ネットマネー 2017年7月号より一部を特別公開!

来月の日本株はどう動く?世界の市場ではどんなことが起こっている?日々めまぐるしく動く国内外の経済情勢を解説&予想する「サテライト」連載。前半は日本株メインの投資戦略を3連発、後半は先進国やアジアなど気になる海外の国にスポットライトを当てながら、フレッシュな情報を「誌面中継」します!

割安企業は説明必須。駆け込み自社株買いか

例年6月は3月本決算企業の定時株主総会ラッシュ。今年は6月29日が集中日になりそうだ。決算発表から2カ月近く経過した企業が多く、総会前後に業績悪化銘柄の株価が反転するケースが少なくない。

企業間の暗黙の了解で総会前の持ち合い株売却は手控えられるが、売り手が減るので需給が引き締まり、株価には追い風。
今年は機関投資家が投資先企業に経営改善や利益拡大を求めるなどの行動規範、スチュワードシップ・コードが普及し、株主への説明と利益還元の充実が求められる。

これまでは増益さえ達成すれば経営責任を問わない風潮があったが、今年はPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業を中心に株主から株価の割安解消策を要求される公算が大きく、駆け込み的な自社株買い発表がありそうだ。

一方、北朝鮮や中東などの軍事的な緊張が常態化。「ミサイル発射」報道だけでは投資家も驚かなくなり、為替市場も落ち着きそうだ。 ただ、トランプ氏の打ち出す移民政策や貿易政策を市場は無視できない。戦争にでもならない限り、6月相場の最大のリスク要因はトランプ氏なのかもしれない。

国内市場はこう動く…まとめ
① 株主総会前は需給良好、株主還元策の発表に期待
② 株主総会は業績悪化銘柄の株価反転のきっかけにもなる
③ 軍事的緊張が薄れても「トランプリスク」は継続

資本流出、終息へ。上海株暴落リスク後退

6月は欧州各国の選挙や米国のトランプ大統領の予測不能な政策運営だけでなく、中国の動向にも目を配ろう。

秋の中国共産党大会を前に経済指標が中国株の動きに直結し、時に日本株をも動かすからだ。中国の経済指標が堅調さを取り戻していることは、あまり報じられていない。

3月に全国人民代表大会(国会に相当)で決まった2017年の成長目標は6.5%前後。前年より下げたが、低成長と評価されない範囲に収めたようだ。

鉱工業生産指数は年初から目標値を上回り、固定資産投資も堅調だ。

為替市場の懸念要因だった中国の外貨準備高は2月に3兆ドルの大台を回復した。資本流出に歯止めがかかった形である。

トランプ大統領が選挙前の公約を覆し、中国を為替操作国に認定しないと明言したこともあり、人民元や上海株の暴落リスクは大幅に後退したといえそうだ。

中国政府は秋の共産党大会に向けて、景気テコ入れの手を休めることはないだろう。中国の経済指標の改善はコマツやファナックといった中国関連株の刺激材料となり、輸出セクター全体の強気ムードを生みそうだ。

世界市場はこう動く…まとめ
① 中国の経済指標はそこそこ堅調に推移している
② 秋の共産党大会を前に中国政府が景気テコ入れ継続
③ 中国の経済指標の改善は日本株にもプラスの影響

1 今月の投資戦略 日本株「監査不要です、早く出して」と要請が。決算短信ルール変更でココが変わる

いつもなら4月中旬から企業の業績発表が大量に出てきて"決算ラリー"が始まるのがこの時期。実は東証のルール変更で、数学が出た直後の投資判断にはリスクが生じそうな銘柄も?

決算短信=監査のお墨付き、というわけではない

東芝が前3月期の第3四半期決算をいつ発表するかが話題になりましたよね。"3度目の延期になるんじゃないか?"と噂されていたが4月11日の期限ギリギリで提出しました。ただし監査法人と意見が対立。 異例ですが「監査法人の適正意見なし」の決算発表でした。上場廃止を避けたい東芝の思惑が透けて見えたので、投資家は評価しませんでしたね(株価は下落しました)。

決算発表の数字は投資家にとって重要な判断材料。それ自体が信頼できるものであることが大前提です。監査法人の意見が付いていることも当たり前の話。決算の数字を最初に知ることができる情報源が、企業が発表する「決算短信」なわけです。

4月中旬から5月前半にかけて、3月本決算企業が期末決算を発表しました。このタイミングでは、前期の実績に加えて、今期の見通しも示されます。投資判断をするうえで最も注目されるのが決算ですが、今回の決算短信からルールが変更されていることをご存じですか?

今年の2月、東京証券取引所が決算短信の作成要領を見直しました。その中に「決算短信等には監査等が不要であることについて」という項目があり、「決算短信等における決算の内容の客観性は、監査等により確定した決算の内容が法定開示として後から開示されることで、担保されることとなります」と記載されています。監査終了後の開示は後からでOK、会社側で決算内容が定まった時点で早く開示するようにと指示しているのです。

東証によれば、上場企業の約4割が監査終了を待ってから決算短信を開示しているのだそうです。1日に数百社の決算発表が重なったり、決算説明会が集中したりする混雑を減らすのが東証の狙い。このルールの適用は、今年の3月末日以降の決算分からとなっています。なお、四半期決算の内容開示は、金融商品取引法に基づき法定提出期限は各期末から45日以内です。そのため、東証の発表早期化の要請対象にはなっていません。

業績判断は決算期の1カ月前~2カ月後を待たないとダメ?

新しいルールになって、どの程度の企業が東証の要請に従うのかを見守る必要があります。ただ、監査の終了を待たずに企業側が早めに開示するケースが増える可能性は高そうです。その場合、東芝の例と同様、速報的に出された"監査の意見なし"の数字に対して投資家は「信憑性が低い」と思うのではないでしょうか。ちゃんとした監査の終了後、業績の修正が大なり小なり出るかもしれないわけですから......。

決算の定量的な数字だけをもとにアルゴリズムが売り買いを判断し、初期反応を大きくしている投機筋が存在します。今後、監査終了前の決算数字が出回り、その数字が実は誤っていた場合、誤った情報をもとに誤った株価をつけてしまうリスクが高まります。そうした不確実性は、アナリストや機関投資家が決算内容を分析する際に考慮しないわけがありません。

それでなくても、決算に関する情報は得にくくなっているのです。昨今、決算日の1カ月前あたりから、企業側がアナリストの取材を受け付けなくなっています。これは、決算直前の情報について、アナリストや機関投資家に限って提供するという不公平をなくすため。つまり決算期が3月末の企業でいえば、その1カ月前の2月末から、監査が終了して確定した内容が開示される5月中旬ごろまで正確な情報はゼロということです。その後にアナリストの分析がなされる、客観的な決算の解釈が広まるのは5月末くらい。決算内容をもとにその銘柄の適切な売買判断ができるまでには、かなりの時間がかかるようになるわけです。

トランプラリーの巻き戻しや日本の政治に対する不信感、さらに北朝鮮有事への警戒といった地政学リスクも加わり、日本株は新年度に入って崩れました。その地合いに巻き込まれて安くなった好業績株を仕込むにはいい時期ですが、決算短信のルール改定をぜひ覚えておいてください。つまりこの時期は、3月や4月決算発表の銘柄は避けたほうが無難。決算期日から2カ月は、決算書の数字での売買は控えるのが妥当でしょう。

2 今月の投資戦略 日本株 「つなぎ売り」の誤算!「逆日歩」の負担が重かった銘柄は?

「まるでバブルでは?」と言われるほど、株主優待株がブーム化している。それに伴って、「つなぎ売り」を行なう投資家が急増中。その結果、思わぬ誤算が生じていることが今回のランキングで明らかに!

権利付き最終日直前の「つなぎ売り」の殺到で「逆日歩」が発生!

今までにも増して株主優待が人気を博しています。ちょうど2017年3月期決算の結果が出そろった頃合いで、この期の優待をもらう権利を得た人も少なくないはず。その権利が得られる最終日を過ぎると株価が下落することから、信用取引で「つなぎ売り」を行なう人も増えています。

保有中の優待銘柄の株価下落をヘッジ(回避)する目的で、同じ銘柄に信用売り(カラ売り)を仕掛けるのが「つなぎ売り」です。ただ、その際に注意したいのが「逆日歩」と呼ばれるコスト。株主優待人気の過熱とともに権利確定日の直前につなぎ売りが集中し、このコストが発生しやすくなっているのです。

信用売りを希望する投資家が殺到し、証券金融会社において貸株のストックが底を突いた場合に生じるのが逆日歩。証券金融会社は株券の不足分を機関投資家から調達することになり、相応のコストがかかります。そこで、その銘柄に信用売りを仕掛けている投資家に逆日歩として負担してもらうわけです。

これが意外と軽視できないコストで、たとえば1日1円で1,000株の売り建てなら、1日に1,000円の負担になるうえ、土日や祝日にもかかってきます。優待の権利を手に入れ、株価下落リスクもヘッジできたと高をくくっていると、実は逆日歩という大きな出費で損をしていたというパターンがありうるわけです。

そこで、今回は3月末権利確定の優待株で、逆日歩の負担が重くのしかかった株をランキングしてみました。今年3月28日(権利付き最終日)の終値に対し、逆日歩が占めるウエートが高かった銘柄を上位から並べたものが下表です。

その1位となったのは、ゲーム施設の運営や不動産事業などを手がけるアドアーズで、逆日歩のウエートが突出して高くなっていました。
1単元(最低売買単位)100株の保有で、「逆日歩」の負担は1日当たり2,400円。株主優待を得るには35単元必要ですから、8万4,00円のコストを払いながら、提携先のサロンチケット2枚を手に入れる形になっていたわけです。

信用倍率が1倍割れの優待銘柄にはイエローカードが!

2位の中央魚類についても、驚くべき状況が判明します。同銘柄の1単元は1,000株なので、1日につき2万3,400円の逆日歩を払いながら、3,500円相当の水産物をもらう権利を得ているわけです。3位の神戸電鉄も1単元が1,000株なので、逆日歩は1日当たり2万4,000円になります。

4位以下の銘柄についても、逆日歩の負担が相当なものであったといえます。しかも、外食を中心に人気を誇る優待株が名を連ねているのです。とことんブーム化して、つなぎ売りを仕掛ける投資家が急増していたことを象徴している現象といえそうです。

実際、信用残の動きを見ても、その状況を確認できます。下の2つのグラフは、ランキング1位のアドアーズと3位の神戸電鉄における信用残の推移です。青線の下降は貸株の増加を意味しており、3月28日に急増しているのが一目瞭然となっています。

こうした逆日歩という落とし穴に落ちないためにも、つなぎ売りを行なう前に「信用倍率」を確認しておくべきでしょう。1倍以下になっているものは、すでにイエローカードの判定が出ているといえます。その場合は、素直に現物株だけを保有しておくほうが無難です。

もちろん、「一般信用取引」では逆日歩が発生しませんが、信用売りを行なえない銘柄も多いので、なかなか都合よく事が運びません。信用倍率1倍割れの銘柄に対しては、むしろ信用買いを仕掛けておいたほうが得策かも?なぜなら、こちらは逆日歩分を受け取れるからです。

このランキングの結論
① 人気の優待銘柄は、権利付き最終日に「逆日歩」が発生しやすい。
② 信用倍率1倍割れの銘柄は、「つなぎ売り」を避けるのが無難。
③ 信用倍率1倍割れの銘柄は、信用買いで「逆日歩」をもらう手も。

3 今月の投資戦略 日本株 機関投資家の利益確定で下げた中小型株の押し目買いチャンス!

年始から強烈に上昇していたマザーズとジャスダックの株が4月に入って急落。この下げは需給によるものなので、むしろ今こそ買い時といえそう!

"お祭り騒ぎ"だった中小型株が冷えた要因は一時的な需給の悪化

日経平均株価は4月に一時1万8,500円を割り込みました。その背景には、1ドル=108円台前半までの円高進行と、年初から好調だった中小型株の急落があります。

年始から3月末まで、東証マザーズ指数は13.6%、日経ジャスダック平均は11.2%、東証2部指数は14.7%とそれぞれ大幅に上昇。同期間でTOPIX(東証株価指数)は0.4%下落しており、中小型株だけが"お祭り騒ぎ"となっていました。

4月に入ってその様相が一変。4月14日までの2週間で、東証マザーズ指数はマイナス9.2%、日経ジャスダック平均はマイナス6.7%、東証2部指数はマイナス9.2%と軒並み下げました。なぜ崩れてしまったのでしょうか。引き金になったのは、新年度入りに伴う一時的な需給要因です。新興市場のみならず、東証1部の中小型株が3月末まで上昇していたので、国内機関投資家を中心に「益出し売り」が膨らんだのです。

益出し売りとは、機関投資家が新しい運用年度に入る前に、いったん儲かっている銘柄の利益を確定させる売りのこと。中小型株は「上がるから買う、買うから上がる」という一方通行の需給環境になりやすい傾向があるため、一部の銘柄の下落が雪崩のように他の銘柄に波及したようです。

ただ、4月以降の中小型株の下落が需給によるものなら一時的な下げといえるかもしれません。業績面や成長性に対する期待が高い銘柄は、需給で大きく下落した局面が押し目買いの好機といえます。

下表には、1~3月の株価上昇率が15%超で、4月以降に10%超下落している銘柄を5銘柄ずつピックアップしてみました。

3月まで上がって4月に入って下がった中小型株がリバウンドへ

4月までは業績の拡大期待などを織り込んで上昇してきた銘柄の中で、4月以降に業績面とは関係のない要因で下げてしまった銘柄に、改めてリバウンドの動きが期待できそうです。