ネットマネー 2017年8月号より一部を特別公開!

刑事ドラマでありながら、最終的な目標が犯人逮捕ではない...。主役は、僕が演じる刑事ではなく〝遺留品〞です

『遺留捜査』で糸村聡を演じるのは2年ぶりでしたが、初日のファーストカットから「ぬるっ」と〝糸村〞になれたのは、自分でも驚きでした(笑)。

久しぶりにスペシャルではなく、またワンクール演じさせていただけると聞いた瞬間は、純粋に、雑念なくうれしかったです。

世の中には数多くの刑事ドラマが存在しますが、糸村聡という男が、ちょっとほかの刑事ドラマの主人公とは毛色が違うのは確かなんです。超マイペースで空気を読まない風変わりキャラ。度を越した遺留品へのこだわりが周囲を呆れさせながらも巻き込んでいく。

でも、僕はこのドラマの何よりの特色は、「刑事ドラマでありながら、最終的な目標が犯人逮捕ではない」というところにある気がしているんです。事件によって傷ついた人や、思いを遺した人が必ずいて、その人たちの思いの代弁者として糸村がいる。その思いが届けられるべき人に届いたところで物語が終わる、というのが『遺留捜査』というドラマの大きな骨子になっています。

これまでの刑事ドラマからしたら〝余剰〞だと思われる部分にこそ価値があるといえますし、糸村よりもむしろ事件現場に残された〝遺留品〞こそが主役なんです。幸い、どの事件にも遺留品があるからこそ、なんとか糸村が機能しておりますけれども(笑)。

シリーズを通して、特に印象に残っている遺留品はというと......「品」と呼ぶのは大変はばかられるのですが、第1シリーズ2話目の、『被害者の女性が遺した赤ちゃん』でしょうか。

その赤ちゃんが、最終的に引き取られる形で落着するというストーリーだったんですが、実はその撮影の最中に、東日本大震災があったんです。あの時、被害者の意識や思いに寄り添う糸村という男のドラマは、震災を含め、心に傷を負ってしまわれた方たちにとって、寄り添い得る物語かもしれないと思えたんです。

『遺留捜査』というドラマにしっかりとした背骨のようなものができたと感じましたし、大きなやりがいを得た瞬間でした。ですから、その時のエピソードはいまだに忘れ難く思っています。

オフの時間は、飼っている犬と戯れるのが何よりの癒やしになっています。

牝の雑種なのですが、彼女のいない生活は今では考えられません(笑)。ただ傍らに居てくれるだけで、充分に癒やされます。

僕が俳優になったきっかけは、大学時代に出逢ったアルバイト雑誌の求人です。演劇芝居のアルバイトというのがあったんですが、それは子どもたちにお芝居を見せて回る劇団のいわゆる一時雇いみたいなものだったんです。

興味半分で応募したら、受かってしまいました。

でも子どもたちがあまりにも混じりっけなく楽しみながらお芝居を観てくれて、ダイレクトに芝居の成果がわかるのが本当に面白かったんです。そして、現在に至ります(笑)。

PROFILE
上川隆也(かみかわ・たかや)
●中央大学経済学部
在学中の1989年に演劇集団キャラメルボックスに入団。
1995年、NHK70周年記念日中共同制作ドラマ『大地の子』で主役の「陸一心」役に抜擢される。
『青の時代』でザ・テレビジョン最優秀助演男優賞を受賞。
日刊スポーツドラマグランプリでは第2回から4年連続で助演男優賞を受賞。
2006年のNHK大河ドラマ『功名が辻』では山内一豊役で主演。
舞台、テレビ、映画、人気アニメの声優とさまざまな仕事に挑戦し、幅広く活躍中。