住宅ローンの金利タイプを変動型で選ぶ人が過半数となったという。低金利が長引くなかでは合理的な判断だが、変動金利は将来の金利上昇リスクが怖い。金利上昇リスクを回避する方法、そしてどのような人が向いているのか考えてみよう。

住宅ローン返済、変動金利を選ぶ人が過半数に

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(画像=ITTIGallery / shutterstock.com)

住宅ローンを組んで住宅を購入した人はその後20年、30年と掛けてローンを返済することになる。返済する金額は、借り入れた元金に利息を加えた金額だ。

利息の付き方には、ずっと金利が一定の固定金利型と、その時々の経済状況で金利が変わる変動金利型の2種類がある。借入期間の一定期間を固定金利とする固定金利期間選択型もあるが、変動金利の一種だ。

借り入れ中の全期間が固定金利だと、将来どんな経済状況になっても返済額は変わらず、返済計画を立てやすいメリットがある。しかし、変動金利に比べて金利が高いデメリットがある。変動金利は固定金利よりも金利は低く利息が少なくて済む可能性もあるが、将来金利が上昇すると返済金額が増えてしまう恐れもある。このように固定金利と変動金利はそれぞれ一長一短があるのだ。

現在ローンを借り入れている人はどのタイプを選んでいるのだろうか。住宅金融支援機構が民間住宅ローン利用者の実態調査」を年に2回行っている。2017年10月~2018年3月に新規にローンを組んだ人のうち、変動型を選んだのは56.5%(前回50.4%)、固定期間選択型が30.1%(同36.9%)、全期間固定型が13.3%(同12.6%)という結果が出ている。

同調査によると「今後1年間の住宅ローン金利の見通しは変わらない」との回答が多く、住宅ローンのタイプを選択した理由は「金利が低いから」というものが多い。

●固定金利と変動金利でどこまで差が出るか

低金利時代が長引き、長期固定金利も低くなっているが、短期金利もかなり低い。住宅ローンの金利には、店頭金利と引き下げ後の金利とがある。銀行の独自の審査を通れば、店頭金利より引き下げた金利が適用される。審査は銀行ごとに違いはあるが、その銀行でネットバンキング口座を開設する、給与振り込み口座にするなどが条件で、一般的にはそれほどハードルが高くない。

金融機関のサイトには、引き下げ後の金利、その銀行で最も低い金利が掲載されていることが多い。変動金利で年0.5%程度も珍しくない。

固定金利型の代表格は住宅金融支援機構の「フラット35」だ。35年もの長期にわたって金利はずっと固定されている。金融機関によってはこれに匹敵する商品もあるが、ここまで長期の固定金利の商品を扱っていないところも多い。「フラット35」は民間の金融機関で申し込み、それぞれに手数料も含めた利率も異なるが、住宅金融支援機構のサイトで最頻金利が分かる。2018年7月現在で年1.34%だ。

現在の変動金利と固定金利を単純に比較するとどうなるか。住宅金融支援機構「2016年度フラット35利用者調査」によると、融資金は物件や地域にもよるがおおむね3000万円前後となっている。それでは、住宅金融支援機構の調査から3000万円を35年間借り入れた場合で考えてみよう。

もし35年間変動金利が年0.5%で続くなら、総返済額は3271万円となる。一方、年1.34%では3760 万円となる。その差は約500万円にもなる。このまま低金利が続くならば、変動金利で借り入れようとするのは合理的かつ切実な選択といえるだろう。ただし、未来のことは誰も分からない。将来金利が上昇する可能性も十分あり得るのだ。

●金利上昇のシミュレーション

バブル期以降、一時期を除いて住宅ローン金利が低かった間は、変動金利にしておくことで将来さらなる金利の低下も期待できた。今後も下がることはあるかもしれないが、年0.5%(つまり0.005)とゼロとの数値の幅の狭さを考えると、これ以上の低金利は起こりづらいし、起こっても金額的なメリットもあまり期待できない。

むしろ、変動金利で住宅ローンを組む場合は金利上昇のリスクを考える必要がある。以下、年0.25%刻みに上がっていくと仮定してシミュレーションしてみよう。比較の対象は「フラット35」で借りた場合の3760万円だ。

さまざまなサイトで住宅ローンの返済額のシミュレーションができ、なかには返済中の金利の変更も含めて計算できるところもある。住宅金融支援機構の「フラット35」のサイトでも2回の変更まで対応している。

まず、仮に金利の変更が1回の場合を考えてみよう。当初年0.5%の金利で借り入れる。年1.25%までであれば金利が上昇しても、「フラット35」での総返済額3760万円を下回る(年0.5%で1年借りて2年目以降年1.25%に上昇しても総返済額は3681万円だ)。

しかし、当初2年間年0.5%の金利で借り入れた後、3年目から年1.5%に上昇すると総返済額は3793万円となり「フラット35」を上回る。なお、年0.5%の時期が1年長く当初3年間であれば、4年目に年1.5%となっても3761万円で下回る。

将来金利が年2%になることを想定すると、金利が年0.5%であり続ける時期はさらに長期間必要で、9年を要する(10年目で2%に上昇すると3765万円、9年目では3804万円)。

もっとも、年0.5%の金利が9年も続いて突然年2%に跳ね上がる可能性よりも、もう少し細かく段階を踏んで上昇する可能性の方が高いだろう。では、2回金利の変化があった場合はどうなるだろうか。

1年目の金利が年0.5%、2年目に年0.75%と1回目の上昇が起こっても、2回目の上昇が年1.25%までなら「フラット35」のケースを上回ることはない。ただし、3年目に年1.5%に上昇すると返済総額は3801万円で上回ってしまう(年1.5%への金利上昇が4年目以降にずれこめば上回らないで済む)。

組み合わせはさまざまにある。ほかに当初1年は年0.5%、2年目は年1%として、3年目で年1.25%に金利が上昇しても3674万円で上回らないが、金利が当初1年は年0.5%、年1%の時期が2年間で返済4年目に年1.5%と上昇すると3793万円で上回る。

もちろん上記は0.25刻みで想定した目安だ。住宅ローンの変動金利は半年ごとにもっと細かい数値で変わる。自分の予想を基にさまざまにシミュレーションしてみよう。

変動金利の金利上昇リスクに備えるには

シミュレーションした結果、変動金利ではなく、「フラット35」のような全期間固定型金利で借りるという結論に至る人もいるかもしれないし、変動金利のなかでも当初何年かは固定金利タイプを選択する人もいるかもしれない。そのどちらでもなく、あえて完全変動金利タイプを選択した場合、途中で金利が上昇した場合にはどのように対処すればよいだろうか。

●返済額が突然、跳ね上がることはない

金利上昇により総支払額が膨らむリスクはあるが、月々の返済の上昇額には一定の限度がある。金利はその時々の経済情勢で半年に1度見直されるが、元利均等返済の返済額の見直しは5年に1度となる。半年ごとに金利が変動しても、その翌月から変わるわけではない。また5年に1度の返済額の見直しでも、前の返済額の1.25倍以内としている。

しかし、金利の上昇が激しいと、この程度の返済額の引き上げでは返済額における利息の割合が高いために元本もあまり減らず、さらには未払利息になることさえあり得る。そのような場合は次の5年に持ち越される。最終的な精算方法は各金融機関で異なるが、未払利息を支払わずに済むということはない。

また、政策金利など金利そのものが変化しなくても、個人的に金利が変動することがある。金融機関の審査を経て引き下げられた金利が適用され、「当初何年間か引き下げ幅を大きくする」という条件が付いていた場合、その期間が過ぎると引き下げ金利が上昇する。これは社会の経済状況と関係なく個別の契約による。自分の契約について十分に把握しておきたい。

●元金を少なくする

金利が上昇し、今後の返済額も増えてしまう場面ではどうすればよいだろうか。まず、利息は元金に掛かるものなので、元金を減らすことが有効だ。

住宅ローンを組む際に頭金を大きくして借入額を少なくできるのならそれもよい。あえて手元に資金を残し、金利の上昇に合わせて繰り上げ返済に回すよう余裕のある返済計画を立てるのも賢明な方法だ。

変動金利でローンを組むなら、将来金利が上昇するリスクを常に念頭に置いて繰り上げ返済に回せるよう貯蓄に励むのが望ましい。金利が上昇しなくても貯蓄は老後資金など自由に使えるのだから、どのみち損はない。

●金利の変動に機敏に動く

金利が上昇局面だと判断すれば、その時点で有利な固定金利型への切り換えを検討しよう。同じ銀行で固定特約タイプ等へ切り換える(再設定する)ことができるなら有力な選択肢だ。また、他の金融機関のローンに借り換えてもよいだろう。

ローンを変更する場合は手数料などの費用が発生することもあるので、その金額も把握しておこう。上昇が急激に進む場面では機敏さが要求される。日ごろからシミュレーションしてすぐに動けるようにしておきたい。

繰り上げ返済のタイミングも重要だ。早ければ早いほど利息負担の軽減効果は大きい。上昇局面に入ってから考えるのではなく、思い立ったら即座に実行できるよう手続きについて確認しておこう。

ただし、固定金利に変更して以降の繰り上げ返済が有利かどうかは場合による。インフレが進行している状態では住宅ローン以外の金利も上昇している可能性が高いだろう。借入金以上に運用利率を高くできるのならば、ローンの繰り上げ返済より運用のほうが有利だ。

変動金利に向く人向かない人

変動金利に向く人は以下の条件に当てはまる人だといえる。

まず、金利が上昇しても利息の支払額が膨らまないで済む、もともと借入額が少ない人だ。もし、親などから頭金について資金援助を受けられるなら相談してみよう。2018年現在、マイホーム購入に親や祖父母が資金を贈与しても一定額まで非課税とする制度がある。あえて頭金に使わなくとも低金利の間は手元において自由資金とし、すぐに繰り上げ返済に充てれば金利上昇時に元本を減らすことが容易にできる。

また、ローンを借りた後も、家族内の事情で資金に余裕が生まれる人もいるかもしれない。教育費の負担が一段落ついたり、妻が働きだしたりして資金に余裕ができそうであれば、金利上昇リスクを乗り切れる可能性がある。

返済期間が短い人も変動金利に向いている。返済が始まってから低金利の間は利子も比較的少なく元本を効率よく返済している状態だ。金利が上昇し始めても残りの返済期間が短い人は逃げ切ることができるかもしれない。

あとは、金利の変化に機敏に対応できる人だ。普段から経済動向に目配りし、ローンの繰り上げ返済や借り換えにすぐにとりかかる段取りを整えることができ、ある程度資産運用のノウハウがある人は、インフレになっても適切なタイミングでベストな対応ができるだろう。

反対に変動金利に向かない人は、借入金額が多く、長期間にわたって返済する人だ。また、普段、経済指標に触れる機会があまりなく、まめに金利をチェックする習慣がなかったり、繰り上げ返済や借り換えなどを考える時間的余裕がなかったりする人も固定金利のほうがよいだろう。ローン返済期間と子育て期間が重なっている場合も金利上昇時に身動きがとりづらい。

固定金利は、総返済額が大きくなる可能性はあるが総返済額変わることはない。安定した返済計画が立てられるし、金利上昇時には何もしなくても有利な立場となる。

住宅ローンは金利次第で総返済額の負担が大きく変わる。低金利といわれ続けて久しく、今後も低金利になると見越して変動金利型住宅ローンを組む人も多い。ただし、変動金利は今後の金利上昇リスクを考慮する必要がある。このリスクにうまく対処できる人は変動金利が向いている。そうでなければ固定金利が無難だといえる。(ZUU online編集部)