ネットマネー 2017年6月号より一部を特別公開!

各国で政治日程が目白押し。海外勢 VS 国内勢の様相に

米国のFRB(連邦準備制度理事会)による、最低あと2回の利上げが年内に想定されている。本来ならドル高(円安)要因だが、日米の政局不安が円買いを後押ししている。

海外投資家が懸念している「アベグジット」

「日本の学校スキャンダルがアベノミクスに暗い影を投げかける」(英訳)―。これは英国経済紙の見出しだ。紙面では、英国のEU離脱の「ブレグジット」にかけて、アベノミクスに対して「アベグジット」なる造語を示している。

 この手の見出しは、日本の政局事情に疎い海外投資家には刺激的に映るだろう。一方、国内投資家にしてみれば、森友学園問題への疑念や不可解さこそ抱くものの政権交代へと一気に読み込む向きはきわめて少数派だ。しかし、外国人投資家が約70%を占めるのが日本株市場。彼らの受け止め方次第では、日本株売りおよび為替市場での円売り縮小につながるリスクはくすぶる。

 第2次安倍政権が誕生して以来、国内投資家からは明確な安倍政権離れは感じられない。2013年9月に安倍首相がNY証券取引所で「バイ・マイ・アベノミクス」と宣言する一方で、日銀の金融施策では円買いインセンティブ(誘因)の低下を促している。

 そこで今回のスキャンダルとなるのだが、引き合いに出されるのが第1次安倍内閣(2006年9月から)における政権末期での米ドル/円展開だ。確かに1ドル=124円から111円へとドル安が進行。加えて、消えた年金問題や閣僚の相次ぐ辞任がフォーカスされ、政権発足から1年で退陣を余儀なくされた。

 しかし、当時の市場テーマは米国のサブプライムローン問題の深刻化、FRBが公定歩合を0・5%緊急利下げするなど主役はドルだったのだ。

 では、現在はどうか。主要国の政治が揺れる中、日本の政治安定度にも疑念が強まっての「アベノミクス頓挫≒円売り縮小」なのだろうか。推測すると、答えはイエスとノーの両方かもしれない。

 それはトランプ政権の不透明感と比べて政治リスクの小さい円買いの可能性、逆に日米金融政策による金利差拡大からの円売りの可能性だ。

 今夏に向けては国内外の政治日程が多数予定されているが、海外勢の過度な円買い圧力に対しては、国内からは安倍政権への支持率、アベノミクスへの信認度が逆張りへの強度となって試されそうだ

円安・ドル高を阻む 陰の要因はトランプ大統領令

一時2・6%台をつけた米国長期金利だが、米ドル/円相場との連動性は急速に薄れている。その元凶は、米国企業の国際競争力回復=ドル安圧力をかけるトランプ大統領にあった!

カブドットコム証券 投資情報部 投資アナリスト
藤井明代さん(AKIYO FUJII)
株主優待からテクニカルまで幅広い分野の情報発信で人気。ラジオやテレビなどレギュラー出演多数。著書『勝てる!「優待株」投資』(幻冬社)。

金利差拡大でドル高継続か。トランプ氏の圧力で円高に振れるかが焦点

 通常、為替相場では、金利の高い通貨が買われ、金利の低い通貨が売られる傾向にあります。そのため、米ドル/円も教科書的には、日米両国の長期金利の金利差が拡大する局面では円安・ドル高へ、縮小する場面では円高・ドル安へ向かうのがセオリーです。

 ところが、今年2月以降の米ドル/円は日米金利差との連動性が急速に失われています。下段・上のグラフの右側部分を見るとわかりますが、金利差が拡大方向にあっても米ドル/円の為替レートは円安・ドル高方向に振れなくなり、時には逆行する局面も出てきました。

 金利差で動かなくなった以上、ドル高トレンドには何らかの抑制要因が働いている、とみるべきでしょう。

 そこで思い当たるのが、2 月3日にトランプ新大統領が発令した「金融制度改革の検討を命じる大統領令」です。

 この大統領令には金融規制における中核的な原則が7項目にわたって示されており、なかでも「米国企業が外国企業に対して競争力を有するようにする」と明言された項目が為替相場に隠然たる影響力を与えているのです。 

 ファンダメンタルズをベースとした金利と為替の連動性が機能しないとなれば、その原因はファンダメンタルズ以外の部分にあるはず。為替相場に政治的な圧力が働き、ドル高抑制という現象が生み出されていると考えていいでしょう。

 今後、日米金利差というファンダメンタルズの力と、トランプ大統領が掲げるドル高抑制による米国企業の競争力強化という政治的圧力のどちらが勝つのか? その綱引きがこれからの米ドル/円相場を動かす大きな要因になるのは間違いないところです。

90円超えも視野に入った !? 好材料ぞろいの「豪ドル」に注目!

需給面のサポートに加えて中国のコモディティ(商品)生産調整も、豪ドル相場の追い風に。豪ドルの上昇シナリオを前提としつつ、レンジの下限では買いを検討したい。

e ワラント証券 投資情報室長
小野田慎さん (MAKOTO ONODA)
イボットソン・アソシエイツ、ゴールドマン・サックス証券を経て現職。ポートフォリオ構築の専門家としての経験を生かし、幅広い資産の分析を行なう。

上昇トレンド継続の豪ドル。5〜6月には90円突破もありうる!?

 相場の注目がトランプ大統領と米国をはじめとする各国の政策金利の動向に集まっている中、豪ドル/円は実に堅調な相場となっています。昨年9月から12月にかけての急ピッチな上昇トレンドはいったん収束し、年始からは緩やかな上昇トレンドに転換しているとはいえ、豪ドル相場に関しては次の2点のように比較的好材料がそろっています。

 1つ目は通貨先物市場における需給面の好転です。通貨先物市場と為替相場の関係を見る場合、対円の相場で見るより対米ドルの相場で見るほうが動向を把握するのに役立ちます。

 昨年末は、シカゴ通貨先物市場における投機筋の豪ドルの買いポジションが減少トレンドにあったことで、豪ドル相場は対円では上昇していましたが、対米ドルで見ると下落していました。今年の初めにはポジションがいったん売り越しとなりましたが、1月中旬以降は買い越しに転じ、買いポジションも増加基調にあります。2月28日現在では、約5・2万枚の買い越しとなっています。

 2つ目はコモディティ市況の改善です。需給の改善の背景として、コモディティ市況の改善が挙げられます。コモディティの主要生産国である中国において鉄鋼や石炭の生産調整が進んだことで、鉄鋼の原料である鉄鉱石や石炭の価格が改善。豪州も鉄鉱石や石炭の生産高は大きく、コモディティ市況の改善が資源国通貨としての豪ドルの上昇を後押ししているものと考えられます。

 今後の豪ドル/円については、5月末には50%の確率で83・1〜90・2円のレンジ、6月末には50%の確率で82・7〜90・8円のレンジを想定します。前述した好材料を背景に上昇トレンドの継続を前提とする場合、レンジの下限では豪ドル買いを検討したいところです。5月に90円を超える可能性は十分にありうると考えられます。