ネットマネー 2017年9月号より一部を特別公開!

「よりよい職場環境の創造」を目指す アマノ

昨年8月、第3次安倍第2次改造内閣の発足とともに、日本の企業文化やライフスタイルを 「根本的に変革する」との触れ込みで動きだした「働き方改革」。 その出発点でありゴールでもあるのは、労働時間の短縮・仕事の効率化だろう。 そこで図らずも、「人と時間、人と環境」を標榜するユニークな一企業が注目を集めている。

取材・文●西川修一 撮影●石橋素幸

「時間と環境」を標榜するソリューション志向のメーカー。
配当性向40%以上で「絶対額にこだわる」と強気の成長戦略とは?

働き方改革はまず「労働時間の正確な把握」から

「創業当初は『時間と空気』が当社のテーマでした」。中島泉会長がそう語るアマノ(本社:神奈川県横浜市)は、戦後にタイムレコーダーの製造からスタート。人事労務やパーキングのシステムなどが最も知られているが、同時に工場などで使う集しゅう塵じん機や焼却炉、洗浄機、清掃機の製造・販売も手がける。

「海外の投資家によく『なぜ空気?』 と問われます」(中島氏)という一見、無関係の事業は、ともに「ワークライフバランスも含めた、よりよい職場環境の創造」(同)という共通項がある。現在のアマノの経営テーマ「人と時間、人と環境」そのものだ。 今、株式市場でアマノが注目を集めているのは、ひとえに一方の「時間」のセグメントである。

タイムレコーダーや企業の就業システム、駐車場のゲートシステムでアマノは圧倒的なブランド力を持つが、安倍現政権の推し進める「働き方改革」を契機に、端末に出退勤管理ソフトと人事・給与ソフトを加えた「人事労務管理システム」に期待がかかっている。

「働き方改革が追い風になる背景は、まず残業時間の上限設定や管理方法などの法的な縛りです。2つ目はブラック企業のレッテルを貼られてイメージダウンしかねないという社会的な危機感。3つ目は人手不足。企業に改めて生産性を高める必要が出てきたんです」

実際、引き合いは増えているという。「個々の社員と経営・マネジメント。この双方からのアプローチがあって初めて、働き方改革は機能します。社員一人一人のしっかりとした時間管理と、上司の工数管理が必須で、それにはまず、労働時間の正確な把握から始まります。そこで当社の情報システム、人事労務システムが必要となるのです」 端末・ハードの新規需要もさることながら、収益の柱はソフトである。

「労働時間を把握するための出退勤時刻の記録には情報端末が必要となり、そのデータを集めてさまざまな管理レポートを作成して売ります」

いったんソフトを購入したユーザーはなかなか更新しないが、欲しい情報やレポートが出てこなかったり、サポートが悪ければ他のメーカーに乗り換えられる。「結局はサポートが最も大事」と中島氏が強調する通り、全国80カ所の支店・営業店で直接のサポート体制を敷く。この業界では珍しい数だという。

景気回復を追い風に全面リニューアルした新鋭ソフトを投入

2020年3月期を最終とする新中期経営計画では、売上高1420億円、営業利益160億円を目指す。現在の配当性向は40%以上で、「今後も絶対額にこだわる」と強気な姿勢だ。「期待しているのは情報システム、駐車場ゲートシステム、アジアの駐車場運営受託事業、北米の環境事業の4事業。なかでも追い風が最も強いのが、働き方改革とリンクする国内の情報システム事業。過去最高の業績を狙えるポジションにあります」

まずは情報システム事業から見ていこう。過去10年の主力だった標準ソフトをゼロベースから作り直し、昨年投入した新ソフト「TimePro -NX」への期待が大きい。「就業・人事・給与ソフトで、いろんなバージョンがある。受注が前期下半期から回復基調で、今後もさらに拡販が期待できる。良質な画面や機能以上に、徹底的に使いやすさを追求したソフト。完成度が高く、いったん使っていただけると受注に至るケースが多いです」

景気の回復も追い風だ。「企業のシステムへの更新投資は優先順位が低く、景気がよくないと投資しない。これまでは投資が逆風続きで、10年、20年間同じシステムを使い続ける企業が多かった。が、今はかなり景気が回復しつつあり、長年凍結されてきた情報システム投資も回復の兆しが。各企業でも若干予算がつき始めているようです」

次に、アマノの売上高の半分を占めるパーキングシステム事業である。自社のタイムスタンプのメカニズムをそのまま駐車場の発券に転用。「パーキングシステムのシェアは駐車場全体で60%弱、ゲート付きに限れば70%超」という。“無料から有料化、有料から自動化、自動化から無人化"が駐車場ビジネスの流れだが、アマノはさらなる“無人化からIT化"の流れに乗ったようだ。

「当面は更新の需要がある。さらに首都圏でいえば、2020年の東京五輪に付随した再開発で、駐車場・駐輪場の整備が進みます」 駐輪場も需要が拡大中だ。自転車の高級化の流れとともに、有料の駐輪場に抵抗のない客層が増えているという。「駐車場の運営受託事業を展開するAMS(アマノマネジメントサービス)、クラウドビジネスを展開するABS(アマノビジネスソリューションズ)の2社は、安定的な業績拡大が見込めます。特にABSは今後も2ケタの増収増益が期待できそう」

加えて、アジアでの駐車場運営受託事業の成長戦略がようやく軌道に乗る。

手がける諸事業でニッチとは言いながらトップシェアを持つ

「ここ数年、売り上げが踊り場状態だった韓国の現地法人の労組問題に解決のメドが立ったこと、課題であった既存の受託事業地の収益が改善してきたことで、今期からは再び拡大路線にギアをシフトして、踊り場を抜け出す可能性が高い。香港の現地法人でも確実に新規の事業地を獲得、既存の受託事業地の利益改善とも相まって、今期からは再度拡大路線にギアチェンジします」

最後が、北米の環境事業だ。アマノの環境事業とは、一言で言うと「床と空間をきれいにする」。前者が業務用の清掃機や洗浄機、後者の代表が製造業の生産工程で発生する有害な粉ふん塵じんやミストを集めて処理する集塵機である。「現地法人を置いているメキシコは、タイと並ぶ将来的な自動車の生産拠点とされ、数多い日系企業が進出。当社もかなりの受注を受けています」

トランプ米国大統領がこの先、メキシコにどんな手を打っていくかが気になるが、「現段階では受注した物件については予定通り進んでいますし、引き合いも全然落ちていません。業績に大きく貢献するのではとみています。」

環境事業は、創業者の天野修一氏がタイムレコーダーのユーザーの工場を頻繁に訪れるうち、工場の床掃除に着眼して工業用クリーナーの輸入販売を開始したのが始まり。床の汚れの発生源を抑えるべく開発した集塵機は現在、国内シェアトップ。カーボンなど粉体の素材を漏らさず輸送する独自のノウハウも事業化している。「ガリバーとは言い難いが、どの事業もニッチながらトップシェアを持っています」 よりよい職場環境の創造というテーマが、図らずも注目されたアマノ。今後の展開に期待大だ。

COLUMN 半年~1年後の目標株価2600円

長時間労働の是正のためには就業管理システムの導入が必須

同社の注目点は、就業管理システムとパーキングシステムの成長性と考えている。就業管理システムは、政府による働き方改革の推進により、今後引き合いが強まりそう。同社は、就業管理システムの国内大手で、就業管理ソフトと情報ターミナルなどのハードの両方を持つことや、全国直販体制を持つことが強み。長時間労働の是正のためには就業管理システムの導入が必須であり、今後の販売拡大が期待されよう。

パーキングシステムについても、都市部の再開発によるオフィスビルや商業施設の建設が予定されており、同社が扱う駐車場のゲートや精算機などの需要拡大が期待されよう。

大和証券では、2018年3月期の営業利益を146億円(前期比11%増)と予想。今後半年から1年程度の目標株価は2600円としている。