ネットマネー 2017年10月号より一部を特別公開!

米国株高で懐がウハウハな外国人投資家が狙う出遅れ日本株

しばらくおとなしかった外国人投資家が、再び日本株を買いだした!

日経平均株価が2万円の心理的節目で足踏みしている。足元で行なわれた決算発表は、日米ともにおおむね良好。一方で、日米の政局不安や為替の円高推移、加えて、度重なる北朝鮮による地政学リスクなどが日本株の足を引っ張っている状況だ。

ただ、明るい材料もある。7月の第2週以降、これまで日本株を買い控えていた外国人投資家が久しぶりの大幅な買い越しに転じたことだ。

昨今の日本株市場では、外国人投資家のパワーは無視できない。むしろ、日本株の売買シェアの7割を占めている現状を鑑みると、外国人投資家が日本株市場を動かしていると言っても過言ではない。

下の表は、外国人投資家および国内の個人投資家の売買動向に日経平均株価の推移を重ねたものだ。

これを見ると、外国人投資家が買い越すと日本株が上昇し、売りが続くと下落していることが鮮明だ。

また、興味深いのは、外国人投資家と個人投資家の動きが反比例していること。どちらの動きに追随すれば効率がいいかは言うまでもないだろう。過去の状況を検証すると、言い方は悪いが、日本の個人投資家は外国人投資家に利用されてきたともいえなくはない。

では、なぜ、外国人投資家と個人投資家は逆の動きをすることが多いのか? その大きな理由として挙げられるのが、日本の個人投資家の「逆張り」好きだ。

個人投資家は株価が上昇してくると、持ち株を売って利益を確定したくなる。また、株価が下落してくると、今度は値ごろ感から銘柄を仕込みたくなる。一方、外国人投資家の場合は真逆で、株価の上昇局面では順張りで投資し、マーケットの雲行きが怪しくなると一斉に手を引くという投資行動が一般的だ。

逆張りも順張りも立派な投資戦略だが、どちらが簡単かといえば、おそらく順張りだろう。つまり、日本の個人投資家は難しい投資戦略で売買を行なっているというわけだ。

新規上場のベンチャーも積極的に海外マネーを呼び込んでいる

さて、これまで外国人投資家といえば、日本を代表するグローバル企業の株を買うことが多かった。しかし、ここに来て、彼らの視点に少しずつ変化が見られるようになったという。企業訪問が多い、某ファンドの関係者が言う。

「最近のジャスダックや東証マザーズなど新興市場に新規上場する企業の中には、ニッチな有望企業がたくさんあります。これら企業の中にはIR(投資家向け情報提供)に積極的で、経営陣が外国人投資家を訪問し、自社の株を彼らに売り込んでいるところも珍しくありません」

外国人投資家の多くは、将来有望な日本のベンチャー企業を買いたくても、その情報が少なく、なかなか投資に踏み込めなかった。そんな彼らにとって、自ら足を運んでくれる日本企業の訪問は魅力的に映るはずだ。

では、現在の日本株は世界の株式市場と比べて割安なのか? もちろん、個々の企業によってその評価は異なるが、代表的な株価指標であるPER(株価収益率)で見ると、日本は14倍程度。一方、米国は約18倍、欧州で約20倍と大きくかけ離れて割安。また、会社の解散価値を測るPBR(株価純資産倍率)でも、日本はエマージング諸国(新興国)並みの割安度だ。

足元では、政局不安といった外国人投資家が最も嫌う悪材料があるものの、2020年の東京五輪開催に向けて、徐々に外国人投資家の注目度は高まるのではないだろうか。

ご存じの通り、米国株式市場は史上最高値を更新中だ。また、実際に日本株に投資している彼らの資金も、昨今のドル安により、実際の日経平均の推移よりパフォーマンスが上がっていることが推測される。つまり、外国人投資家の懐は現在、投資マネーで潤っている状態なのである。

本特集では、さまざまな切り口から外国人投資家が今後、目をつけそうな銘柄をピックアップした。今度は外国人投資家を利用して、日本の個人投資家が儲ける番だ!

秋に調整なら、絶好の仕込み場か!?来年は日経平均2万8000円も

ここからの日本株市場はどのように動くのか?日本を代表するトップアナリストに、相場予測と注目セクターを聞いた。

今期予想は経常増益だが、ここまでの相場上昇で、織り込み済みの可能性も

今年は、米国も日本も期初から設備投資に積極的なことが特徴だ。昨年のトランプ氏の大統領当選を機会に、「ビジネスに対してフレンドリーではないか」という期待感が世界中の経営者に高まったことが背景にあるのだろう。

米国では今年の1月まで耐久財受注が好調で、設備投資に積極的になっていた。日本でも3月から5月は機械受注がよかった。期初から設備投資に積極的なのは、企業経営者の強気の表れ。その情報につられて株式アナリストも強気になる。

大和証券で継続的にウオッチしている200銘柄でいうと、経常利益は昨年に比べて2017年はプラスの3・5%。昨年の同じ時期ではマイナスの1・9%だった。通常は保守的なのだが、昨年に比べて経常利益予想にわりと現実的な数字が出てきているのは、企業経営者が強気のためだ。実際には3・5%よりももっと大きな増益率になってくることを見込んでいる。

ガイダンスの数字で悩ましいのは、足元の為替水準で為替の前提が変わること。この前提を見てアナリストが強気、弱気を判断する。ただし、ポイントは数量が強気なのかが大切なことであり、その数量が設備投資計画に反映されることだ。設備投資が積極的なときは数が売れると判断したときだ。今年は日米企業とも数が売れると考えている。こうしたときは、年度の頭に比べると中間期末で株価が下がってしまっているケースが経験則では多い。強気を織り込んでいることが、要因と言ってもいい。今年は4~6月の上昇で、相場はある程度いいところを織り込んだ。

実際、足元では業績発表に対するリアクションが悪い。たとえば、小売りセクターは6~7月に調整した。3月に強いガイダンスでスタートした小売りは上がっていたが、いいところは織り込み、好業績に対する株価の反応は鈍くなっている。さらに、今年の年度中盤は設備投資が重しになる可能性もありそうだ。実際、米国で設備投資の数字は軟化している。おそらく、1四半期遅れて日本にもその影響が出てくるだろう。

なお、安倍政権の支持率低下から、日本の経済対策が一部で期待されているが、これをやるにしても年末年始のタイミングになるのではないか。

ただ、予想よりも後ずれした株価調整を経て、年末あたりから来年初頭にかけては新たな相場展開になるだろう。

米国で一足早く始まったIT関連や電機セクターの物色が、年後半の日本でも

こうしたときだからこそ、個別の銘柄がよく動くことになる。米国で「FANG」と呼ばれる銘柄群があるが、NYダウが横ばいのときはガンガン上がった。あるいは米国の長期金利が下がり始めると上昇する。そういうことが今後の米国で復活すると予想する。

ちなみに、FANGとは、2015年の米国株式市場で流行した言葉で、フェイスブック(F)、アマゾン・ドット・コム(A)、ネットフリックス(N)、グーグル(G)といった当時の相場を牽引したハイテク銘柄の頭文字を組み合わせた造語で、大型ハイテク銘柄を指すものだ。

これに合わせて日本もIT関連株、一部の電機セクターが集中的に物色されていくのではないか。この動きには外国人投資家も乗ってきやすい。

実際、欧米でIT関連株が上がっている。欧米の投資家が、こうした銘柄を日本の株式市場でも物色する可能性がある。全体に比べるとパイは小さいので個別の株価は派手な動きになりやすい。日本では、FANG連動株といわれるソフトバンクのほか、オービックなどIT関連や、ソニー、パナソニックの電機株も連動性がある。また、ネットフリックスをマイクロソフトに置き換えてFAMGというケースもある。マイクロソフトのプロダクトを最も取り扱っているのは富士通等だ。マイクロソフトの業績がよければ富士通等もいい。ユニシスや野村総研なども連動性は高い。それらの頭文字を取って大和証券のITサービス担当・上野アナリストは「FUNCTION銘柄」と命名している。

年後半は相場全体がどんどん上がっていくわけではないが、来年には期待感は残る。こうした中で、FANG関連に注目が集まりそうだ。

余力十分のROEで狙う10銘柄

●選んでくれたのは、 小川佳紀さん 岡三証券ストラテジスト

ROEに余力がある企業は自社株買いなどで改善も

外国人投資家の物色動向を占ううえで、彼らの注目度が高いROE(自己資本利益率)に着目したい。外国人投資家は投資指標の中でも、PERやPBRなどよりROEを重視するといわれている。

ROEは「自己資本に対して企業がいかに利益を効率的に稼いでいるか」を表す指標だ。そのため、一般的にはROEが高い企業が注目されやすい。日本企業全体で見てみるとROEは改善傾向にあり、足元の平均は7・5%程度まで上昇している。海外企業と比較すると依然として見劣りするものの、最近ではROE目標値を設定・公表する企業が大きく増加するなど、企業側の取り組みも前向きに変化している。

とりわけ、今年の株主総会では低ROE企業に厳しい視線が向けられた。一部の企業では低ROEを理由に、経営トップの取締役人事案に反対を投じる機関投資家が増えたようだ。

つまり、外国人投資家に加えて、国内投資家からもROEの低い企業に対する要求が強まることになり、改善策が求められることになるだろう。今後は低ROE企業が自社株買いなど、ROEを引き上げるための具体策を打ち出すことが期待されている。好業績ながらROEの改善余地がある企業に注目だ。

今、外国人が買っている10銘柄

●選んでくれたのは、 西村 剛さん フェアトレード代表

今、外国人投資家は日本株に興味を示している

日本株市場は外国人投資家の動向次第で大きく左右される傾向が強い。それを如実に表すのは、2013年のアベノミクス相場だ。この年は、国内の機関投資家と個人投資家が合わせて約13兆4500億円の売り越しであったのに対して、外国人投資家は約15兆1000億円も買い越している。つまり、アベノミクス相場は外国人投資家によって牽引されたといえる。

一方、彼らが売り越した2015~2016年は、苦戦した相場だった。その外国人投資家が、トランプ氏が米国大統領選挙に勝利した後の昨年11月~今年6月までは、約2兆5000億円の買い越しを記録しており、外国人投資家が日本株に強い興味を示していることがうかがえる。

その背景には、「日米金利差の拡大」がある。米国では利上げが進む一方で、日銀はマイナス金利を含む大規模な金融緩和策を続けていることから、日米の金利差は今後広がる見通しである。金利差の拡大によって、米ドル/円相場は中長期的に円安方向に進行する可能性が高い。円安進行は、輸出割合が高い日本企業にとって、為替差益による業績拡大が見込めることから、外国人投資家は今後日本株を「持たざるリスク」を負う可能性が高く、当面日本株市場は資金流入が期待できそうだ。

外国人投資家はROEが高く、業績が好調に推移している銘柄を好む傾向が強い。表の10銘柄は、今期増収増益が見込める銘柄で、かつ直近で外国人投資家の保有比率が増加した高ROE銘柄の中からピックアップした。

国策で狙う外国人好みの10銘柄

●選んでくれたのは、 天野秀夫さん メディアストラ代表取締役

外国人投資家も好むキーワードは国策銘柄

思い起こせば、アベノミクスの“1丁目1番地"ともいえる政策は、「設備投資の拡大」だった。それが今、ようやく時代の流れの後押しもあって企業業績が向上し、株価上昇へとつながり始めた。

直近では、決算発表後に外国人投資家の需要を含めて大きく買われた安川電機などがその象徴だ。この7~8月の決算発表で業績好調のキーワードとして急浮上したのが「FA」(ファクトリーオートメーション)だ。昨年来の「半導体投資」や「自動運転」を背景とした車載関連に続く、国策の流れから生まれた相場テーマと言っても間違いではないだろう。

さらに、国策といっても日本だけではない。実現するかは別として、欧州各国やインドなどが2040年あたりをメドに、次々とガソリン車やディーゼル車の販売停止政策を打ち出し、これが電気自動車の基幹技術であるリチウムイオン電池につながっている。リチウムイオン電池セパレーターを手がけるダブル・スコープの外国人持ち株比率が今や51%超に達していることが、国策と外国人買いが連動することを証明している。

設備投資という大きな流れの中で、FA、リチウムイオン電池、半導体、自動運転が国策テーマとして本命視されているわけだが、安倍政権の成功政策と言ってもいい訪日外国人増加の「観光」も、陰に隠れて海外機関投資家の買いを呼び込むキーワードとなっている。JR九州がその象徴であり、世界遺産が多い九州が外国人買いの新たな矛先ともなってきている。

隠れトップ企業10銘柄

●選んでくれたのは、 村瀬智一さん フィスコ 情報配信部長

見逃しがちな世界トップ企業に注目

日本の携帯電話は、世界規格とは違うことで、独自の進歩を見せてきた。しかし、国内では高い技術力や使いやすさも、世界基準の中でのシェア拡大には至らなかった。企業についても同様で、国内で高いシェアを握っていたとしても、世界的にわずかなシェアとなれば、成長期待も低い。当然、外国人投資家からの関心も集まりづらいだろう。

一方で、国内では目立たない企業でも、その分野で世界トップシェアの製品等を持つ企業は存在している。国内投資家の関心こそ低いが、外国人投資家からの注目度は高まりやすいはずだ。目立たなくとも世界的に認められている企業については、今後、隠れた高成長期待の銘柄として注意深く見ておく必要がある。

ここでは、日本の高い技術力において、ある一部の部品等で世界シェアトップなど、いわゆる「グローバルニッチトップ企業」について、紹介したい。たとえば、トヨタ自動車は世界トップをドイツのフォルクスワーゲンと争っているが、シェアが50%以上あるわけではない。しかし、ベアリングなど駆動系部品を手がけているジェイテクトは、電子制御4WDカップリングで高い世界シェアを有する。

こんな隠れたトップ企業にこそ、外国人投資家は目をつけるにちがいない。