ネットマネー 2017年6月号より一部を特別公開!

いつものことだが、セミナー会場などで頻繁に尋ねられる。この先、日本株は上がるのでしょうか、どうなるのでしょうかと。長い目で見ると方向は上向きだが、一直線の上昇相場とはならないだろう。全体相場の動向はともかくとして、個別企業ベースで安値があればしっかり買っておく。そうお答えしている。とりわけ暴落症状で大きく下げたら絶好の“買い場"と思って買うことだ。そういっている矢先、トランプ期待が剝がれたとかで、ニューヨーク市場も東京市場も大きく崩れた。あのような下げで、さっさと買えたかどうか、のちのち効いてくると思うよ。

上昇相場がやって来るのをのんびりと待てばいい

株式投資の基本は、将来が楽しみな企業の株を買っていくことだ

いつも言っているが、相場なんて買う人が多ければ上がるし、売りが集中すれば急落するだけのこと。ほとんどの投資家が個人も機関投資家も含めて、相場を追いかけては値ザヤを稼ごうとしている。ということは、ちょっとしたことでも投資家の動き次第で、相場は上にでも下にでも傾斜していくわけだ。

そんな変転極まりないものを読もうなんて、時間もエネルギーも浪費するだけだ。まったくもって、ムダな努力と考えていい。

将来が楽しみな企業の株を買っていくのが、株式投資の基本。少しずつでも利益を積み上げて、企業価値が高まっている銘柄ならば、株価は必ずそれを評価しにいく。したがって、そういった企業の株を買って長期で保有していれば、それなりの投資リターンを手にすることができる。株式投資なんて、ただそれだけのことである。

この当たり前のことをしっかり押さえて、株価全般が安いところで買い仕込んでおけば、さらに上出来だ。とにかく、何かの加減で株価が大きく下げるのを待つのだ。株価なんてものは、しょっちゅう上がったり下がったりしている。それは、世の投資家の大半が儲けてやろうと目を血走らせていて、ほんのちょっとしたことでワッと買ったり、投げたりするからだ。株価は、そういった小刻みの上下動を日々、時々刻々と繰り返している。

そんな中、時折びっくりするような下げ症状になることがある。今だったら、トランプ大統領が「円安はけしからん。懲罰的な措置を講じてやる」といった強硬発言が飛び出すと、日本株は瞬時に暴落する。

そのような暴落症状に陥っているときに、狙いを定めておいた企業の株を「待ってました!」と買い込むわけだ。

一般の投資家からすると「こんな暴落時に買うなんて、正気か?」となるところだが、われわれ長期投資家にしてみれば、ブランド品を大バーゲンセールで買っているようなもの。信じられないほど安く買えて、得をしたとしか考えない。

本物の株式投資とは、上昇相場の到来をのんびりと待つだけ

考えるまでもないことだが、安く買っておけばどこで売っても利益が出る。どこかで上昇相場がやって来るのをのんびりと待っていればいい。楽なものである。これが本物の株式投資なのだ。

相場動向はどうでもいいが、米国の景気動向はしっかり見守っていきたい。つい最近も、米国のFRB(連邦準備制度理事会)は昨年12月に続く出口戦略で、政策金利の0・25ポイントの引き上げを発表した。これだけ景気回復が軌道に乗ってきたのだ、FRBが超金融緩和の出口戦略を進めるのは妥当な政策である。

FRBの出口戦略につかず離れずで、長期金利が上昇していくのは避けられない。パーナンキ前FRB議長が史上空前の金融緩和を実施し、それが奏功して米国の景気は回復してきた。このままジャブジャブの資金供給を続けていると、どこでバブルの再来、そしてインフレの誘引をしかねない。それを未然に防ぐためには、緩やかながらも金融を引き締めていくことが賢明である。

それが出口戦略であると、マーケット参加者は解釈している。だから今回、0・25ポイントの引き上げで長期金利(米国債10年物の利回り)が年2・6%に跳ね上がっても、株式市場に影響はなかった。むしろ、今年4回と予想されていた引き上げ回数が3回ということで、FRBの景気見通しの慎重さに注目が集まった形だ。

どんな経済状況下でも、利益を積み上げている企業の株を買うことだ

米国の景気がこのまま回復基調を続ければ、経済活動全般に利潤幅が高まっていく。資金需要も高まる。すると、長期金利がいつまでも年2・6%の前後だと、見劣り感が否めなくなる。

経済活動の活性化に伴って、より利潤幅が高い投資対象が出てくると、債券市場は動揺する。すなわち、より高い利回りを求める動きが出てくるということだ。

それはそのまま、すでに発行されている低利回り債券の価格を押し下げることに直結する。つまり、債券市場の崩れにつながっていくことになる。

米国の景気回復によって金利水準が高まれば、米国債相場、さらには世界の債券市場の崩れを誘引しかねない。これは、景気回復過程におけるごく自然な現象である。しかし、マイナス金利に走っているEU(欧州連合)や日本にとっては、やっかいな問題となっていく。おそらく米国での長期金利上昇と、それは困るとするEUや日本とで、金融政策のせめぎ合いとなっていくのだろう。

それが株式市場にどのような影響を及ぼすのかは、今後の大きなテーマとなるはずだ。

そこで、もう一度思い直してもらいたいのは、株式投資とは個別企業の株を買うということ。長期金利が上がろうが、現状の低水準を続けようが一向にかまわない。どんな経済状況でも、じっくりと利益を積み上げている企業の株を選んで買っておけば、何の心配もないはずだ。

ATSUTO SAWAKAMI
澤上篤人
さわかみ投信取締役会長
1947年、愛知県名古屋市生まれ。73年、ジュネーブ大学付属国際問題研究所国際経済学修士課程履修。ピクテジャパン(現・ピクテ投信)代表取締役を経て、96年にサラリーマン世帯を対象にさわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)を設立。『国債暴落をものともしない長期投資』(小社刊)、『お金に支配されない生き方』(ビジネス社)など著書多数。