ネットマネー 2017年9月号より一部を特別公開!

*欧州危機後は「南欧のギリシャ、東欧のハンガリー」といわれ財政悪化が目立ったハンガリーだが、近年は回復傾向にある
今後、ハンガリーは「米国マネー」を取り込みたい考えだが、投資を呼びかけた金融関係者のセミナーでは、ネガティブな質問が相次いだ
「地政学リスク」が気になって仕方がないのだ。**

米国の通信社ブルームバーグが金融関係者を集めて、
英国離脱後のEU(欧州連合)に関するセミナーを開いた。

注目したのは、東欧のハンガリーだ。

欧州危機後は「南欧のギリシャ、東欧のハンガリー」と財政悪化が目立ったが、近年は回復途上にある。ハンガリーには、自動車など多くの日本企業が進出している。英国のEU離脱を機に、ハンガリーは「米国マネー」を取り込みたい考えだ。セミナーでは、直接投資を誘致するハンガリーの投資促進庁のロバート・エーシック総裁が登場した。

ハンガリーは2010年に転機を迎えた。「製造業を中心に海外からの投資を誘致する方針を決めた」(エーシック総裁)。銀行の不良債権を処理させるなどの国内政策に加えて、EU参加国という地位を活用し、ドイツなどから投資を呼び込み、EU各国への輸出を拡大した。

その結果、失業率やGDP(国内総生産)に対する財政赤字比率が低下し、2013年からはプラス成長が続いている。エーシック総裁は、自国の人材の層の厚さも強調していた。

だが、セミナーでは、「ロシアによるウクライナ南部クリミア編入を批判しなかったのはなぜか?」「汚職が経済に影響するのか?」といったネガティブな質問が相次いだ。

ハンガリーは親露で知られる。ロシアによる米国大統領選挙干渉などをめぐる疑惑捜査が本格化していることもあるが、政治や外交での事件が経済に影響を与えるという「地政学リスク」が気になって仕方がないのだ。

米国FRB(連邦準備制度理事会)が6月半ばのFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利の引き上げを決定。保有資産の縮小を年内に始める計画も決めた。米国の金融政策の正常化が視野に入り、市場参加者はリスクにより敏感になり始めているからだ。

第2次大戦後、1980年のイラン・イラク戦争など、現在のような上昇相場で起きたイベントは7件ある。イベントがきっかけで相場が下げた日数の平均は8営業日。平均下げ率は4%。相場が下げる前の水準に戻るのにかかった日数は37営業日だ。2001年の米国中枢同時テロのように下げ相場でイベントが起きると、下げる日数の平均は15営業日、平均下げ率は10%にも達する。

足元の米国で最も気にされている地政学リスクは、1974年に当時のニクソン大統領が辞任に追い込まれたウォーターゲート事件の再来だ。「疑惑」に関連してロシアの関与を調査していたコミーFBI(連邦捜査局)長官がトランプ大統領に解任された。焦点は、トランプ氏の行為が司法妨害にあたるか。この疑惑のために、予算策定、税制改革、規制緩和、通商政策、中間層のテコ入れといった看板政策が一向に前進しないという副作用も生まれている。

アラブ・湾岸諸国によるカタールとの断交、緊張の高まるシリアや朝鮮半島の状況、そしてトランプ政権の対外強硬策リスク―。識者の間では危機感が高まる一方だ。

撮影●村越将浩