ネットマネー 2017年8月号より一部を特別公開!

来月の日本株はどう動く? 世界の市場ではどんなことが起こっている? 日々めまぐるしく動く国内外の経済情勢を解説&予想する「サテライト」連載。前半は日本株メインの投資戦略を3連発、後半は先進国やアジアなど気になる海外の国にスポットライトを当てながら、フレッシュな情報を「誌面中継」します!

下値では買い手が豊富。増税延期や経済対策も?

7月の日本株は下げそうで下げない相場展開となりそうだ。「安ければ買いたい」と考える投資家が多く、下値では個人や機関投資家に加え、企業の自社株買いも待ち構えている。新規の買いを入れる投資家は難しい判断を迫られるだろう。

日経平均株価を単一銘柄とみなした場合の1株当たり利益は1400円前後と、史上最高水準まで上昇した。アベノミクス相場でPER(株価収益率)は14~16 倍の範囲にあり、中間の15倍とすれば日経平均の理論値は2万1000円。この水準以下は割安圏となり、相場全体として打たれ強さが鮮明になってくるだろう。

一方、7月から8月にかけては、国の来年度予算案の策定作業が始まり、財政問題に市場の関心が向かう。焦点は再来年10月予定の消費税率10%への引き上げ。首相周辺では、憲法改正前の国民の支持固めを意識して増税見送り論が強いほか、景気対策必要論も浮上している。失業率低下など脱デフレを示す経済統計もある。景気対策となれば、アベノミクス相場の総仕上げとばかりに、相場が熱気を帯びる可能性がある。

国内市場はこう動く…まとめ

  1. 下げそうで下げない相場。買い時の判断は難しい
  2. 1株当たり利益の増加が株価を強力に下支え
  3. 財政政策への期待感で真夏の過熱相場到来も

緩和打ち切りは未経験。欧米の背景に景気拡大

2017年は世界的な金融緩和が生む過剰流動性相場が転機を迎えそうだ。年後半に入る7月に、海外投資家のポートフォリオ変更が欧米金融市場に一時的な混乱をもたらす可能性がある。ただ、金融政策の変更は好景気を背景としたものなので、市場が円高・海外株安に振れる局面は、海外投資を考える日本の投資家にとって格好の買い場になる。

米国FRB(連邦準備制度理事会)は、年末にかけて政策金利を1・25~1・50%まで引き上げる公算が大きい。

FRBは利上げとともに保有資産の削減に乗り出し、2023年にかけて市場から単純計算で年2800億ドル(30兆円超)の資金を吸収する。これほど大規模な資金吸収はFRBも投資家も未経験なので、緩和マネーが押し上げてきた米国株は一時的な下落に見舞われる恐れがある。

一方、ECB(欧州中央銀行)も現行の金融緩和の期限を年末までとしており、年後半に入ると量的緩和打ち切りに関する報道が投資家の不安を呼びそうだ。

ただ、欧米はともに景気が上向いており、金融引き締めはインフレを予防し、株価にとってプラスになる。

世界市場はこう動く…まとめ

  1. 今年は過剰流動性相場が重大な転機を迎えそう
  2. 米国FRBは追加利上げ、欧州は量的緩和延長を議論
  3. 市場の一時的混乱は株式を安値で拾うチャンス

1 今月の投資戦略 日本株 マザーズ全体の純利益の半分はミクシィの「モンスト」でできている

この時期になると荒れ相場になることが多かった東証マザーズ株が、今年は平穏。その理由を探っていくと、マザーズ市場全体の利益構成から「買える新興株」が見えてくる!

決算発表を乗り越えた今年のマザーズは一味違うはず

これまで、決算発表シーズンを越えたタイミングが鬼門とされてきたのが東証マザーズ市場です。個人投資家の売買を中心に価格形成される市場のため、平常時はほぼ業績が無視されます。要は、株価が上がりそうか下がりそうかが一番大事。ただ、需給でつくられた流れを、平常時は軽視される「業績」が断ち切ることも多いのが事実。ひとつのきっかけにすぎないわけですが、業績で売られる結果として需給が悪化し、逆流が始まるサイクルです。1年前の5月がまさにそうで、ダントツの人気を誇るそーせいグループなどの決算発表直後、マザーズ市場全体が急激な調整に転じました。

そんな経緯から警戒する向きも多かった今年ですが、マザーズ株は決算発表シーズンを無事に暴落もなく乗り越えることができました。「業績」で「需給」が悪化しなかったわけです。なぜでしょう?

実態を知ることで買うべき銘柄が見えてくる!

3月期決算企業の見通しが出そろった段階で、マザーズに上場する238銘柄(2017年5月末現在)の純利益を合計してみました。マザーズ上場銘柄の純利益の前期実績を合わせると743億円。これが、5月16日現在の今期予想ベースでは926億円(会社予想「非開示」企業は日本経済新聞社予想を採用)でした。マザーズ全体では、今期24・6%増益ということです。スゴイ増益率です! だからこそ、今年は決算発表を乗り越えられたのでしょうか。

ただ、見た目と内実は違います。内訳を調べてみると、マザーズ株で最も増益幅が大きいのはバイオベンチャーのUMNファーマ。純利益は、2016年12月期が140・9億円の赤字だったのに対し、2017年12月期予想は1・7億円の赤字。これだけで139億円もの増益になるため、1社でマザーズ全体の15%を占めます。2番目に大きい中村超硬(増益幅26億円)、3番目のエナリス(同16億円)も前期実績が大幅赤字の企業。その反動による振れ幅の大きさを「マザーズ=成長性が高い」と前向きに解釈するには無理があります。

こうした利益水準からのアプローチで、もう少しマザーズ市場の実態を解説していきましょう。マザーズ238銘柄の純利益予想を合計すると926億円でしたが、そのうち半分以上をたった1銘柄が叩き出しています。

その銘柄は、ミクシィです。ミクシィの会社予想は今期19・8%減益予想の480億円。マザーズ市場全体の約52%をミクシィ1社が占めているのです。しかもミクシィの売上高の9割強を、大人気ゲーム『モンスターストライク』(以下、モンスト)が稼いでいます。つまりマザーズ株の最終利益の半分程度が『モンスト』でできているともいえてしまうのです。

しかし、マザーズ市場というのはいまだにこんな状態なんですね。ほんの一部の高収益企業、時価総額の大きい企業の株価が上がらなければ、マザーズ指数も理屈的には上がっていかないというわけです。

では、なぜ地合いが今しっかりしているのでしょうか。

もう答えは見えてきたはずです。そうです、高収益、時価総額の大きい銘柄がしっかり買われているから。マザーズ市場の大黒柱であるミクシィが大きく上昇し、マザーズ指数を牽引しているのです。前期が好業績だったじげんやドリコムが年初来高値を更新するなど、質のよさそうな資金が入っているようです。

今年1月から4月末までのマザーズ市場の投資家動向によれば、個人投資家が184億円の買い越しとなっています。この市場ではいつものことですが、それに続く買い手が、なんと「投資信託」。127億円の買い越しで、この間の17週中14週も買い越していました。だからこそ、今年のマザーズ指数は急落が起きていないのだと思います。昨年まで11連続、1年で最も下げた日の下落率は7%を超えていましたが、今年の最大下落は3・4%です。
「投資信託」とは、中小型株ファンドなどを指します。プロの運用者が銘柄を選んでいるので、業績で裏づけのある優良株に資金が流入していることは確実といえるでしょう。

先述の通り、マザーズ市場にそういう銘柄が少ないわけですから、プロが好む銘柄を業績から探すのは東証1部より簡単かもしれませんね。

2 今月の投資戦略 日本株 IPOのセカンダリー攻略は、初値不振組に注目するのが◎

今年も新規上場が相次ぎ、大いに盛り上がっているIPO(新規株式公開)。初値が吹き上げる銘柄も少なくないが、抽選に外れた投資家たちは"蚊帳の外"だ。IPOセカンダリーを攻略するにはどんな作戦が有効なのか?

初値高騰組のその後は不振気味。初値不振組は逆の傾向に

このところ、数多くの企業が上場を果たし、おしなべてIPO株が好調です。公開価格をはるかに上回る初値をつけるケースが少なくない半面、なかなか抽選に当たらないだけに、セカンダリー(IPO後の市場での取引)をいかに攻略するかがポイントとなってくるでしょう。そこで今回はセカンダリー攻略のポイントを検証してみました。

左ページ下段の小さな表は、昨年1~4月に新規上場した銘柄における初値騰落率のベスト5とワースト5です。それぞれを見比べると、驚異的な初値をつけた銘柄の株価は、足元で軒並み低迷していることがわかります。対照的に初値があまり吹かなかった銘柄はおおむね好調です。したがって、セカンダリーでの攻略を考える際には、初値高騰組よりも初値不振組のほうにフォーカスを当てたほうが有効だといえるかもしれません。最初はテーマ性や話題性で人気が過熱し、業績とかけ離れた水準まで株価が上昇するものの、しばらくすると市場では冷静かつ客観的な評価が下されるということなのでしょう。

こうしたことを踏まえたうえで、左ページ上段の今年1~4月の新規上場企業における初値騰落率のトップ10とワースト10を見てみましょう。

デイトレーダーの餌食にならぬよう慎重に攻略を!

上の表の初値高騰組の顔ぶれを見渡すと、ビッグデータやクラウド、情報セキュリティー、eコマース(電子商取引)といった時代のキーワードに関連する企業が目立ちます。また、博多ラーメン「一風堂」を運営する力の源ホールディングスや鶏料理居酒屋「てけてけ」を展開するユナイテッド&コレクティブのように、私たちにとって身近に感じられる企業が入っているのも特徴的でしょう。言い換えれば、いずれも広く注目が集まりやすいビジネスを展開している企業ということです。

これに対し、下の表の初値不振組の1~3位はいずれも再上場企業で、新鮮味がないことが反応の鈍さに結びついたのかもしれません。一方、4位と7位は投資法人なので、度外したほうがいいでしょう。つまり、セカンダリーを狙っていくうえで"伸びしろ"がありそうなのは、このリストの中では5~6位、8~10位ということになりそうです。

5位のウェーブロックホールディングスは国内最大手とはいえ壁紙という地味な製品、8位の安江工務店と9位のグリーンズはローカルな企業だったことが人気薄となった要因かもしれません。その意味では、電子コミックを配信する6位のビーグリーや、クラウドソーシング(ネットなどで不特定多数の人に業務委託する雇用形態)を活用している10位のうるるが人気化しなかったのが少々不思議です。

IPOの多くは、個人投資家が中心の東証マザーズ市場に上場します。ここを牛耳るのはデイトレーダーで、やみくもにセカンダリーを追いかけると、彼らの餌食になりかねません。ここで紹介した値動きの特性を踏まえて、慎重な攻略を心がけましょう。

このランキングの結論

  1. 初値が高騰したIPO銘柄は、その後の株価が低迷気味。
  2. 初値が不振だった銘柄は、その後に評価が高まる傾向が。
  3. IPO直後は手を出さず、初値不振組のその後に注目。

3 今月の投資戦略 日本株 中長期での配当姿勢を見る新指標、DОEで銘柄選び!

2018年3月期の業績予想が出そろったが、おおむね好調な数字だ。有配企業160社のうち4割が増配を発表。株主還元が注目される今、配当に関する新指標が話題だ。

3月決算企業が2期連続で最高益更新!

3月期決算企業の決算発表とともに、日本企業の2018年3月期の業績予想が発表されました。今期の売上高は全体で前期比4%増、純利益は同9%増となる見通し。純利益ベースでは2期連続で過去最高益更新となります。

今回の決算発表で業績面と併せて注目したいのが株主還元。増配を発表する企業が増えているのです。日経平均株価採用225銘柄の中で、3月決算企業は約190社、このうち有配企業は約160社。そのおよそ4割にあたる約70社が今期の増配計画を発表しています。株主還元に関する大株主からの要望の高まりから、業績面では減益の見通しでも増配を予定している企業もありました。いずれにしても増配計画の発表は、今期業績に対する各企業の自信の表れといえそうです。

皆さんは配当株を選ぶとき、どのような指標に注目していますか? まず配当利回りを見ますよね。もちろん配当利回りは大事なので要チェックですが、最近は企業の"配当に対する姿勢"を表す「DOE(Dividend on Equity)」という新しい指標が脚光を浴び始めています。DOEとは自己資本に占める配当総額の割合のことで、「自己資本配当率」と呼ばれています。

企業がこのDOEを経営指標のひとつとして公表しているケースも散見します。たとえばインターネットサービス大手のサイバーエージェントは、中長期の経営指標としてDОE5%以上を掲げています。インターネット関連企業は事業への投資額などによって利益が大きく変動することもあり、中長期の視点でDОEを採用する企業が増えているようです。

そこで今回はDОEが高い企業をピックアップしました。配当利回りは株価の動向によって変化しやすい指標ですが、DОEを活用すればゆっくり還元力を高めている企業を探せますし、高DОEの株は増配の可能性も高いのでオススメです。