ネットマネー 2017年6月号より一部を特別公開!

ジェネリック医薬品の黒子役

製薬会社がつくる一錠の錠剤の中で、主薬有効成分が占めるのはほんの数%。その苦みをなくしたり、口の中でさっと溶かしたり、胃酸から守り腸まで届けたりと、ほとんどの市販薬にそんな優れた機能を付加する一方、袋詰めの菓子類には付きものの食品品質保持剤も作っている企業とは?

取材・文●西川修一 撮影●小原孝博

「2020年度にジェネリック医薬品をシェア80%に」という政府目標で脚光、2017年2月期の収益も過去最高へ

製薬会社向け造粒・コーティング装置で国内シェア7割

「創業時から機械と化成品、ハードとソフトの2本柱でやってきました」―。フロイント産業の伏島巖社長は本誌の取材にまずそう切り出した。

1996年にジャスダックに上場した同社の証券コードは6300番台。機械メーカーに分類されている。しかし、「売上構成比は子会社も含めると機械6、化成品4」(伏島氏)。医薬品・食品メーカーを主な顧客として、経口剤(口から飲む薬)などへの造粒・コーティングを行なう装置(ハード)と、医薬品添加剤・食品品質保持剤(ソフト)を同時に製造・販売するというユニークな業態だ。

「造粒とは、粉同士をくっつけて微小の粒にすること。わが社製の装置で薬に造粒を施すと、その後の工程を容易にすることができます。コーティングについては、ドラム式洗濯機のような仕組みの装置に錠剤を何万粒も入れ、何ミクロンという薄い膜を1錠ずつに施し、苦みをなくしたり、光による劣化を防ぐ機能を持たせることができます」

国内の医薬品製造装置の分野では、造粒とコーティングで競合する会社は1社しかいないという。

「市販の薬のほとんどには、われわれの機械でコーティングが施されています」

薬1錠を100とすると、製薬会社の作る主薬はわずか2か3。錠剤は副材料の添加剤のほうがずっと多い。

「主薬の苦みをなくしたり、口の中でさっと溶かす、口から入った薬を胃酸から守り腸まで届けるための被膜をつくるなど、さまざまな機能を発揮するので、機能性添加物と呼んでいます」

食品品質保持剤とは、袋詰めの菓子類などに内包してある小さなパックだ。フロイント産業の社名をパックの印字で記憶した向きも多かろう。

「食品品質保持剤には乾きものに適した脱酸素剤と、半生菓子などに適したエタノール蒸散剤がありますが、われわれが扱うのは後者。世界で初めて商品化しました。カステラやバームクーヘンなどの中で菌を発生しにくくし、食感をやわらかく保ちます」

40年以上前に初めてこれを商品化した同社は市場を独占。現在でも年間約6億包を製造・販売し、国内シェア約6割を占めているという。

「今ではラーメンやコンビニの生もの、酒のつまみやドーナツなどにも使われます」

国内ではほぼ独壇場だ。

ジェネリック特需は今年から来年にかけてピークとなりそう

もっとも、装置事業については先進国で2、3社、新興国市場で10社以上の競合相手があるという。中国・東南アジア市場では、同社は現地メーカーや同社のコピーマシンと戦っているのだ。

しかし、日本国内の市場に参入してくる外資系メーカーは皆無だという。なぜか。「日本人の薬に求める美意識というかクオリティー志向が、非常に高いんです」

白い錠剤にちょっと黒い点があるだけで大問題になるし、大きくてきつい色彩の多い海外の薬にも拒絶反応を示す。

「割れたり欠けたりしても、薬効には何も問題はないのですが、日本だと大変。米国の薬局ではプラスチックのボトルに錠剤をジャラッと入れてそのまま渡されますが、日本では一個一個がPTP包装(プラスチックとアルミで錠剤を挟んだシート)。機能優先の海外メーカーは参入したくても入ってこられない」

もっとも、これは逆もしかりだ。

「現在、海外の売上高は全体の3割程度。もうちょっと上げていきたいと思っていますが、ジャパンクオリティーだけを前面に打ち出すと痛い目に遭う。その国ごとの価格・仕様が求められる」

むろん、同社にしかつくれないハイスペックの装置もあるし、それを顧客が数億円で購入することもなくはないが、「現地で広く使われているタイプと競るだけの価格競争力がまだ足りない。それぞれの国に合わせた仕様にしていかなければなりません」

そのカギは、創業時から販売のライセンス契約を結び、1997年に子会社となった米国のフロイントベクターだ。

「むしろ彼らのほうが、グローバルスタンダードの装置をつくって欧州・米国・南米に納めているので、海外展開は彼らの装置ベースで進めます。特にインド・中国市場はどんどん拡大している。販売活動にさらに注力していきたい」

ここ数年で同社が株式市場の注目を集め始めたきっかけは、新薬の特許の期限切れ後に販売される、低価格で新薬と同じ薬効を持つジェネリック医薬品(後発医薬品)だ。

政府は少子高齢化の波の中、安価なジェネリック薬を使うことで医療費削減を目指しているが、普及率は30~40%程度。そこで、2020年度をメドにジェネリック薬の普及率80%という政府目標が掲げられた。特許期限が切れるとすぐさま90%がジェネリック薬と置き換えられる欧米水準を目指すわけだ。

そこで、ジェネリック薬専門の医薬品メーカーの設備投資増への期待から、フロイント産業が注目を浴びたわけだ。

「普及率は65~66 %まできているのでは。われわれはすでにジェネリック薬向けの装置を納めていますが、設備は新薬メーカーと同等の水準。まだまだ伸びる余地はある。ジェネリック薬メーカーの設備投資が旺盛です」(伏島氏)

2017年2月期の受注、売上高はともに過去最高を更新したが、この特需的背景は遠からず一巡するとみている。

「納期に4~6カ月、なかには1年以上かかる案件もあり、今年から来年にかけてがピークとなりそう。2018年2月期から、また新たな中期経営計画を発表します。次は5カ年計画にします」

「昔は薬を作る機械をつくっていた」と言えるほど新分野へ

今、同社が最も力を入れている製品は、昨年9月に投入した錠剤の印刷装置「タブレックス・レボ」である。

「錠剤一錠一錠の上に印字する装置。国内には7~8社の競合がいますが、われわれが第2世代と呼ぶ新商品は、ほかにはない機能が多く、引き合いが非常に強い」

錠剤は基本的に「白」。飲むときに区別できない、調剤薬局などで取り違えるなどの事故が起こりやすい。

「将来的には病院で処方される薬すべてに『どういう薬か』が記されることになる」

最近の注目は、大手自動車メーカーの関係者や電池メーカーなど、医薬品とはまったく異なる分野の技術者が同社を訪れていることだ。

「リチウムイオン電池の中の負極剤・正極剤の材料のコーティングなど。電池業界は秘密保持が厳しく、納めた粉末の用途が不明な場合が多いが、いずれは収益の柱にしたい」

最近、異業種から技術者を数人採用したという。

「今ある技術をベースに次の10年、20年を見据え、『昔は薬を作る機械をつくってた』と言えるくらい、新分野へ進出したい」

変化をしながら成長していく。ますます先行きが楽しみになってきた。

今後の成長のカギは、海外需要の取り込み

4月下旬に目先の高値をつける可能性があり、留意が必要

医薬品など造粒・コーティング装置の機械部門と医薬品添加剤・食品品質保持剤などの化成部門が柱。造粒装置は国内シェア70%で世界3強の一角。前2月期9~11月期の営業利益は機械部門の牽引で前年同期比43%増と好調。政府が2020年度までジェネリック医薬品の数量シェアを80%以上に高める方針を掲げているため、ジェネリック薬の需要拡大が期待でき、中米や東欧など薬がこれから普及するような地域に食い込んでいけば、大きく成長する可能性が高そう。

逆の見方をすれば、多くの機械で高シェアを握っているため、国内でのシェア拡大余地は限定的で、今後は海外需要の取り込みが成長のカギとなりそうだ。

テクニカル的には週足の一目均衡表の先行スパンの(雲)上限が下値をサポートしている。約13週サイクルで高値をつけているため、4月下旬に目先の高値をつける可能性があり、その後への留意が必要だ。