ネットマネー 2017年9月号より一部を特別公開!

政権支持率が下がるほど、円高阻止の意向が強まる

先の都議会選挙で自民党は惨敗。メディアでは安倍政権のリスクについて、おもしろおかしく解説しているが、 投資家なら冷静になって考える必要がありそうだ。むしろ、安倍政権への逆風は、「円高阻止」の可能性もある。

都議会選が惨敗でも、政権交代のリスクはさほど心配ない

各国メディアが「スクール・スキャンダル」と命名し、アベノミクスに対する危機感をあらわにしたのが3月だった。しかし、実際に米ドル/円相場を脅かしているのは、米国のトランプ大統領に対する疑惑や利上げの正当性を強めるイエレンFRB(連邦準備制度理事会)議長への警戒だと推考している。逆に安倍内閣の不確実性が強まれば強まるほど、今夏は円高阻止の意向を市場が感じるのではないか。

もちろん、安倍内閣の支持率低下は否めず、アベノミクスの陰りを危惧する声はくすぶり続けるだろう。しかし、これによって、安倍首相は経済最優先で取り組んでいく覚悟をいっそう強めざるをえない方向に追い詰められていくようにも映る。さらに、現行の衆参議会勢力に鑑みれば、都議会選挙など地方選挙の結果がさえなかったとしても具体的に国政にダメージを与え、政権交代リスクに結びつけると見る向きは少数派ではないか。

8月には内閣改造・自民党役員人事に踏み切る意向も報じられており、人事で求心力を維持し、政権基盤の安定を優先させる構えだ。加えて、安倍首相自身の政治信条として将来的な憲法改正を進める覚悟が強まれば、為政者としては有権者、国民、市場参加者の関心を買うためにも、経済最優先の姿勢を強めるのではないか。

年頭所感で「デフレから脱却し、日本経済の新たな成長軌道を確固たるものとする」を掲げ、6月の記者会見では「経済の好循環をさらに力強く回転させていくため、これからも安倍内閣は経済最優先で取り組んでまいります」と明言。政権支持率が低下の方向にあるとすれば、それを阻害しかねない円高への動きは限定的なものにしたいのが本音のはずだ。

安倍政権への逆風が強まれば強まるほど、長期運用機関群を通じた〝オールジャパン〞で円高阻止の意向が高まるといった逆張り投資の発想がおもしろいかもしれない。

為替先読み 塾number-1 [主要通貨編]金利と為替レートの連動と カイ離から値動きを予測する

6月14日の米国の利上げ後、米国債10年物の利回りは低下したものの、逆に米ドル/円の為替レートは上昇。中期的に見れば金利と為替はおむむね連動するものだが、この逆方向へのカイ離は何を意味する?

今月の先読み先生
カブドットコム証券投資情報室 投資アナリスト
藤井明代さんAKIYO FUJII
株主優待からテクニカルまで幅広い分野の情報発信で人気。ラジオやテレビなどレギュラー出演多数。著書『勝てる!「優待株」投資』(幻冬社)。

米ドル/円は中期的に米国債10年物利回りと連動。逆へのカイ離は変動余地!?

為替レートは、長期的に見ると「国力の差」や「経常収支の差」に影響を受けますが、中期的なスパンでは両国の「金利差」が決定要因になります。日本はゼロもしくはマイナス金利で、国債10年物の利回りは0〜0・05%にすぎません。そのため、米ドル/円の場合は日米金利差というより「米国金利の動向」に直接的に連動すると考えたほうがよりシンプルです。

下段・上の図は米国債10年物利回り、下の図は米ドル/円の推移を示したもの。両者は明らかに連動していますが、直近では天底の時期に多少のズレが生じています。米国では昨年11月9日のトランプ大統領選出以降、2・6%台まで跳ね上がった国債10年物利回りですが、4月18日には2・166%の下値をつけました。対する米ドル/円も、ほぼ同日の4月17日に1ドル=108・10円の安値まで下落。その後、米国債10年物利回りは反転して5月11日に直近高値の2・422%に到達。同日に米ドル/円も114・36円の高値をつけ、この間の天底形成では金利と為替がほ ぼ連動しています。

ところが、6月14日に米国FOMC(連邦公開市場委員会)で今年2度目の利上げが発表された後、材料出尽くし感から10年債利回りは4月の下値を割り込み2・095%まで下落。一方、米ドル/円は同4月の安値を下回るどころか、逆行して円安に振れています。あくまで現況の金利水準に相応したレートで考えるなら、1ドル=106〜107円台が妥当。カイ離発生はその後の連動性回帰を狙った取引のタイミングにも見えます。中期的には連動性のある金利と為替レートですが、短期的に非連動性が生じるケースもあるのです。

為替先読み 塾number-2 [その他通貨編]ファンド資金流出が止まったトルコリラは上値を狙えるか?

エルドアン政権による強権体制はリスク要因だが、好調な経済成長が続く状況は魅力的。ファンド資金の流出にも歯止めがかかり、政策金利の上昇があればトルコリラ相場に追い風か。

今月の先読み先生
e ワラント証券投資情報室長
小野田 慎 さんMAKOTO ONODA
イボットソン・アソシエイツ、ゴールドマン・サックス証券を経て現職。ポートフォリオ構築の専門家としての経験を生かし、幅広い資産の分析を行なう。

政治リスクは高いが相場を後押しする材料あり

トルコリラ相場は下落傾向を続けていましたが、今年に入ってからは安定的に推移しています。トルコのエルドアン大統領による強権体制が強まったことはネガティブに捉えられましたが、GDP(国内総生産)成長率も堅調ですし、鉱工業生産指数も伸びています。今後、上値が狙えるのかを考察してみましょう。

下段・上の図は、2015年以降のトルコリラ/円と国内公募投資信託の純資産総額の推移を比較したものです。公募投信はトルコの株式、債券、為替を投資対象とする投信で、円建てのものを集計しています。

純資産総額は2015年1月と比べて2017年6月時点で3分の1以下になっていますが、為替相場は半値にもなっていません。このことから、解約による資金流出が残高減少の主な要因と考えられます。ただし、2017年に入ってからは残高も安定推移しており、資金流出に歯止めがかかった可能性があります。

今後のトルコリラ相場については、米国の政策金利引き上げに対応するためにトルコも追従して政策金利を引き上げる可能性が考えられますが、国内経済が堅調であることからポジティブな引き上げであり、トルコリラ相場にとっては追い風といえるでしょう。

トルコリラ/円の予想レンジですが、8月末には50%の確率で30・2〜32・3円のレンジ、9月末には50%の確率で30・0〜32・5円のレンジを想定します。

トルコはサウジアラビアやエジプトなどが断交したカタールと友好関係にある一方で、エルドアン大統領はサウジアラビアのムハンマド新皇太子といち早く電話会談を行ない関係強化に努めていることから、中東において仲介役とな ることが期待されます。しかし仲介策が失敗し、米国やサウジアラビアと対立することになれば、トルコリラ相場にとってはネガティブ材料となることには注意が必要です。