ネットマネー 2017年6月号より一部を特別公開!

住宅ローン借り換え最新事情

2016年2月に日本銀行がマイナス金利導入を決定して以来、歴史的な低金利が続いている。しかし、米国の利上げが本格化する中、日本にも金利上昇圧力がかかる可能性もある。住宅ローンの借り換えは今がラストチャンスなのか?

日銀は当面ゼロ金利維持。急上昇の可能性はない!?

これから住宅を購入して住宅ローンを借り入れる人はもちろん、借り換えを考えている人にとっても、金利の先行きがどうなるかは興味のポイントになる。

実際、ここに来て米国FRB(連邦準備制度理事会)の利上げが本格化。3月の利上げ後に、さらに年内2回もしくは3回の利上げがあるもよう。これに対して日本は、黒田東彦日銀総裁が「ゼロ%程度の誘導目標の引き上げはない」と発言。「日銀の低金利政策は当面続くでしょう」(東海東京調査センター投資戦略部長/隅谷俊夫さん)という予測からも、固定型住宅ローンの基準金利となる長期金利が急上昇することはなさそうだ。

今後の上昇圧力も見越して、借り換え戦略を考えてみた。

変動金利でもメリット“大"の理由 2000年代の借り入れなら今すぐ借り換え!

日銀のマイナス金利導入から1年以上たったが、実は住宅ローンを抱える人の多くがそのメリットを享受できていない。2000年代の借り入れなら6割が100万円以上の借り換え効果がある。

マイナス金利導入で、9兆円のメリットを享受

マイナス金利導入から1年以上が経過したが、「マイナス金利導入後の急速な金利低下によって、住宅ローンの債務者が住宅ローン借り換えによって享受できる潜在的な金利削減額は約9兆円とみられています。これに対して、実際に借り換えなどで金利削減を享受できている人は約4400億円と、全体の5%程度です」と指摘するのは、住宅ローンショップを運営するMFSの取締役COO(最高執行責任者)・塩澤崇さん。

では、どうすれば金利削減を享受できるのか。

「現在、住宅ローンを借り入れている人の6~7割は変動金利型を利用しています。変動金利型はあまり金利が変わっていないから、借り換えメリットがないだろうと思ったら大間違いです」(塩澤さん)

変動金利型は、銀行が企業向け融資の際に使う短期プライムレートをベースに、「基準金利」が決まる。そこから、さらに、各行が定める「金利優遇幅」を差し引いたものが「適用金利」となる。

「変動金利型の基準金利はここ10年ほど2・475%(年率、以下同)で変わっていません。しかし、金利優遇幅は10年前の1%程度から、今は2%近くまで上がっています。つまり、実質1%近く下がっているのです」(塩澤さん)

ここで大事なことは、一度適用された金利優遇幅は、最後まで維持されるということ。2%近い金利優遇のメリットを享受するためには、自ら借り換えに動く以外に方法はないのだ。

「特に2000年から2009年に借り入れた人は、6割以上の人が借り換えで100万円超のメリットが受けられるはずです」(塩澤さん)

いくら削減できる!?変動金利で2000万円借り換えの場合

2010年に変動金利型で住宅ローンを組んだ人が借り換えをすると、どの程度メリットがあるのか。実際にケース別に試算してみた。

CASE1メリット約166万円!低金利の変動型に借り換え

変動型の最低金利0・447%で借り換え

実際に、変動金利型で住宅ローンを組んでいる人が借り換えをすると、どの程度の借り換えメリットが生じるのかを試算してみた。

今回、設定したSさんのケース(上の図参照)は、住宅ローンを7年前の2010年に借り入れ、当初借入額2000万円、返済期間35年、適用金利は1%の金利優遇を受けて1・475%だった37歳会社員(中堅企業)だ。

2000万円を1・475%で借り入れた場合、総返済額は2049万3091円。毎月の返済額は6万991円。借り入れから7年がたっているので、現在の融資残高は1678万244円だ。

借り換える場合は、今よりも0・5%以上金利が低いほうがメリットが出やすい。

「現在、大手銀行などが提示している変動型の金利は、0・625~0・975%(自己資金20%以上の場合)。もし、最も低い金利を銀行側から提示されれば、メリットが出ると思います」(塩澤さん)

ただ、提示される金利は、審査次第。ふたを開けてみないとわからない。必ず複数行の見積もりをとり、審査結果で一番低い金利の金融機関を選ぶようにアドバイスしているという。

ということで、提示している金利がなるべく低い銀行を複数選ぶようにするのがコツ。現在、変動型の金利が低い銀行は下の表の通り。やはり、適用金利はネット銀行系が低いというのが現状だ。その中で、最も低金利の住信SBIネット銀行で、返済期間28年、適用金利0・447%、手数料(90万円)も含めて1769万円を借り入れて借り換えた場合を試算してみた。

毎月の返済額は、5万6034円と約5000円のダウン。総返済額は1882万7559円と166万円を超える借り換えメリットとなった。

CASE2メリット約87万円!付帯保険が手厚いタイプに借り換え

7大リスクに備えられ借り換え効果も大きい

借り換えをする際に、もちろん、金利削減額の最大化を目指すのが一番だが、それ以外のサービスにこだわるのもひとつの方策だ。

その代表例が、住宅ローンに付帯されている「疾病保障」だ。住宅ローン借入時は、原則として団信(団体信用生命保険)に加入する。もしも、返済中に契約者に万一のことがあったら、保険金が下りて、住宅ローンを完済する仕組みになっている。

しかしこれでは、死亡には至らず、療養が長引いて職を失うなど、収入が極端に下がってしまう“働けなくなるリスク"には備えられない。

そこで各社が取り扱いを始めているのが、疾病保障付き住宅ローン。特定の病気と診断されると、ローン残高に相当する保険金が支払われたり、病気で働けない状態が一定期間続くと支払われるなど、条件は各社で少しずつ違う。

「最近は、ガン、急性心筋梗塞、脳卒中といった3大疾病に加え、ほかの病気やケガ、介護などに備えるタイプも出てきました。手厚い保障に乗り換えるチャンスといえるでしょう」(塩澤さん)

タイプとしては、金利の上乗せなしで付帯保険に加入できるもの(無料)と、金利を上乗せすることで、手厚い保障を受けられるもの(有料)の2種類。無料タイプの代表例は、住信SBIネット銀行とじぶん銀行。じぶん銀行は、ガンと診断されると、その後のローン残高が半分になる。

住信SBIネット銀行は、ガン、急性心筋梗塞、脳卒中の3大疾病に加え、高血圧症や糖尿病などの8大疾病と診断され、所定の就業不能状態になると、毎月の返済額が保障され、それが1年間続くと、ローン残高がゼロになる。

たとえば、りそな銀行の「特定状態保障特約付住宅ローン団信革命」の場合、死亡、高度障害、ガン、急性心筋梗塞、脳卒中に加え、病気・ケガによる16の状態、要介護状態の7大リスクに備えられる。

具体的には、医師により所定のガンと診断された時点で保険金が下り、住宅ローンが清算されるほか、急性心筋梗塞や脳卒中を発病した初診日から60日以上、所定の状態になれば同じように保険金が下りる。介護状態になった場合も対象で、要介護2以上といった条件がある。

りそな銀行の場合は、通常の住宅ローン金利に0・3%を上乗せすることで、付帯保障を付加できるが、団信革命セットで金利が0・05%優遇されるので、最終的に0・25%の上乗せとなる。

Sさんのケースで、りそな銀行の「団信革命」に借り換えた場合、それでも、適用金利は0・747%、毎月の返済額は5万8375円と2600円程度下がるほか、諸費用を差し引いても、87万円の借り換え効果が得られる。

金利メリットと働けなくなるリスクの両方に備えられる新しいタイプの借り換えだ。

CASE3メリット約168万円!元金均等型に借り換え

元金均等型のほうが総返済額が少なくなる

住宅ローンを借り入れる場合、どうしても変動金利型か固定金利型かという、金利のタイプや金利そのものに関心がいきがちだ。しかし、その前に返済方法自体に2種類のタイプがあるのをご存じだろうか。元利均等返済と元金均等返済だ。

元利均等返済とは、元金と利息を合わせた毎月の返済額が一定となる返済方法。今のように低金利の場合、享受できるメリットは小さい。逆にメリットの享受は低いが、金利が高い場合、返済当初はその多くを利息が占め、元金部分の減り方が遅くなる。ただ、返済額は金利が変わらなければ一定なので、“四角形"に(右下の図参照)なる。

一方の元金均等返済は、毎月の返済の元金部分を一定にする返済方法だ。元金部分を返済期間で均等に割り、毎月のローン残高に応じた利息を毎月の返済元金に乗せていく。利息はローン残高に応じて減っていくので、毎月の返済額も徐々に減り、形が “台形"になる(右下の図参照)。

借入額3000万円、金利2%、全期間固定金利型で35年間借り入れた場合で考えてみよう。元利均等型は毎月の返済額が9万9379円で、総返済額が4173万9109円に対し、元金均等型は当初の返済額が12万1429円(最終7万1429円)、総返済額4052万5000円となる。元金均等型のほうが、総返済額が約121万円少なくて済むのだ。多少、毎月の返済額に余裕がある人なら、借換時に返済方法を元金均等型にすることで、借り換えメリットをさらに大きくし、返済額が徐々に減っていく。子供が小さい家庭は、教育負担が重くなるころに返済額も減るので、ライフプランにも合っているといえる。

Sさんのケースで、住信SBIネット銀行の変動金利型に借り換え、元金均等型の返済にした場合、返済期間28年、適用金利0・447%で、借り換えメリットは168万円となる。このCASE3の場合、元金均等払いなので、徐々に返済額は下がるものの、当初は返済額が現在よりアップしてもおかしくない。しかし、借入金利が0・447%と約1%下がっているため、その効果で約1700円下がっている。また借り換えメリットも、同じ条件で借り入れたCASE1に比べ、約2万円額が増えている。

CASE4メリット約187万円!期間短縮タイプで借り換え

借り換え効果は最大!定年時完済のメリットも

住宅ローンといえば、借り換えと同じくらい総返済額を減らす効果が得られるのが、繰り上げ返済だ。

繰り上げ返済とは、毎月の決まった返済とは別に、元金の一部を前倒しで返済すること。繰り上げ返済には、元金が減った分、返済期間を短くする「期間短縮型」と「返済額軽減型」がある。

たとえば、金利3%、返済期間35年で3000万円を借り入れて、3年経過後に100万円の繰り上げ返済をしたとする。もともとの総返済額は約4849万円だが、返済額軽減型を選ぶと約4793万円に。期間短縮型なら約4696万円に軽減され、それぞれ削減効果は約56万円と約153万円になる。

期間短縮型のほうが効果が高いのは、返済期間が短くなる分、利息が圧縮され総返済額が減るからだ。実は、借換時に期間短縮をすると、繰り上げ返済での期間短縮型と同じ効果を得ることができる。金利引き下げによる効果とともに、期間短縮による利息軽減効果が得られるからだ。

Sさんのケースで、住信SBIネット銀行の変動金利型で借り換えを行ない、なおかつ、返済期間を28年ではなく、23年と5年短縮する。その場合、毎月の返済額は6万991円から6万7472円へと6481円高くなり、年間返済額は73万1892円から80万9664円へと7万772円の負担増となる(ボーナス返済なしの場合)。前述のCASE1~3は、いずれも返済額を下げられるのに比べるとハードルは少し高い。

しかしその結果、総返済額は1862万2355円と、借り換えメリットは4ケース中で一番大きく約187万円に。金利引き下げの効果だけでは166万円(CASE1)だが、期間を短縮するだけで、さらに21万円近くの効果がプラスされるのだ。

Sさんの場合、30歳のときに住宅ローンを組み、現在37歳の会社員という想定だが、その場合、返済期間を5年短縮することで、60歳の定年退職時に住宅ローンを完済できることになる。

これからは何度でも借り換えていく時代

金融機関から独立して、住宅ローンの借り換えなどのコンサルティングをしているのがMFS。金融機関から手数料をもらって借り換えの相談を受けると、どうしても金融機関寄りになってしまう。そのため、MFSは依頼者が手数料の20万円を負担する成功報酬型で、中立的な借り換え相談を行なっている。

同社は、借り換えアプリ「モゲチェック」を運営。自分の住宅ローンについて7つの項目をチェックするだけで、借り換えによるお得額がわかる。また、アプリでお得額がわかっても、自分で借り換えの手続きをするのが面倒という人は、住宅ローンショップ「モゲチェック・プラザ」に足を運べば、申込書の作成支援や書類の手配など、借り換え手続きをすべて代行してくれる。

借り換え後はレポートが毎月送られてくるが、さらにお得な借り換えプランが浮上したときは提案書のお知らせが届く。

「これからは、ローンは借りて終わりではなく、お得なプランがあれば、何回でも借り換えをして、総返済額を下げていく時代。既成概念にとらわれず、いつもアンテナを張っておくことです」(塩澤さん)