ネットマネー 2017年7月号より一部を特別公開!

ここまでIPO投資の魅力について触れてきましたが、個人投資家の中には、一般の株式投資には参加せずにIPO株だけを根気よく狙っている人もいるそうです。ゲットするためのハードルは低くはありませんが、根気よくやれば意外と当たるともいわれています。

IPO株取得の極意は、複数の証券口座を徹底活用すること

「IPO投資で効率的な利益を上げようとするための基本は、やはり上場前の公募もしくは売り出しで株式をゲットして初値で売ることだと考えています」と竹内さん。

 そのための第一歩は証券会社での「証券口座開設」です。株式投資なので当然なのですが、ここで注意しなくてはならないのがIPO特有の証券会社選びです。

 IPO株の場合、上場にあたっては証券会社の幹事団が組織されて、その幹事証券がIPO企業から配分された株式を投資家に配分します。そのため、IPO企業の幹事実績が高い証券会社に口座を作ることが必要です。また、幹事団の中でも中心的な役割を果たす主幹事証券は最も株式の配分が多くなっています。

 最近では、全国規模で投資家を募るために、ネット証券を幹事団に入れるケースが主流となってきました。国内大手証券が主幹事証券を占めてきた時期もありますが、ネット証券が主幹事を務めることも増えています。

 ここでのポイントは、「IPO株はそれぞれの幹事の証券会社で抽選が受けられる」というルールです。すなわち、証券口座は1つではなく、複数の証券会社で開設しておき、IPOの抽選に参加すれば当選確率はグッと上がることになります。IPO株を効率よく手に入れたければ、まずは、口座開設から始めましょう。

新規上場のスケジュール情報は東証や専門のサイトで

 さて、証券口座が開設できれば、次のステップはIPO株の情報を入手することです。相場環境にも左右されますが、年間でIPO企業は近年50社から100社程度が登場します。IPOの約1カ月前に東証などの取引所から正式に発表されます。東証のホームページや新聞報道などをこまめにチェックする必要がありますが、最近ではIPO関連サイトが多数立ち上がっていることから、自分に合ったサイトを選んでおくのもいいでしょう。 しょう。

 具体的なIPO株の情報は、証券会社からは各IPO企業の目論見書(もくろみしょ) ベースでしか、上場までは情報提供できないことになっています。この目論見書などは、東証のホームページに発表と同時にPDFで開示されています

申し込みは仮条件の上限価格での参加が基本

IPOの抽選に具体的に参加するには、ブックビルディング期間(申込期間、需要調査期間)に証券会社に申し込み、抽選を待ちます。ブックビルディング期間の前に、参加するための価格「仮条件価格」が発表されます。たとえば、「800円から1000円」というものです。ただ、最近では高い上限価格で決定することがほとんどです。よほどのことがない限り、この上限価格で参加しましょう。

 なお、当選したときに必要な購入資金をあらかじめ入金しておかないと抽選を受けられない証券会社が多いので、準備が必要です。これを「前受金」といいます。そして、抽選結果は証券会社によって通知の仕方がマチマチです。あらかじめ確認しておきましょう。幸運にも当選した場合、購入の意思表示を速やかに行なってください。これを行なわないと、当選が無効となるので注意してください。

運よくIPOに当選したら、初値売りが王道

そして、当選した場合、いよいよ利益を確定するための売却です。「IPO株の最も流動性が高い初値売りが基本」(竹内さん)、「IPOはかなりの確率で儲かるうえ、手数料は無料です。仮にIPOをゲットした場合には、基本的には初値売りが賢明」(鮎川さん)といわれます。

 IPO株は上場当日にならないと、売り注文が出せない証券会社が多いので、当日の朝に売り注文を出します。ほとんどのIPO株は初値が公開価格を上回るので、当日のマーケットが始まる前に「成行」で売り注文を出しておくことが有効です。初値をつけて、その直後に上昇する銘柄もありますが、公開価格から大きく上昇して初値がついたIPO株であるほど、初値直後に急落するケースもあります。せっかく得た大きな利益を減らすことになることは回避しましょう。

 もちろん、上場初日に必ず売らなければならないというルールはありません。あくまでも利益確定がしやすいのが上場日ということです。上場日以降も株価が上がるチャンスは当然あるので、株主優待などに魅力を感じた場合は、長く保有し続けるというのもひとつの手です。ただし、IPO時の株価にはプレミアがついていることが多いので、利益を一度確定(売却)して、株価が調整(下落)したところを改めて買い直す手もあります。人気のIPO株といえども、株価が上昇し続けることはありません。「利食い千人力」という相場格言通り、短期間で確実に利益を得ることがIPO投資の王道です。

人気化しやすいIPO株の特徴はコレ!

 証券会社の口座を複数持ち、根気よく応募することがIPOの当選への近道です。さて、ここではIPO株の特性についても触れておきましょう。

「最近の状況を見てみると、AI、ビッグデータ、自動翻訳機(インバウンド)などに関連した銘柄が人気化しています」と鮎川さんは指摘します。

 株式投資は成長株投資でもあり、こうした時流に乗った銘柄は人気化しやすくなっています。こうした企業が、東証マザーズ市場に多く登場することから、マザーズ銘柄人気がIPOで高まっています。

 その一方で、鳥貴族や串カツ田中のように外食産業の銘柄もIPO人気が高まることが多々見受けられます。今年の場合は3月にマザーズに新規上場したラーメンチェーンの「一風堂」を展開する力の源ホールディングスがその好例です。公開価格600円に対して初値は2230円と約3・7倍でした。「外食産業では、店舗の増加が見込まれる場合、業績の成長イメージが描きやすいことがあります。さらに、株主優待制度を導入するところが多く、個人投資家の資金を引きつけやすいという特性があります」(証券専門紙記者)

 一方で、不人気となりやすいIPO株にも特徴があります。「今年上場したマクロミルなど再上場案件の銘柄のパフォーマンスは低迷しています」(竹内さん)。大株主の投資ファンドの売りが出てくる銘柄で、市場から資金を吸収する額が大きな銘柄は敬遠されやすくなってしまいます。単純に言えば、上場規模が小型で、成長イメージが描きやすい事業を持つ銘柄というのが、初値が飛びやすい銘柄ということになるでしょう。ただし、こうした銘柄は、公開する株式数が少ないので当選確率もグッと低くなります。

人気IPO株のセカンダリー投資は特に慎重に

 IPOの抽選にはずれてしまうと、思わず初値や上場直後に購入したくなります。これを「セカンダリー投資」といいます。しかし、「IPO人気銘柄は初値が公開価格から大きく飛んでしまうので、セカンダリー投資には不向きです。今年3月にIPOしたソレイジア・ファーマのようにバイオベンチャーで株価が低位な場合は需給相場での意外高がありましたが、これはレアケースです」と竹内さん。

 また、鮎川さんは「セカンダリー投資は需給のみで成長性などはあまり重視されません。一昔前は板情報などで方向感がつかめたのですが、現在は高速売買によっていきなり値が飛ぶこともありますので、セカンダリー投資が難しくなっています」と言います。

 このようにプロでもセカンダリー投資については、慎重さを求めています。IPO直後の銘柄の値動きは数分間で急伸、暴落することがあるので、腕に覚えがありリスクが取れる投資家以外は、参加に慎重になったほうが賢明です。

IPOの基礎用語

IPO(新規株式公開)

 未上場企業が証券取引所に株式を上場させて、不特定多数の株主が自由に売買できるようになること。企業サイドとしては社会的信用度の向上、資金調達の多様化などのメリットが大きい。

上場承認

 証券取引所が正式に新規上場企業として承認・発表すること。同時に、上場までのスケジュールが開示され、通常、上場承認から1カ月程度で上場する。

目論見書 

 有価証券の詳細を記載したもの。事業内容、沿革、株主構成、増資内容など、投資判断に必要な重要事項を説明した書類。上場まで、証券会社は顧客に対してこの目論見書しか営業ツールとして使えない。また、企業も上場までは基本的にこの目論見書ベースでの情報開示しかできない。

想定価格

 新規発行株式の1株当たりの予定価格のことで、目論見書の中に記載される。この想定価格を基準に、仮条件価格が設定される。仮条件価格が発表される前に知っておけば、資金準備の参考になる。

ブックビルディング

「ブックビルディング方式」とも称され、一般的に「需要積み上げ方式」と説明される。引受証券会社が新規上場予定の企業の公開価格(公募価格、発行価格とも)を決定する方式。事前に仮条件価格が提示される。投資家はこのブックビルディング期間内に購入の意思を引受証券会社に提示する必要がある。通常は5営業日程度だが、上場規模によって10日以上となることもある。

仮条件価格 

 投資家がブックビルディングに参加する際の価格。上限価格から下限価格が示される。人気が高いときはブックビルディング期間中に上限価格が引き上げられるケースもある。逆に人気がないときは下限価格が引き下げられる場合もある。通常、仮条件価格の上限で公開価格が決定する。

公開価格

 ブックビルディング(需要申告)で決定した最終公開価格。公募価格、発行価格と称されることもあるが、売り出しだけでIPOする企業もあり公開価格と称することが多い。この公開価格と公開株式(公募と売り出しの合算)を掛け合わせたものが株式市場からの「資金吸収額」となり、IPOの規模感のバロメーターとなる。

申込期間

 通常は公開価格決定日の2営業日後に設定され、期間は4営業日が一般的。公開株式の引受投資家(IPO当選者)はこの期間に購入意思を示す。

払込期日

 購入代金の払込日。事前に代金は証券会社に預けることが一般的。

受渡期日

投資家への正式な株式譲渡日。新規上場日でもある

引受幹事証券

 IPOにあたっては、公募・売り出しを取り扱う証券会社。この幹事団の証券会社でないとIPO株は配分されない。事務幹事など中心となる証券会社を主幹事といい、取扱株式数も多くなる。大型上場ほど引受幹事数は多くなる。東証からは﹁元引受取引参加者等﹂と表現される。

オーバーアロットメント(OA)

 IPOにあたって企業は、新株発行を伴う公募、大株主が持ち株を放出する売り出しなどが実施されるが、売り出しの予定数量のほかに、同一条件で追加的に売り出しを行なうことを「オーバーアロットメント(OA)」という。OAによる売り出しは、引受証券会社が、発行会社の株主から借り受けた株式を売却する形で実施される。

ロックアップ 

 IPO前の企業の既存株主が、上場後一定期間売却できない期間。創業者や親会社、ファンドなど大口所有者が対象となることがほとんど。90日、180日など、設定期間はマチマチ。また、初値が公開価格の1・5倍になると売却可能という﹁ロックアップ解除﹂条項が付く場合がある。大株主にこのロックアップがすべてにかかっている場合は、初値が高くなりやすい。

ベンチャーキャピタル(VC)

 IPO企業が上場に向けて成長のための資金を借り入れる際に使う金融機関。ジャフコ、日本アジア投資など上場企業も。ロックアップがない場合、VCは上場後、速やかに株式を売るために需給悪要因として捉えられやすい。このVCが多く大株主にいる場合は、上場後の売り圧力が強いことを示している。