ネットマネー 2017年10月号より一部を特別公開!

今や100円で投資信託の積立ができるようになった。これを機に投資を始めようと考えている人に、達人たちがコツを伝授!

少額投資なら投資にまつわる3つの障害も解消

ファイナンシャル・プランナーの横山光昭さんはベストセラーになった著書『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム刊)の中で3000円投資のすごさを説いている。少額投資とは、毎月3000円の資金で投資信託を積立購入していくこと。すごさとは、利回り3%以上を想定すると、時間(30年の積立期間)と複利効果によって、投資額108万円(毎月3000円×30年の総額)に対して、利益は約66万円になるということ。もちろん、これで老後は安泰というわけではないが、横山さんが勧める3000円投資は、投資に対する心理的なハードルをぐっと低くした。投資は少額でも始められることを教えてくれたし、まずは3000円の積立であれば金銭的に精神的にも抵抗感なく始められる。

横山さんの会社(マイエフピー)に相談に来る人や本を読んだ人の多くは「老後資金を確保する手段として、預金という足し算だけでいいのかと不安を抱いている」という。日銀は物価上昇率2%の達成時期を再び先送りして「2019年度ごろ」としたが、やっきになってインフレ転換を目指していることは確か。

「そうなるとお金の価値が下がってしまうので、ちょっとだけ投資という掛け算も入れたいと考えているんです。投資を効率的に資産を増やす手段としてではなく、預金の延長線上として捉えています。1000万円が目標とすると、800万円までは預金で貯めて200万円を投信でつくりたいという感じです」

投資の障害は主に3つある。 ・多額の投資資金が必要なのではないか。 ・大損をするのではないか。 ・面倒な手間がかかるのではないか。

多額の資金はもう必要ない。毎月3000円は十分に少額だが、それでも…というのなら毎月100円で投信の自動積立ができる証券会社も複数ある(53ページ参照)。

毎月100円の積立なら1年間で投資金額は1200円。10年続けても1万2000円だから、大失敗してもダメージはほとんどない。

そして投信の自動積立だから、相場を見るとか、ニュースをチェックするとか、売買のタイミングを計るといった面倒な手間は一切ない。

また、証券会社で口座を開設するときに特定口座の源泉徴収ありを選べば、利益が20万円以下の時は確定申告の必要もない。

「"100円積立"は、自分の性格やリスクの許容度が投資に向いているのかを気軽に試せるところがいいですね。『iDeCo(個人型確定拠出年金)』や2018年1月から始まる『つみたてNISA(積立型少額投資非課税制度)』を検討している人も、まず100円積立を利用して投資とはどういうものなのかを知るといいでしょう」

100円で始めて、投資に慣れたら金額を引き上げる

もちろんiDeCoやつみたてNISAに移らず、そのまま100円投資を続けてもいいのだが、その場合は投資金額を増やすことを考えよう。理由は言わずもがな。利回り3%で3000円を30年間積み立てると総額約174万円になるが、100円では約5万8000円にしかならないからだ。横山さんによれば、「3000円投資を始めた人は3カ月から半年で投資金額を1万円ほどに引き上げています」。半年ほど少額投資を体験すれば、投資に対する恐怖感が払拭されるようだ。

では100円積立(いずれ投資金額を増やすことも視野に入れて)に向く投信にはどのようなものがあるのだろう。横山さんは「バランス型の投信」を勧める。国内の株式と債券、海外の株式と債券などをバランスよく組み入れた投信だ。具体的な銘柄では「世界経済インデックスファンド」(三井住友トラスト・アセットマネジメント)。そのほか「iFree 8資産バランス」(大和証券投資信託委託)、「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」(三菱UFJ国際投信)もいい。インデックスファンドでは「eMAXIS」「iFree」「たわらノーロード」(アセットマネジメントOne)あたりがおすすめ。これらのコストが安い投信を使って、先の4資産の分散を自分で実現するといいだろう。4本買っても400円だから、いろいろ試してみよう。

具体的な投資プランを立ててみよう!

100円投資は、気軽にいろいろな商品を試せるところがいい。そこで、まず日経225連動型の投信を買って投資の目標にする。余裕があれば外国株式と外国債券を組み入れる。経験を積んだら、リスクが高めの投信で大冒険を!

今の家計のままで投資資金は捻出できる

株主優待制度やNISAは投資を身近なものにするという一定の役割を果たしていると、投資に詳しいファイナンシャル・プランナーの野尻美江子さんは評価している。とはいえ株主優待は個別銘柄を選ぶことになるから、株価や業績などをチェックする手間がかかるし、投資資金もある程度必要だ。NISAには株や投信の譲渡益や配当金が非課税になるというメリットがあるものの、初心者には仕組みの全体像がわかりにくい。

「そこでもっとハードルを低くしたいというさまざまな立場の人の思いから、100円の投信積立が始まったのではないでしょうか」と野尻さん。

「すでに投資を始めている人は、『毎月100円を積み立てて何になるんだ』と思うかもしれませんが、一歩踏み出せない人の中には、投資を始めたいけれどまとまったお金がない、いつ買っていいかわからない、積立を始めても続くかどうかわからないという人がたくさんいます。100円投資は、その"できない理由"を解消した商品なので、一歩踏み出せない人に対するひとつのアプローチとしてはアリだと思います。少額でも自分のお金で投資を始めれば、今の経済のありようを体感することもできます」

少額とはいえ新たな投資資金を捻出するのは簡単ではないだろう。そこで野尻さんが勧めるのが「野尻流あぶり出し貯金」の応用。「あぶり出し貯金」とは「普段なんとなく使っているお金をあぶり出し、そのまま使ったつもりで積み立て資金に充てる方法」だ。たとえばムダなATM手数料やスポーツジムは、夜間しか利用しないのなら全日会員から夜間会員に移行する。見ないチャンネルが多ければ、ケーブルテレビの契約内容を見直す。スマートフォンで動画を見たりゲームをしないのなら、使えるデータ量を減らしてパケット料金を抑えたり、格安SIMカードを使う。そうやってあぶり出したムダな支出分を積立貯金に充てる。

「あぶり出し貯金なら、今の支出(生活スタイル)を変えずに、貯金のためのお金を捻出することができます。ただ、貯金ならあぶり出した分を全額積み立てればいいのですが、投資にはリスクがあるので一部でもいいですね」

確定拠出年金の商品も確認して投信を決める

100円投資であっても始めるときは、自分がほかにどんな投資をしているのかを洗い出してみたほうがいい。「自分には預貯金しかない」と思っている人でも、会社で確定拠出年金に入っていると、TOPIX(東証株価指数)や日経225(日経平均株価)に連動しているインデックスファンドで年金を積み立てていることがあると野尻さんは指摘する。

「100円投資では、違うタイプの商品を選んですみ分けることも考えてください。たとえばアクティブ型を買って『インデックス型と違った値動き』を実感してみるのもいいですね。投資の経験を積むことが大切なのです」

具体的には何を買えばいいのだろう。「日経平均を知らずに投資はできないので、『日経225インデックス』がベンチマークのファンドを1本持っておきたいです。そのほかに持つとすれば『特徴のある日本株ファンド』か『外国株ファンド』ですね」

野尻さんおすすめのファンドは下段に、また、100円投資の極意を左のコラムにまとめたので、ぜひ参考にしていただきたい。

大手ネット証券が100円投資を相次いでスタート!

気軽に100円から始められる投信積立を扱う証券会社は5社。その先駆けとなった楽天証券には、投資家の裾野を広げたいという思いがあったという。その使い勝手の切り札となる「ポイント投資」も8月下旬からスタートする!

ポイントで投信が買える仕組み作りが出発点

現在、100円投資(投信の100円買い付け)ができる証券会社は、楽天証券、松井証券、岡三オンライン証券、SBIネット証券、マネックス証券の5社(商品の提供開始時期が早い順)。楽天証券は、今年5月27日から1000円だった最低購入金額を100円に引き下げた。その理由について担当者のお二人に伺った。

そもそも最低購入金額を100円に引き下げることが目的だったのではなく、「楽天市場などの楽天グループの各サービスを利用すると貯まる楽天スーパーポイントで投信を購入することができるスキームを作ろうというのが出発点でした」と楽天証券の奥山友美さん。

「具体的な検討を重ねていくうちに、最低購入金額が1000円のままではポイントで購入しにくいのではないかという話になりました。1000ポイント単位で貯まっている人は、そう多くないですから。そこで最低購入金額を100円に引き下げることになったのです」

では、なぜ「ポイントで投信を買う」という発想が生まれたのだろう。それは、投資を経験したことのない層にも投資を体験してもらいたいという願いから。

「楽天市場で買い物をされるお客さまは一般消費者の方々です。投資に興味を持ってはいるものの、投資デビューのハードルは高く、大切なお金を減らしたくないという思いも強いでしょう。でも100円で、しかもポイントで投資が体験できる仕組みがあればハードルが下がるのではないかと考えました」と服部由美さん。

お試し買いで経験を積んだら本格デビューを

金融庁が「貯蓄から資産形成へ」という旗を掲げてiDeCoやつみたてNISAといった新制度を創設したように、世の中は預貯金から投資へ向かっていることは明らか。第一歩を踏み出すために用意されたのが楽天証券の「100円投資」であり、この8月下旬から始まるポイントで投信が買えるサービスというわけだ。

100円投資では、「複数本を試し買いされているお客さまが目立ちます。ポートフォリオの組みやすさという点も100円投資の狙いのひとつでしたので、うまく活用していただいていると感じています」(奥山さん)。

100円投資であっても、投資家デビューを果たせば「投信の値動きや、その動きの理由が気になるはず。自然な形で投資家としての経験を積むことができるでしょう」(服部さん)。

そして投資は怖くないことが理解できたら、本格的な積立投資に切り替えたり、iDeCoやNISA、つみたてNISAの活用を考えればいい。100円投資が始まったことで、投資をためらう理由がなくなった。