ネットマネー 2017年7月号より一部を特別公開!

アノマリーよりも気になるトランプリスクのドル安

米国では5月から相場が崩れることが多く、有名な相場格言として語り継がれている。
しかし、過去10年を検証すると必ずしも当てはまらない。今年の米ドル/円はどう動くのか?

今年の米ドル/円は、「セル・イン・メイ」の呪縛から解放されるか

「セル・イン・メイ」(5月に売れ)―。

これは米国金融マーケットの相場格言である。FX投資家はこうした格言に距離を置く一方、呪縛にとらわれる人もいるのではないか。

確かにアノマリー(経験則)需給として、①ヘッジファンドの多くが5月中間決算を採用する中で積み上げたポジションを縮小、再構築する可能性②米国財務省証券の償還・利払い時期(2月、5月、8月、11月)でのドル売り・円転、は想起される。

では、この格言は過去10年の米ドル/円チャート(月足)で見た場合、実際に当てはまるのだろうか。
実情を見ると陽線・陰線のいずれかに極端に偏るデータとは思えない。必ずしも「セル・イン・メイ」とした簡易な法則に米ドル/円の投資スタンスを委ねるわけにはいかない。

しかし、今年に限っては「セル・イン・メイ」≒「円買い・ドル売り」になりかねない事象として、看過できないのはトランプ政権の政策遂行能力だ。

それは、公約で掲げたオバマケア(医療保険制度改革)が頓挫したことでトランプ政権による共和党・議会調整能力の低さが露呈したと感じるからである。

ムニューチン財務長官は税制改革が目標とする8月までに成立しない可能性を、ライアン下院議長にいたっては秋以降になる可能性があるとして示唆しており、減税による米国景気押し上げ期待を後退させる懸念をくすぶらせる。

4月公表のIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しによる2017年の米国成長率見通しは、減税や財政出動が見込まれることを反映して2.3%での堅調な推移を見込んでいる。

しかし、トランプ政権による議会運営の難しさが悟られるようだとインフレ見通しの低下と相まって、6月14日に行なわれるFOMC(連邦公開市場委員会)での利上げ見通しの後退にもつながりかねないのではないか。

今年は、「セル・イン・メイ」というよりは、むしろ「セル・イン・トランプ」のリスクが現実的かもしれない。

再び「ユーロ安」がテーマに!?選挙イヤー動向が命運を握る

欧州各国で選挙イヤーが続く中、ポピュリズム(大衆迎合主義)政党の台頭やシリアなど中東情勢の緊迫が続けば1ユーロ=1ドル割れもありうる。ユーロ安が市場の一大テーマになる日は近い!?

シリア空爆やフランス、イタリアの選挙で再び1ユーロ=1ドル割れも

日本で投資していると米ドル/円を中心に考えてしまいますが、FX市場で世界的な主役通貨ペアといえば、やはりユーロ/米ドルです。
ユーロは4月7日の米国によるシリア空爆で一段安となり、1ユーロ=1.05ドル後半まで急落。5月初旬は1.09ドル台に回復していますが、今後ユーロ安に傾くかどうか点検しておく必要があるでしょう。

下段上のチャートはユーロ/米ドルの長期週足チャートですが、1ユーロ=1ドルの"パリティー(等価)"を割り込んだのはミレニアムの2000年の1月下旬から。
2001年6月には1ユーロ=0.815ドルまでユーロ安となりますが、それを底値にユーロ紙幣が実際に流通し始めた2002年の7月には1ユーロ=1ドルを回復しています。

その後、ユーロは一本調子で上昇し、2008年9月のリーマン・ショック直前の7月に過去最高値の1ユーロ=1.6038ドルに到達。
しかし、2009年末以降、深刻化したギリシャ危機で南欧諸国の経済の弱さが露呈したことから下値を切り下げていきます。
昨年6月の英国EU(欧州連合)離脱(ブレグジット)は大きな下落につながらなかったものの、今年1月には1ユーロ=1.0339ドルまで下落。今後もシリア空爆による中東の緊張や米露の対立などがユーロの頭を押さえそうです。

今年の欧州は4~5月に行なわれたフランス大統領選挙に続き、秋にはドイツ連邦議会選挙も予定されている選挙イヤー。
ユーロ離脱を唱えるポピュリズム政党の台頭が危惧されます。

そう考えると、今年後半にはユーロが対ドルでパリティーを再び割り込む動きが起こるかもしれません。ユーロ一段安の動きが今後のFX投資におけるひとつの目玉になる可能性が高いことを、肝に銘じておきましょう。

南アランドに格下げショック!過度な懸念で下げたところが買いか?

格下げにより、南アフリカ国債とともに売り圧力の高まりが想定される南アフリカランド。今後はどんな局面で買い・売りを検討するかの戦略が必要になる!

格付け会社が南アフリカ国債をジャンク級に格下げ!

4月上旬、大手格付け会社のS&Pが南アフリカの外貨建て国債をBBプラスに格下げしました。同国で財政改革に取り組むゴーダン財務相が、突如ズマ大統領に解任されたことが原因と考えられます。
南アフリカランド相場は格下げ発表の1週間ほど前からゴーダン財務相解任の臆測で下落していましたが、格下げで一段安となりました。

自国通貨建て国債はBBBマイナスの投資適格を維持しましたが、もし自国通貨建て国債の格付けがS&PでBBBマイナス、かつムーディーズでBaa3未満となると、その翌月から債券の代表的な指数WGBI(シティグループが公表する世界国債インデックス)から南アフリカ国債が除外されます。除外となれば、世界中の投資家から南アフリカ国債の売却圧力が高まり、南アフリカランドの売りを誘発する可能性が大です。

南アフリカランド相場に対する指数除外の影響を考えるにあたり、WGBIに採用された2012年を下段上のチャートで振り返ってみましょう。
同年4月の時点で新規採用が予想されていましたが、実際の組み入れ開始の10月までは思惑に反して下落基調にありました。資金が南アフリカ国債に流れ始めた10月以降は上昇に転じ、年末までに約8%の上昇となっています。

左下のチャートは直近の週足です。2012年のように市場の思惑と反対に動くという想定をすると、除外基準に該当しないうちは反発して上昇基調になるかもしれません。
しかし、除外基準に該当した場合は需給悪化から下落が予想されます。

今後の南アフリカランド/円については、6月末には50%の確率で7.65~8.46円、7月末には50%の確率で7.58~8.52円を想定します。
レンジの下限では南アフリカランドを買い、除外基準に該当した場合は売りを検討し、除外決定以降のさらなる下落を狙いたいところです。