ネットマネー 2017年7月号より一部を特別公開!

いつもなら4月中旬から企業の業績発表が大量に出てきて"決算ラリー"が始まるのがこの時期。実は東証のルール変更で、数学が出た直後の投資判断にはリスクが生じそうな銘柄も?

決算短信=監査のお墨付き、というわけではない

東芝が前3月期の第3四半期決算をいつ発表するかが話題になりましたよね。"3度目の延期になるんじゃないか?"と噂されていたが4月11日の期限ギリギリで提出しました。ただし監査法人と意見が対立。
異例ですが「監査法人の適正意見なし」の決算発表でした。上場廃止を避けたい東芝の思惑が透けて見えたので、投資家は評価しませんでしたね(株価は下落しました)。

決算発表の数字は投資家にとって重要な判断材料。それ自体が信頼できるものであることが大前提です。
監査法人の意見が付いていることも当たり前の話。決算の数字を最初に知ることができる情報源が、企業が発表する「決算短信」なわけです。

4月中旬から5月前半にかけて、3月本決算企業が期末決算を発表しました。このタイミングでは、前期の実績に加えて、今期の見通しも示されます。
投資判断をするうえで最も注目されるのが決算ですが、今回の決算短信からルールが変更されていることをご存じですか?

今年の2月、東京証券取引所が決算短信の作成要領を見直しました。
その中に「決算短信等には監査等が不要であることについて」という項目があり、「決算短信等における決算の内容の客観性は、監査等により確定した決算の内容が法定開示として後から開示されることで、担保されることとなります」と記載されています。
監査終了後の開示は後からでOK、会社側で決算内容が定まった時点で早く開示するようにと指示しているのです。

東証によれば、上場企業の約4割が監査終了を待ってから決算短信を開示しているのだそうです。
1日に数百社の決算発表が重なったり、決算説明会が集中したりする混雑を減らすのが東証の狙い。このルールの適用は、今年の3月末日以降の決算分からとなっています。
なお、四半期決算の内容開示は、金融商品取引法に基づき法定提出期限は各期末から45日以内です。そのため、東証の発表早期化の要請対象にはなっていません。

業績判断は決算期の1カ月前~2カ月後を待たないとダメ?

新しいルールになって、どの程度の企業が東証の要請に従うのかを見守る必要があります。
ただ、監査の終了を待たずに企業側が早めに開示するケースが増える可能性は高そうです。その場合、東芝の例と同様、速報的に出された"監査の意見なし"の数字に対して投資家は「信憑性が低い」と思うのではないでしょうか。
ちゃんとした監査の終了後、業績の修正が大なり小なり出るかもしれないわけですから......。

決算の定量的な数字だけをもとにアルゴリズムが売り買いを判断し、初期反応を大きくしている投機筋が存在します。今後、監査終了前の決算数字が出回り、その数字が実は誤っていた場合、誤った情報をもとに誤った株価をつけてしまうリスクが高まります。
そうした不確実性は、アナリストや機関投資家が決算内容を分析する際に考慮しないわけがありません。

それでなくても、決算に関する情報は得にくくなっているのです。昨今、決算日の1カ月前あたりから、企業側がアナリストの取材を受け付けなくなっています。
これは、決算直前の情報について、アナリストや機関投資家に限って提供するという不公平をなくすため。つまり決算期が3月末の企業でいえば、その1カ月前の2月末から、監査が終了して確定した内容が開示される5月中旬ごろまで正確な情報はゼロということです。
その後にアナリストの分析がなされる、客観的な決算の解釈が広まるのは5月末くらい。決算内容をもとにその銘柄の適切な売買判断ができるまでには、かなりの時間がかかるようになるわけです。

トランプラリーの巻き戻しや日本の政治に対する不信感、さらに北朝鮮有事への警戒といった地政学リスクも加わり、日本株は新年度に入って崩れました。その地合いに巻き込まれて安くなった好業績株を仕込むにはいい時期ですが、決算短信のルール改定をぜひ覚えておいてください。
つまりこの時期は、3月や4月決算発表の銘柄は避けたほうが無難。決算期日から2カ月は、決算書の数字での売買は控えるのが妥当でしょう。