ネットマネー 2017年7月号より一部を特別公開!

イラン、中国、北朝鮮といった国々と米国が戦争をするリスクについて識者の間では危機感が高まる一方だが、金融市場は無反応。 世界中で金融緩和策=低金利化状態があまりにも長期化してきたために、マーケットのリスク感覚がマヒしているのかもしれない…
撮影●村越将浩

米国有数の総合金融サービス会社であるバンクオブアメリカ・メリルリンチが4月下旬、「フレグジットのリスクが過小評価されている」という見出しの調査レポートを緊急的に顧客に向けて送付した。

「フレグジット」とは、「フランス」と、「出る」を意味する「イグジット」を掛け合わせた造語。英国のEU(欧州連合)離脱時に浸透した「ブレグジット」から、今回もそのような造語で表現されるようになった経緯がある。4月23日に実施されたフランス大統領選挙第1回投票でEU離脱を主張する候補が第2回投票に残る可能性があったため、バンクオブアメリカ・メリルリンチは大きなリスク要因として顧客に対して用心するよう強調したのである。

フランス大統領選挙は第1回投票で候補者が過半数を取れないと決選投票が行なわれる仕組みで混戦模様で進み、反EUで極右政党の国民戦線のルペン党首、中道でEU重視のマクロン前経済相、中道右派のフィヨン元首相の3者が競っていたところに、EU懐疑派で同離脱も辞さない急進左派のメランション左翼党共同党首が猛追するという状況となったため、その混戦振りがリスク要因として強調されたのだろう。

結局、深刻な事態には至らなかったが、実はフレグジットが実現すると、大規模な金融危機が起こる可能性があった。フレグジットはユーロ通貨圏からの離脱と同義。フランスの離脱は、ギリシャのユーロ圏離脱が懸念された欧州危機や英国のEU離脱とはケタ違いの震度となるからだ。フランスはユーロ圏ではドイツに次ぐ経済規模。GDP(国内総生産)でギリシャの10倍以上ある。一方、英国はユーロ通貨圏ではなかったので、英国からの資本流出はポンド安につながり、為替市場がその衝撃を吸収した。

だが、フランスのユーロ圏離脱は世界の外貨準備高シェアで2割を押さえるユーロ圏全体からの資本流出につながることになる。資本流出が加速すれば、財政難にある南欧や不良債権を抱える欧州の銀行が一気に資金不足に陥る可能性があった。フレグジットだけではない。最近は北朝鮮問題など、さまざまな地政学リスクが過小なリスクと看過されている気がしてならない。第2次朝鮮戦争が勃発すると、中国やロシアも巻き込まれる可能性がある。

また、シリアへのミサイル攻撃を突然敢行するなどというトランプ政権の強硬政策リスクは、金融市場に十分に織り込まれていない。「トランプ政権が交戦する未来……」 オバマ大統領の元中東担当補佐官と国務次官補を務めたフィリップ・ゴードン氏は、イラン、中国、北朝鮮といった国々と米国が戦争をするリスクをそのような言葉を使って警告した。

識者の間では危機感が高まる一方だが、金融市場は無反応。世界中で金融緩和策=低金利化状態があまりにも長期化してきたために、市場のリスク感覚がマヒしているのかもしれない。