非農業部門の雇用者数が市場予想を大幅に上回ったことなどを手がかりに再び大台を突破。アップルの2016年10〜12月期決算が4四半期ぶりの増収となるなど、2月上旬に発表のピークを迎えた同期の米国企業業績がおしなべて好調だったことも相場を押し上げた。

相場にさらに拍車をかけたのがトランプ大統領による2月9日の発言。「2〜3週間以内に驚くような税制改正案を発表する」とぶち上げ、市場の期待をあおった結果、NYダウは2月27日までの12営業日連続で最高値を更新。結局、2月末のNYダウは前月末比で4・8%上昇した。

中国株も、本土市場の主要インデックスである上海総合指数が2月の1カ月間で2・6%高、香港のハンセン指数が1・6%高と堅調に推移。

鉄鋼など重厚長大型国有企業の業績に悪影響を及ぼしていた商品価格の下落に歯止めがかかってきたことや、中国政府が掲げるシルクロード経済圏構想「一帯一路」に沿ってインフラ投資が拡大するとの期待などが相場上昇を促した。2月下旬に、中国の年金基金から株式市場への資金流入が始まるとの報道が流れたことも買い材料となった。

東南アジア株では、ベトナムのVN指数が2月初めに700ポイントの大台を突破。2月27日にはおよそ9年ぶりの高値となる717ポイントまで上伸した。ベトナム工商銀行(ヴィエティンバンク)やベトナム外商銀行(ベトコムバンク)などの金融株が選好された。
取材・文●渡辺賢一

今月の注目国 服喪期間は政治が安定。成長期待も高いタイ株

タイの対米輸出は農産品が主力。保護貿易にも強い

トランプ新政権の保護主義的な動きが、東南アジア経済にも影を落としている。

主にやり玉に挙げているのは米国に最大の貿易赤字額をもたらしている中国だが、「米国第一主義」を掲げるトランプ大統領のこと、どの国であろうと赤字を押し付ける国には容赦なく報復措置をとる態度に出る可能性は高い。

「ASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国のうち、経済発展が先行して株式市場も整備されているシンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイの5カ国は、経済が少なからず米国との貿易に依存しています。トランプ政権が保護貿易の動きを強めれば、相応の打撃を受けることは免れないでしょう」

そう語るのは、フィリップキャピタルマネジメントのポア・リー・クさん。マレーシアで東南アジア全体の経済や株式動向を見ているポアさんは、「足元の東南アジア経済は堅調さを保っているものの、トランプ政権の今後の政策に対する不透明感や、米国と中国の関係の行方など、外部要因によって株式相場が翻ほん弄ろうされる局面も想定されます」と語る。また、米国の利上げによって東南アジアの主要通貨が売られ、底値が見えないことも東南アジア株式相場の先行き不透明感に結びついているようだ。

「さらなる通貨安が懸念されているのがマレーシアです。今年2〜3月と9〜10月に大量のマレーシア国債が満期償還を迎えるため、国債の約4割を保有する外国人が一斉売却し、それによって通貨リンギットも一段安となる可能性が高いです」(ポアさん)

ただし、マレーシアのナジブ首相が政権の基盤固めのため、2018年に予定されていた総選挙を1年前倒しで、今年4〜5月に実施するという観測も浮上している。

ポアさんは「実現すればマレーシア株やリンギットが一時的に強含む可能性があるので、今が押し目買いのチャンスかもしれません」と語る。

全体として先行き不透明な東南アジア株式市場の中で、ポアさんが比較的ポジティブに見ているのがタイ株だ。「タイも対米輸出への経済依存度が高い国のひとつですが、主な対米輸出品目は農産物なので、保護貿易主義の影響は軽微にとどまるはず。しかもタイでは、昨年亡くなったプミポン国王への服喪期間が今年後半まで続くので、当面は政治的にも安定するはずです。狙い目のセクターは電力や交通などの公共インフラ関連株ですね」(ポアさん)

タイでは電力の自由化が進み、経済発展とともに電力需要も伸びている。バンプーなどの電力株に注目だ。

また、交通インフラ系では、首都バンコクの地下鉄工事などを手がけるシノ・タイ・エンジニアリングなどが有望だという。

米国株を買わないのはなぜですか?

日本に住んでいる人ならば、一度は利用したことがある“クロネコ"で有名なヤマトホールディングス。一方、世界220 以上の国・地域で事業を展開している米国のフェデックス・エクスプレス。軍配が上がるのはどっち?
撮影●村越将浩

第33回 クロネコ宅急便 vs. 米国最大の航空貨物輸送

配当はヤマトが上、業績は3指標でフェデックス有利

日本の輸送会社といえばヤマトや日本通運が代表的ですが、米国では世界最大の航空貨物輸送会社としてフェデックスがあります。フェデックスは設立が1971年でヤマトよりも新しい会社であり、従業員は25万人以上を抱えています。世界220以上の国・地域で事業展開し、保有航空機材は640以上と世界最大規模。日本でも見かけますので、意外に皆さん知っているかもしれませんね。

ヤマトは国内の宅配便で首位、国内シェアは4割を握り、従業員も15万人と非常に規模の大きい会社です。

さて、業績は両社ともにいいのですが、過去5期の平均データを見ると、3指標すべて、フェデックスのほうが圧倒的によいデータが出ています。チャートを見ると、2016年半ば以降のパフォーマンスに差が出てきているのがよくわかります。

さらに予想PERはヤマトのほうが割高なので、もう少し差がつきそうです。ただ、配当狙いならフェデックスは予想利回りが低く、配当金が高い米国企業が多い中、若干魅力に欠けるかもしれません。それでも今後の米国市場を考えるとフェデックスが優位ではないでしょうか。

スパイシ〜・マ〜ケットの歩き方

第60味 フィリピン 米国との関係に注意。巡航速度のフィリピン経済に死角はあるか?

米国トランプ政権とどう付き合うかが今後のポイントに

今年1月にフィリピン政府から2016年の実質GDP(国内総生産)成長率(速報値)が発表されました。四半期ベースの10〜12月期の成長率は、前年同期比6・6%増で7四半期ぶりに減速しましたが、2016年通期で見ると前年比6・8%増となり、前年の同5・9%増から拡大しています。

また、フィリピン政府が目標としている2017年の成長率目標は6・5〜7・5%であるほか、世界銀行も昨年12月に同国の成長率予測を引き上げており、フィリピン経済は巡航速度で推移し、今後もその見通しが続くと見込まれています。

フィリピン経済は2012年あたりから高成長軌道に乗り、労働人口も若く、消費拡大のポテンシャルが高い一方で、貧困や格差、麻薬問題、インフラ不足などの課題も多く抱えています。そんな中、昨年6月に誕生したのがロドリゴ・ドゥテルテ大統領です。

ドゥテルテ大統領といえば、麻薬犯罪者の一掃や国連への悪口など、強烈なキャラばかりが目立つ印象です。しかし、経済政策については基本的に前政権からのインフラ整備推進を中心とした方針を踏襲しています。

大統領に就任して間もなく、日本や中国とトップ会談を行なって両国から多額の資金援助や融資を引き出すなど、早くも手腕を発しているほか、規制緩和や外資誘致にも積極的な姿勢を見せています。しばらくは盤石そうに見えるフィリピン経済ですが、死角がないわけではありません。

懸念材料とされているのは、米国との関係です。ドゥテルテ大統領の外交政策は、前政権の親米反中路線とは異なり、中国との距離を縮めようとするスタンスです。経済的な利益を重視するあまり、過度な中国への接近は米国を刺激してしまうリスクがあります。

さらに、米国自身の影響を受ける可能性もあります。トランプ大統領の保護主義的な政策志向や、利上げ観測による国内資金の流出などが懸念材料です。米国との関係悪化は、海外からの投資マネーを呼び込み、経済成長につなげたいフィリピンにとって大きな痛手です。

フィリピンのGDPは海外労働者からの送金がかなり寄与していますが、こうした送金額の約3割が米国からのものです。また、英語圏であるフィリピンには、多くの米国企業がアウトソーシング先として進出しています。

前オバマ政権時に誕生したドゥテルテ大統領ですが、現トランプ政権とどのように付き合っていくかが、今後のフィリピンの注目ポイントといえそうです。